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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第41話/Stay with me

松本梨乃.side


美香達のガヤに耳を塞ぎたくなる。知りたくなかったことを無理やり聞かされ、私の心はブラックホールのように光が消える。

美香も由香里もみのりも…誰も悪くないと分かっている。でも、初めての恋が何度も私を苦しめ、勝手に傷ついていく。


みのりが女の子とキスしたことがあるのを知り、私の心は不安しかない。

みのりは私のあり得ないを簡単に越えていくし、手を繋いでも指を絡めても、一緒にお風呂に入り抱きついても普通の表情で…みのりは人形なの?と疑いたくなる。


でも、分かっている。きっと、みのりは私以外の女の子と経験済みだから動揺もしないし、慣れているからこそ平常でいられる。

私は心臓が破裂しそうなほどドキドキしているのにみのりは正反対だ。私だったら相手が女の子でもこんなことをされたらドキドキするのにみのりは何も感じていない。


私の初恋の相手はきっと私が動かないかぎり私の気持ちに気づかないだろう。

私の気持ちに気づいてなんて…もう辞めた。だったら、みのりが私を意識するまでアプローチする。みのりの平常心を崩したい。


でも、私は告白する勇気はない。きっと今のみのりに告白しても振られるからだ。

私は確実にみのりと付き合いたい。もう友達関係なんて嫌だし辛すぎる。

私はこの関係から必ず脱却する。もう、みのりを見ているだけの構図は嫌だ。



まずやる事はみのりとの距離を詰め、周りに《みのりの》を認識させ公認にさせる。

周りから固めた方がきっと鈍感なみのりは私を意識するはずだ。


沸々と強い感情が湧き上がる。恋って凄い。私は好きな物になると人が変わるみたいだ。

昨日読んだ漫画のヒロインのように、好きな物のためなら何でも出来るし、もう【静】でいるのを卒業し活発に動きだす。


前を向いた時、ルームミラー越しによっちゃんと目が合う。よっちゃんの眉毛が下がっており、私に何か言いたげだ。

でも、よっちゃんがどんな気持ちでそんな表情をするのか分からないけど気にしない。


「みのり…」


「何?」


「後で写真撮ろうよ」


「うん。いいよ」


みのりの腕に絡みつくようにピッタリと体を引っ付ける。この重い感情はみのりには丁度いいはず。超がつくほどの鈍感だから。

今の私を2年前の私が知ったらきっと驚くだろうな。奥手だった私が動こうとしている。


みのりへの気持ちに気づいてから、変わっていく私をみのりはどう思うかな?

変化に気づいてくれるかな?それとも、不思議がって引かれるかな…

みのりに嫌われたくないから怖いし、考えすぎると弱気な私が出てくる。


大変な人を好きになり、大変な恋をし、大変すぎて、悩みまくって涙が出そうだ。

そんな悩む私をみのりはめざとく見つける。まだ涙は流してないけど、泣きそうな私に気づき「梨乃」と私の名前を優しく呼ぶ。


こんなの好きになるよ。好きにならない方が無理だ。何度も私を好きにさせる。


「私の膝で寝る?」


「えっ?」


「ほら、着いたら起こしてあげる」


みのりが私があくびをして涙を溜めていると勘違いしてると残念な気持ちになりながら、私はみのりの膝の上に頭を乗せた。

でも、頭を優しく撫でてくれて…そっと指で私の涙を拭いてくれた。


やっぱりこの気持ちは止められない。周りに気づかれないように私を支えてくれる。

このさり気ない優しさは心に刺さるってみのりは分かってるのかな?

きっと分かってないだろうな。鈍感だし、女の子慣れしすぎててムカつくし。


私はみのりの手を掴み、顔の位置に引きよせる。みのりの手を頬に当て、この想いが届きますようにと神様に願った。





藍田みのり.side


梨乃は出会った頃から時々、言葉に詰まるというか上手く言葉にできないタイプだった。

梨乃は話したいことをちゃんと待てば、想いを言葉にする。だから、そっとしておこうと待っていたけど察するってことも改めて大事なことだと気づかされる。


◇美沙は想いをすぐに言葉にする

◇梨乃はすぐに想いを言葉にできない


人は当たり前に違う。私の悪い癖が出てしまった。美沙とすぐに比べてしまう。

人に興味がなく、面倒くさいがいつも根底にある私はアイドルとしてキラキラと輝くはずもないし、こんな自分に嫌気がさす。


努力しなければ憧れのアイドルになれないのに自分から拒否し逃げている。

みのりの…やっぱり、頑張りたいな。カップル売りなんて私の独りよがりだし、ずるいことだって分かっているけど、もう何も諦めたくないしもっと前に進みたい。


そっと梨乃の唇に指を当てる。唇には流石に出来ないけど、頬だったら…と邪な考えが私の頭を占領する。


ファンは《みのりの》を求めている。

需要があるなら供給するのは当然のこと。

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