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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第70話/期待×憂鬱

梨乃が私の横ではなく一歩下がった位置で歩き、私に着いてくる。

私を気にしてるのだろう。でも、これでは私が梨乃に対して怒っている感じだ。

別に私は怒ってはいない。ただひたすら…梨乃が羨ましいだけだ。


暗い空気感が好きじゃない私は立ち止まり後ろを振り向いた。梨乃は一度落ち込むと長くなる傾向にある。

急に立ち止まった私の顔を見て、不安そうな顔をする梨乃。梨乃は優しすぎる。すぐに周りを気にして気を使う。


「後ろ歩いてたら話せないよ」


「うん…」


「梨乃、はっきり言うね。怒ってないから。でも、羨ましいとは思ってるよ。やっぱり、悔しい気持ちもあるし。特に梨乃は同い年だから負けたくない気持ちが強い」


「うん…」


「ほら、暗い顔するな。梨乃が不安そうな顔をすると私まで暗い気持ちになる」


梨乃に言葉をかけながら手を繋ぐと、やっと笑顔を見せてくれた。隣の定位置に梨乃が来てくれていつもの距離になる。


「梨乃、さっきは言えなかったけど…おめでとう」


「ありがとう…」


「私も頑張らなきゃ」


「私…みのりと一緒に頑張りたい」


「プレッシャーかけるねー。でも、頑張るしかないよね」


私はもう負けられない

頑張らないと私には未来がない…


「あっ、鮎川早月ってどんなキャラなの?バスケが得意ってことしか知らないから」


「えっとね、クールな雰囲気だけど笑うと可愛くて、優しくて、暗いヒロインをさりげなく見守るキャラ」


「王子様みたいなキャラだね」


「うん!そうなの!王子様みたいなの」


梨乃曰く、同性にモテるキャラらしい。ふと、田中さんと交わした会話を思い出す。

私が女子校出身だと初めて言った時、興奮しながら自分の中でみのりちゃんは学校の王子様のイメージなのって言われたことがある。


「みのりの学生時代を見たかったな」


「私の?」


「うん。みのりとは高校が違うから」


「あー、そうだね」


「きっと、みのりと同じ学校だったら離れた所からみのりを見ているんだろうな。話してみたいけど、同じクラスでもグループが違うから話しかけられない存在だと思う」


「えー、何それ。普通に友達になってるでしょ。寂しいこと言わないでよ」


固まるグループが違っても仲良くなる人はいるし、私はグループとか気にしたことがない。趣味が合う友達とか色々な輪がある。


「みのりって、私がいつも欲しい言葉をくれるから嬉しくなる」


「欲しい言葉?」


「言われて嬉しい言葉」


「そうなの?」


キラキラとした笑顔で「うん!」と言う梨乃。私としては照れくさいけど梨乃が喜んでいるなら私も嬉しかった。


「あっ、本を買いに行きたいから一緒に来てくれる?」


「行く!」


「本を買ったらカフェでお茶しよう」


「うん!」


梨乃の私の手を握る力が強くなる。嬉しそうに手を振り、まるで幼稚園児だ。


「ふふ」


「どうしたの?」


「梨乃が幼稚園児みたいだから」


「えー、何それ」


「可愛いって意味だよ」


「だったら許す」


梨乃はどんな学生時代を送ってきたのかな?中学時代は苦しい時期だと思うけど、高校生の梨乃を私も見たかった。

きっと、大人しいタイプだけど可愛いから男子に人気があるタイプだろう。


だから、梨乃が虐めに合った理由は嫉妬ではないかと思っている。そして、大人しい梨乃を虐めることで自分が優位に立ったと馬鹿な幻想を見てしまった。


本当、馬鹿だよね。想像するだけで腹が立つ。私が梨乃と同じクラスだったら、人に興味がない私だけど友達が虐められたら私も黙ってはいない。

もし…私がドラマのオーディションに受かれば役だけど梨乃と同級生になれる。


「受かりたいな…」


梨乃の学生時代のことを回顧していたら本音がポロッと口から出ていた。

受かりたい…一番正直な思いだ。でも、言葉にするのが怖かった。

梨乃に先を越され、自分に自信を無くしている。これも自己防衛なのかな。


本音を言うのが怖い。もしもの時を考えるとつい奥底に押し込んでしまう。

私は不安そうな顔をしているのかな?手を繋いでいた梨乃が私に抱きつき「大丈夫…」と応援してくれた。


受かりたい…必ず受かりたい。私も大好きな梨乃の横を歩いていたい。

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