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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第74話/Specialな偶像

田中/奏多みどり.side


CLOVERは私の生きる活力だ。

アイドル好きの私は運命の出会いによってCLOVERを知り、恋に似た沼に落ちた。



漫画を描くことは楽しいし、自分がやりたかったことを仕事にしているからキツくても頑張れるけど、限界を越えるといくら好きなことでも逃げたくなる。

私は初めての連載で、最初からトップスピードで駆け抜けようとしエンストをした。


頑張りすぎるとね、体が言うこと聞かなくなり心が追い込まれることを初めて知った。

ペンを持つことを拒否し、全てが嫌になり、締め切りが迫っているのに私は仕事部屋から逃げ出し、アシスタントの焦る声が聞こえてきたけど無視して全力で走った。


25歳。体力はあるけど心が壊れかけていたのかもしれない。心が壊れようとして体が心に同調し動かなくなった。

街をフラフラとヨレヨレの服で彷徨い歩き、私の前にチラシが差し出される。最初、勧誘かと思い無視しようとすると「あの…」と自信なさそうな声がし私は顔を上げた。


目の前には若くて可愛い女の子が自信なさげにチラシを持っており、でも真剣な目で「今度、初めてのライブをやります…あの良かったら」と言ってきた。

私は小さい頃からアイドルが好きで、アイドルの歌番組ばかりテレビで見ていた。


お父さんに録画のやり方を教わって自分で録画して…何度も繰り返し見て。

あの頃、憧れた大好きなアイドルをやっている子が目の前にいて胸が一瞬でトキメク。

何でアイドルって、こんなにも可愛くて目が離せなくなるんだろう。


アイドルって最高だ。私の心を一瞬で奪う。私の心を一瞬で奪ったのが…



【藍田みのり】

私の大好きな推しメンのみのりちゃんだ。



私の初めての連載漫画「彼女はちょっと変わっている」は昔の私を描いた漫画だ。

人見知りで、人前で話すのが苦手で、アイドルと漫画にしか興味がない高校生の私は同じアイドル好きの男の子と仲良くなった。


この漫画は私の過去を描いている。4月から始まるドラマの主人公を演じるアイドルの男の子は私の旦那よりイケメンでカッコ良すぎるけどドラマだから仕方ないよね。


私は、この時に出会った男の子と結婚している。そして、結婚したことで名前が奏多みどりから田中みどりに変わり、元の名字が凄く気に入っていたからペンネームにした。

そんな、アイドル好きの私はアイドル好きの自分の話を書いている。


だからめちゃくちゃ楽しくて、初めての連載で頑張ろうって…


仕事で心と体がボロボロになった時、旦那に頼ればと思われそうだけど頼りたい時ほど仕事でいないし、私は意固地なタイプで悩みとか言いたくないタイプで内に溜めてしまう。

そんなボロボロだった私を元気にしてくれたのがアイドルのみのりちゃんだ。


チラシを貰い、この時は何も話せなかったけど必ずライブに行くと決めた。

仕事部屋から逃げ出した私はすぐに戻り、一度お風呂に入り、仕事に取り掛かった。

絶対に仕事を終わらせてCLOVERのライブに行き、みのりちゃんに会いたいからだ。


急に部屋から出て行き、戻って来るなりお風呂に入り、仕事をバリバリこなす私にアシスタントの百香は驚いていたけどこれから頑張るから許してほしい。



ライブ当日、私はお洒落をして小さなライブハウスに向かった。心臓が激しく動き、階段を降りるたびに息が止まりそうだった。

重いドアを開けると音楽が流れており、中に入ると人がまばらで人数は20人ぐらいで…でも、初めてのライブだったらそれぐらいだ。


人気のあるアイドルのライブは行ったことがあったけど、CLOVERみたいな地下アイドルは初めてで空気感の違いに戸惑ったけどみのりちゃんに会えるって気持ちが勝ち、すぐに気にしなくなった。


CLOVERはHPを見ても情報が少なく、本当にできたてなんだなって思っていたけど初めてのライブを見れることが何より嬉しかった。

私はCLOVERみのりちゃんの初めてを一緒に味わえることが嬉しくてドキドキしながらライブが始まるのを待った。


両手をギュッと胸の前で握り、爆音の音楽が鳴り始めたとき私は生まれて初めての強い高揚感を味わった。

雷が落ちる時ってこんな感じなのかなって思うぐらいの衝撃だった。


メンバーがステージに出てきて、緊張した面持ちだけど真剣な表情で歌い踊り出したみんなを私は全力で応援した。

楽しい!最高!死んでもいい!旦那ごめんね!ここで昇天してもいいやと心の中で叫びライブはあっという間に終わった。


MCはぎこちなさがあって可愛くて、自己紹介するとき声を震わせながら名前を言うみのりちゃんが可愛くてギャップにやられた。

みのりちゃんは可愛いけど、綺麗で、イケメンって言葉が似合う子だったから、そんな子が震える子鹿みたいで笑っちゃった。


初めてのメンバーからの物販、チェキなど初めてづくしで緊張したけどみのりちゃんを間近に見れて幸せだったし、初めて話せてめちゃくちゃ好きになった。

こんなにも好きになったアイドルは生まれて初めてで、みのりちゃんに夢中にさせてくれてありがとうと言いたい。


好きな人がいると何事も頑張ろうと思えるし、みのりちゃんに恥じない人生を送りたいと思える。

家に帰って、旦那にみのりちゃんについて意気揚々と話したら「良かったね」って言ってくれてアイドル好きの旦那と結婚して良かったと思えたよ。



私にとって、CLOVERの藍田みのりちゃんはSpecialなアイドルであり…神だ。

みのりちゃんがいたから今の私がいる。

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