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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第48話/蒼糸模様

年が明けた後も私達はテンションが高いまま騒ぎまくる。今日は一番の無礼講の日であり、周りの人達もずっと騒いでいる。

良い一年になるといいな思っていると、コートのポケットの中にある私の携帯が震える。


きっと、電話の相手は美沙からで私はみんなからそっと離れポケットから携帯を取り出す。

携帯の画面にはやっぱり美沙の名前が表示されており、ふふと笑う。


「美沙」


「みのりー、Happy New Year!」


「おめでとう」


電話越しでも分かる美沙の明るい声。楽しいときに美沙の明るい声を聞くと更に嬉しい気分になる。


「みのり、今どこ?」


「まだ、神社」


「何時ごろ、こっちに来るの?」


「もうそろそろ帰るから…約1時間後かな」


「そっか、分かったー」


「美沙、寝ないでね」


私の両親は昨日からお婆ちゃんの家に帰っており、私だけライブがあるから残った。

だから、お正月は美沙の家で過ごさせてもらいお世話になる予定だ。


「みのり、駅に着いたら教えて。お母さんが車を出してくれるって」


「そうなの?ありがとう」


しばらく美沙と話した後、私は梨乃達の元へ戻る。その際、梨乃と目が合いなぜか悲しそうな目をされた。

よっちゃんは私を見てまた苦笑いをする。


「さぁ、みんな。そろそろ帰ろうか」


よっちゃんが時計を見ながら、解散宣言をする。今日はよっちゃんと車で来ているから駅まで送ってもらえる。


「みんな、最寄りの駅に着いたらご両親に電話して必ず迎えに来てもらうこと」


「はーい」


みんなでよっちゃんに返事をし、私達は駐車場まで向かった。でも、梨乃の足取りが遅く私は何度も後ろを振り返る。

さっきまで楽しそうだったのにどうしたのだろう?梨乃の表情が暗い。


「梨乃?」


私は梨乃に何かしたのだろうか?名前を呼んでも返答がなく梨乃は確実に私に怒っている。早歩きになり、一番後ろを歩いていた梨乃が美香達を抜き一番前になった。

突然の梨乃の行動に呆然としていると、隣に美香が来て私に話しかけてきた。


「みーちゃん…りっちゃんを怒らせたの?」


「何もしてないと思うけど…」


「でも、怒ってる感じだよ」


私は梨乃に何か癪に触ることでも言ったのだろうか?会話を思い返しても、変なことは言ってないはずだ。


「あっ、分かった!おならしたとか⁉︎」


「するはずないでしょ!」


「だよねー。へへ」


美香は梨乃がなぜ私に対して怒っているのか真剣に考えてない。他人事だと思って…私は困っているのに。


「とりあえず、りっちゃんに謝ったら」


「そうだね…」


私は美香に言われ梨乃の元へ行く。隣に並び、梨乃に戸惑いながら「あの、ごめん…」と謝ると梨乃が私の方を向き「何でみのりが謝るの?」と強い口調で言ってきた。


「えっ、あの…」


「みのりが謝ることじゃないから。私の問題なの。だから、ほっといて」


梨乃に初めてキレられた。いつも穏やかな梨乃が本気で怒っており、理由もなくただ早くこの場を収めたいから謝った私はまた性懲りも無くごめん…と謝った。


「ほら、、駐車場に着いたよー。みんな、乗ってー」


よっちゃんの言葉にみんなは梨乃に気を使いながら車に乗っていく。私はいつものように梨乃の隣に座り、どうしようかと考えたけど何も良い案が浮かばない。

梨乃はずっと下を向いたままで…


怒っている理由が私は関係ないと言ってはいたけど気になってしまう。私が何度も見たせいなのか、やっと梨乃が顔を上げてくれた。

どんな感情なのかは分からないけど…怒ってはなさそうで、やっと私の方を見てくれた。


「みのり…ごめん。本当に私の問題だから気にしないで」


「分かった」


やっと梨乃と会話を出来たことが嬉しいけど、突き放された感がある。これ以上会話が進まないと思った私は窓から外を眺める。

しつこく理由を聞くのは梨乃が嫌がるだろうし、私も今の空気感がキツい。


流れていく外の景色を眺めていると肩に重みを感じる。梨乃が私の肩に頭を乗せ、会話がない時間が過ぎていく。


駅に着き、よっちゃんにお礼を言いみんなで改札口に向かった。電車に乗ったら美沙にLINEをしなくてはいけない。

電車の時間を確認しながら、時計を見ていると隣に来た梨乃が私の手を握る。


時計を見る梨乃の表情はいつもの梨乃で「あと10分後に来るね」と教えてくれた。

私と梨乃は別の電車に乗る美香と由香里に手を振り、またねと言いながら歩き出す。


今日はどうしたらいいのか分からない日だ。ホームで梨乃に抱きつかれ…呆然としていると梨乃に「じっとしてて」と言われ、地蔵みたいに固まる。

今日の梨乃は分からない。今の梨乃は喜怒哀楽が不明でどれも当てはまらない気がする。

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