第53話/灼熱のFrindship
谷口美沙.side
本当に朝から私の元に来てくれたみのり。何度も「ごめん…」と謝られると、私が悪いことをした気持ちになる。
でも、流石に二度目のドタキャンは許せないから少しだけ怒った。反省してほしくて。
でもね、私はみのりが必ず私の元へ帰ってくると分かっている。私達は強い磁力で引っ張られ離れることが出来ない関係だ。どれだけ邪魔が入っても絶対に変わらない。
そんな私達の首元にお揃いのネックレスがある。これは今日、みのりが買ってくれたプレゼントでありお詫びの品。
みのりが何度も欲しい物はない?と聞いてくるから、みのりとお揃いのネックレスが欲しいと言ってしまった。
でも、今までお揃いの小物などは持っていたけどアクセサリーなどは持っていなかったから本当に欲しかった物。
初めてのお揃いのアクセサリーに私はテンションが上がり、今は幸せに満ちている。
みのりといると時間が経つのが早い。もっと沢山いたいのに時間が止まってくれない。
いつものように一緒にお風呂に入った後、ベッドの上でみのりの太腿に頭を乗せる。
優しく私の頭を撫でるみのりの手が気持ちよく、寝たくないに眠ってしまいそうだ。
みのりは…本当に悪い子だよ。優しさを積み重ねていくと友情から愛情に変わるラインをオーバーすることを知らない。
でも、そんなみのりが大好きだから変わらないで欲しい。みのりはみのりのままでいて。
私は誰よりもみのりと近い距離におり、長い時間を過ごしてきた。でも、私がラインをオーバーしないのは私とみのりは表と裏の共存関係で、すでに一心同体だから。
でもね、私は大好きなみのりとならキスもエッチも何でも出来るよ。みのりが私を求めてくるなら喜んで全てをあげる。
私の心も体も全てみのりの物で、私の人生もみのりになら全て捧げられる。
本当、重い愛だよね。でも、私は綾香とは違う。暴走しない愛情だ。
お揃いのネックレスを付けた私達は互いに鎖をかけた。離れられない証として。
私は先に寝たみのりのおでこにそっとキスをする。そして、首元に唇を当てる。
きっと、私達の関係はみのりが私を求めない限り変わらない。私から求めることはしないし、私は求められたい派だ。
私とみのりの歪な関係の最終地点はどこだろう?自分が言うのはおかしいかもしれないけど、私とみのりの関係は歪だと思う。
でも、歪だから求め合うし離れられない。
藍田みのり.side
美沙の家は私の第二の家だ。自分の家より居心地が良く、私は美沙の家族が大好きだ。
幸せな気持ちに満たされながら私は美沙のベッドの中で眠りについた。
明日、今年一発目のライブ。だから、頑張らないといけない日で、今年こそは変わりたいと強い思いと願いがある。
そんな気持ちが強かったのかな?昨日は見れなかった夢を見ている。
大きなステージに立ち、CLOVERは沢山の声援を受け歌い、踊っている。
久しぶりに見た最高の夢で絶対に叶えたい。
これが初夢だったらいいのに。あれ?初夢って大晦日から元旦にかけて見る夢だっけ?
出来れば今の夢が初夢だったらいいな。私はアイドルとして必ず売れたい。
これ以上、地下アイドルとして燻るのは嫌だし、年だけ重ねていくのは嫌だ。
私の体が甘い香りに包まれる。この香りは美沙の匂いかな?
美沙の匂いが一番落ち着く。なぜ、美沙の匂いはこんなに良い香りなのかな?
この香りに包まれると嫌なことも忘れられる。アイドルの残酷な現実や過去など、美沙がいたから私は乗り越えられた。
私は嫌なことを思い出すたび、味わうたびに美沙と一緒にいることで乗り越えてきた。
美沙だけが私を苦しみから解放する友達で、私を癒してくれる治療薬。
だから、依存してしまう。私は美沙なしでは生きれないし、苦痛に押しつぶされる。
切り離したくても消えてくれない嫌な思い出から救ってくれるのは美沙だけなのだ。
だからこそ、私は売れたい。美沙だけが先に進み、私との距離が出来ているからこそ。
美沙が私に呆れ、離れていかないよう…美沙を繋ぎ止めるためにも。
◆私のため…
◆美沙のため…
私は今年こそ生まれ変わってみせる。夢はアイドルなんてもう思いたくない。
私はアイドル。CLOVERの藍田みのりだ。




