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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第40話/青春のアップルティー

梨乃の視線が私から外れ、梨乃は下を向き、ドアを開け出ていってしまった。私と由香里は顔を合わせ、突然いなくなってしまった梨乃に困惑する。


でも、美香が梨乃と一緒に「おはよう〜」と言いながら部屋に入ってきた。

梨乃は下を向いたままだけど、もういなくなろうとはしない。私はおはようと言いながら梨乃の表情を見ようとしたけど無理みたいだ。


下を向いたままの梨乃。美香はいつも通り朝からテンションが高く由香里と騒ぎ出す。

私は2人の相手をしながら梨乃を気にするけど梨乃は私を見てくれなかった。


「みんな、おはようー」


「あっ、よっちゃん、おはよう〜」


今度は今もテンションの高いよっちゃんが部屋に入ってきた。美香が同じテンションでよっちゃんに挨拶をする。


「さぁ、レコーディングに行こうか」


「よっちゃん、今日はテンションが高いね」


「まぁね。良いことがあったから」


美香と話すよっちゃんは笑顔で、良いことがあったとは言っているけど何だろう?

プライベートなことなのかは分からないけどよっちゃんが楽しそうだ。


その反対が梨乃で、静かに歩き出す梨乃の横に行き、私は声を掛けた。

でも、私と話をしたくないのか「うん」しか言ってくれず、私も言葉に詰まる。


私は梨乃を怒らせることをしたのだろうか?沈黙が続き、しばらく梨乃をそっとした方がいいよねと思っていると梨乃が私の腕を掴み「ごめん…」と謝られた。


「梨乃…どうしたの?」


「私の問題なの…」


「そっか」


きっと梨乃の中で何か葛藤しているのだろう。そんな時はそっとするのが一番だ。

私はこれ以上何も言わず歩き、梨乃と横並びで車に乗った。梨乃は私の腕を掴んだまま黙り込み、私の肩に頭を乗せる。


最近、私は梨乃と写真を撮ることが減った。みのりのを辞めてしまったからではなく、無理して写真を撮るのを辞めた。

梨乃を利用するのは心苦しかったし、そもそも写真を撮ること自体が苦手なんだ。


こんな風に私に甘える梨乃とのツーショットを撮り、SNSに載せたらきっとファンは喜ぶだろう。実際、みのりのファンから私達の写真が見たいとコメントが来ている。

ファンが喜ぶことをやったら盛り上がると分かってるのに…私は落第アイドルだ。



車の中で何もすることがなく、梨乃が私の肩に寄りかかっているから動けず、ボッーとしていると梨乃が私の手を握る。

手遊びみたいに触られ、何も抵抗せずなすがままにしていると梨乃と私の指が絡まった。


恋人繋ぎなんて美沙といつもやっているから私の心は平常でピクリとも動かない。

そんな私に梨乃は眉毛を下げ、悲しげな顔をする。でも、そんな梨乃に気づかない私は偶々ルームミラー越しによっちゃんと目が合う。


ハンドルを握りながら困った顔をするよっちゃん。さっきまでテンションが高く元気だったのに、私と視線が合うと苦笑いをする。

人の心の中なんて興味がないけど、今だけは知りたいと思えた。梨乃が何に悩んでいるのか気になるし、よっちゃんも変な感じだ。


唯一、分かりやすいのは後ろの座席に座っている美香と由香里で、車の中で騒ぐ2人の声に少しだけホッとする。

そう言えば、クラスメイトに「みのりは鈍感だよね」って言われたことがある。


確かに私は鈍感なのかもしれない。でも、理由は明確だ。私が人間に興味がない。

いちいち、人の気持ちを察するなんて疲れるし超能力者ではないから察しろと言われても無理に決まっている。


だから、美沙が一緒にいて楽なんだ。美沙は思っていることを言葉にして言ってくれる。

だから、私も答えられる。私の気持ちに気づいてほしい、分かってほしいなんて私からしたら無理難題で察してほしいなら、もっと行動に起こしてほしい。


何てことを考えていると、後ろから美香が私に「女の子とキスしたことあるのー⁉︎」と大音量のうるささで聞いてくる。

由香里が事務所で話していたことを美香に話したみたいで面倒くさいなと思いながら女子校あるあるなのと言うと騒ぎ出す。


私の通っていた女子校は進学校だけど、進学校ゆえにストレス発散ではないけど欲情の発散を友達同士で発散していた。

私はいつもストレスの的になり…抱きつかれたりベタベタ引っ付かれるのが日常茶飯事で卒業する頃には何も感じなくなっていた。


高校生なんて思春期真っ盛りで、男も女も猿と猫になる。肌の温もりを知りたい高校生は近場で肌の温もりを感じようとする。


キャーキャーと騒ぎ出す美香と由香里。隣の梨乃はまた黙り込んでしまった。

そして、またルームミラー越しによっちゃんと目が合い二度目の苦笑いをされる。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに美沙とみのりが仲が良くて、梨乃がじとじとしているのに。それなのにプロローグでは慣れてしまって何も感じなくなるほどに、梨乃と何度もキスを繰り返しているという矛盾。 この矛盾が溶けるまで…
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