表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
73/221

第72話/再挑戦の始まり

鏡の前で椅子に座り、私は胸を高鳴らせる。今日は鮎川早月になるために髪を短くする。こうやって仕事のために髪型を変えることに憧れていた。

馴染みの美容師さんにカットとヘアーカラーをお願いし、新しい自分を待った。


鏡に映る私の髪が徐々に短くなっていく。いつもより短くなった髪型は頭を軽く感じれて気持ち的にもスッキリした。

髪色も暗くなり、いつもの私とサヨナラし、新しい藍田みのりになった気分だ。


「はい、終わったよー」


「ありがとうございます」


「みのりちゃん、この長さ似合うよ。すっごく似合ってる。色も良い感じ」


新しい髪型を褒められ嬉しい。初めての髪型はやっぱり少し緊張するし不安があった。



髪を短く切り、髪色を変えた私は風を感じながら新鮮な気持ちで街を歩く。梨乃に髪を切ったよとLINEを送ると髪型が変わった私を見たいー!と返事がきた。

私も感想を聞きたくて、事務所でよっちゃんと打ち合わせをしている梨乃の元へ向かう。


事務所に着いた私はドキドキしながら梨乃がいる部屋のドアを開けると、すぐに梨乃と目が合い…絶句するような顔をされた。

さっきとは違う激しい胸の鼓動が襲う。もしかしたら、似合ってないのかもしれない。


「梨乃…どうかな?」


「似合ってる!めちゃくちゃ似合ってる!」


「本当?良かったー、梨乃の反応がないから不安で」


「凄く似合ってて…言葉が出なくなったの」


梨乃に新しい髪型のお墨付きをもらえた。よっちゃんにも「似合ってるよー」と言われ、やっと心から安心する。


「みのりは今の髪の長さの方がいいかも」


「そうかな?」


「うん。みのりのイケメン度が増した」


「なにそれ。あんまり嬉しくない」


よっちゃんがニヤニヤした顔で言うから褒めてる感じがしない。でも、梨乃は大きく頷き「今の長さ、めちゃくちゃ良い!」と言うから一応ちゃんと似合っているのだろう。


「みのり。本、読んだ?」


「読んだよ。鮎川早月、かなり良い役だね」


「登場が遅かったから四番手の役だけど、三番手の久保田凛より人気があるキャラだしね。寧ろ、一番人気のヒロインと同じぐらいの人気があるんじゃないかな?」


よっちゃんが手帳を見ながら、キャラについて色々教えてくれる。きっと梨乃がオーディションを受ける際、沢山調べたのだろう。

昨日、私も知った《あゆはる》についても教えてくれて需要の高さを改めて知る。


そんな役が明日のオーディションで決まる。ヒロインと同じぐらい人気のあるキャラ。

通常は実力と経験を兼ね備え、名前の知れた若手女優が選ばれる。でも、まだチャンスは残っている。だって、ヒロイン役を演技未経験の梨乃が勝ち取った。


「明日はオーディションとライブがあるから大変だけど頑張ろうね」


「うん、頑張る」


よっちゃんがファイティングポーズをしながら応援してくれた。梨乃もガッツポーズをし私を応援してくれる。


「じゃ、そろそろ行くね」


「えっ…もう帰るの」


「明日に備えて本を読み込みたいし」


「そっか…」


梨乃が残念そうな顔をし帰りづらいけど、私は2人に手を振り部屋から退出した。

もっと鮎川早月を考察しないと…やるからには徹底的にやらないとダメだ。


「みのり!」


「えっ?梨乃、どうしたの?」


勢いよくさっき閉めたドアが開き、梨乃が私の名前を呼ぶ。私は大きな声にビックリしながら後ろを振り向いた。


「もう少しで打ち合わせ終わるの…だから、一緒に帰らない?」


「分かった。他の部屋で待ってるね」


「うん!」


本当は早く帰りたかったけど、事務所でも携帯で検索や考察はできるし問題はない。

それによっちゃんが部屋から顔を出し、事務所に置いてある彼女はちょっと変わっているの本を読んでいいよって言ってくれた。


漫画本を手に持ち、空いている部屋に移動し、早速もう一度本を読み込む。

どうやったら鮎川早月と一心同体になれるか考えると不安も多いけど心が躍る。

初めてアイドル以外のことをやれ、少しずつステップアップしている気持ちだ。


勉強もそうだけど真剣に集中していると時間を忘れる。いつのまにか横に梨乃が立っており、顔を上げると「真剣な顔のみのり、カッコいい」と唐突に言うから戸惑ってしまう。


「照れるじゃん」


「だって、本当だもん」


「打ち合わせ終わったの?」


「うん」


今の時刻はお昼を少し過ぎた14時だ。朝食はバナナしか食べておらず集中を切らした途端お腹が空いてきた。


「梨乃、お昼食べてから帰ろうか」


「いいの⁉︎やった!」


借りていた漫画本をよっちゃんに返し、アウターを着て帽子を被り帰る準備をする。

今日も私の服装と梨乃の服装は真逆だ。真冬でも可愛いスカートを履き、女の子らしい服装の梨乃。今日も私は冬の寒さに耐えきれずスキニーのデニムに白の大きめのセーター。


それに私は帽子が好きで、今日はバケットハットを被っているからラフ感が凄い。

寒がりの私は冬に着る服は大きめの服を選ぶ傾向にあり温かい服が必須だ。

アイドルなのに可愛さより暖かさを優先する私はアイドル失格だけど寒さには勝てない。


梨乃と一緒に歩くとより対照的で、そんな私を梨乃はいつもカッコいいと言う。可愛さより暖かさを取ったズボラなだけなのに…。

嬉しそうに私に腕組をし、笑顔で「何、食べる?」と言う梨乃の女子力は凄い。


「梨乃ってさ、女子力高いよね」


「そうかな?」


「私は冬になると寒すぎて暖かさを優先して女子力捨てちゃうもん」


「私はみのりの服、好きだよ」


「えー、ラフすぎない?」


「みのりに似合っているからいいんだよ」


そう言いながら、早く行こうと私に腕を組んだまま歩き出す梨乃に慌てて着いていく。

甘えるのが苦手だと言っていた梨乃が甘えてくれるのは嬉しいけど、梨乃が美沙に似てきている。特に距離感が美沙みたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ