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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第47話/ストロベリーナイト

私達はお参りをした後、年明けの時間まで何をするか話し合う。まだ年明けまで1時間以上あり、寒がりの私は甘酒で温まった体が冷え、寒さでずっと震えている。


「みのり、大丈夫?」


「ちょっと寒いかな」


優しい梨乃は私の腕を摩りながら心配してくれる。美香と由香里は寒さに強く、まだ屋台巡りをしたいと騒ぎ、時間までファミレスに逃亡したい派(私)と神社でまだ過ごしたい派で分かれ、話が進まなかった。


「ねぇ、時間まで二組に分かれない?美香と由香里とよっちゃんは神社で、私とみのりはファミレスでお茶をする」


梨乃が私に気を使って案を出してくれた。私は首だけ振り、梨乃の提案に賛成する。


「分かったー。でも、梨乃ちゃんとみーちゃん、年明けの30分前には戻ってきてね」


「分かった。戻る時、グループLINEに連絡するね」


梨乃が由香里に話をつけ、神社組になったよっちゃんが犠牲になるのは申し訳ないと思っていると…よっちゃんは美香と由香里に「屋台に行くよー」と言い、ノリノリで歩き出す。


「梨乃ー。ありがとう」


「みのりは寒がりだもんね。早く、暖かいファミレスに行こう」


冬は楽しいイベントが多いけど、寒がりの私には寒さとの戦いでもある。

もっと屋内で楽しめるイベントが増えたらいいのに…イルミネーションも年末も屋外のイベントばかりで冷たい風が私を苦しめる。


「はぁぁ、幸せ」


ファミレスに着き、私と梨乃はドリンクバーを頼み、私は早速熱々の紅茶を飲む。

熱々の甘い紅茶が冷えた私の体に染みる。梨乃はカフェラテを飲みながら「温まるねー」とソファーに寄りかかり寛いでいる。


「やっと手が温まった」


「でも、顔はまだ冷たいね」


隣に座る梨乃が私の頬に手を当てる。冷え性の私の体温はかなり奪われている。

でも、温かいカフェラテで暖かくなった梨乃の手が私の頬を温める。


「そう言えば梨乃はさ。よく手をポケットから出してるけど寒くないの?」


「寒いけど…みのりのせいだよ」


「私のせい?」


「うん。みのりのせい」


私には意味が分からないけど、梨乃は納得しているから意味があるのかもしれない。

でも、なぜ…私のせいなんだろう?考えても理由が見つからないし、結局寒いだけだ。


「幸せだなー」


やっぱり室内は最高だ。寒さとは無縁で寒がりの私に笑みが溢れる。

出来ればここで、年越しをしたいけど美香や由香里に「みーちゃん!」と怒られるから願いはきっと叶わない。


「あれ?梨乃、香水付けてる?」


「えっ、付けてないよ」


「(くんくん)じゃ、梨乃の体臭か。梨乃の体からいい匂いする」


「ちょっと、、恥ずかしいって」


やっと体が正常に動き出し、鼻が効くようになった私は犬みたいに梨乃の首筋を嗅ぎ、梨乃が慌てて私から離れる。

やってしまった。お店の中なのに…


「ごめんね…」


「違う…みのりの距離が近かったから。それに、、みのりの唇が当たった」


「マジで⁉︎ごめーん。気がつかなかった」


私は急いで梨乃の首筋に私のリップが付いていないか確認する。良かった、軽く当たっただけみたいでリップは付いていない。


「みのり、紅茶が冷めちゃうよ…」


「あっ、うん」


暖かい室内で温かい飲み物を摂取すると元気が出てきた。私は梨乃と約束の時間まで沢山好きなアイドルの話をした。

梨乃と同じクラスだったら楽しかっただろうな…私の周りにはアイドル好きがおらずこうやって話せる相手がいなかった。


「あっ、由香里からLINEがきた」


梨乃が携帯を見ながらしまった…という顔をする。私も慌てて携帯で時間を確認すると約束の時間過ぎており、美香から何度も連絡が来ていた。


「梨乃ちゃん、遅刻ー!って由香里が怒ってる…」


「私の方も…美香からみーちゃん!!!って来てる」


あと20分で年が明ける。私と梨乃は急いでコートを着てお会計を済ませる。

梨乃と手を繋ぎ、神社まで全力で走った。必死に走りながら、何だろう…普段はこんなこと思わないけど青春してるなーって感じた。


高校時代は進学校に進んだせいで、勉強ばっかりでお母さんにオーディションを潰されたりと散々な目にあった。

でも、今は好きなことをやれ同じ方向(夢)を見ている同士が隣にいる。


梨乃と年が明けるー!と騒ぎながら走り、私達は沢山笑いあった。ギリギリの時間で由香里達の元に着き、2人に散々怒られ…

0時ピッタリにみんなでHappy New Year!と叫びながらハイタッチした。


今日は元日。みんないつもよりテンションが高く、梨乃が私に抱きつきながらみのりー!と私の名前を呼ぶ。

私も梨乃ー!と名前を呼び、抱きしめた。大好きな人達と過ごすイベントは楽しいし、出来なかった青春を取り戻している気分だ。



梨乃を強く抱きしめながら走馬灯のようにCLOVERを結成した時に少しだけ緊張しながら梨乃と話した会話を思い出す。

まだ、今みたいに垢抜けていない梨乃がアイドルオーディションを受けたのは中・高校と大人しい自分を変えたいからと言っていた。


この時に梨乃から虐めの話を聞き…めちゃくちゃ腹が立った。私は面倒くさがりでも理不尽なことが嫌いだ。


私に甘えるように抱きついたままの梨乃と戯れ合いながら、梨乃が変われて良かったと安堵する。

人に甘えることが苦手だと言っていた梨乃が私に抱きつき大好きー!と言う。みんな笑顔で、CLOVERになれて良かった。

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