第220話/Sweetest Pie
吉田夏樹.side
忙しい日々を送るのは仕事人間の私にとって最高の日々だ。どれだけ残業が続いても、CLOVERのためなら何時間でも構わない。
それほど、重度のワーカーホリックで友達の春菜にも呆れられている。
昨日、みのりと高橋君の映画の番宣のための色んな雑誌の撮影がやっと終わった。あとは映画の公開時期になったらテレビなどでプロモーションが始まる(主に高橋君)
明日からみのりはドラマの撮影が始まり、柚木天になる。私はこの日を待ち望んでいた。みのりが演じる柚木天が早く見たくて。
甘いコーヒーを飲みながら、椅子の背もたれに寄りかかる。事務所は私一人しかおらず、ある意味のびのびと仕事が出来ている。
そして、休憩のたびに出来上がった《sugar》のMVも見れるし、ある意味得をしている。
sugarのMVの公開はまだ先だけど、早くこのMVもラブ・シュガーファンに見てほしい。
ノスタルジックな雰囲気の世界感の中で苅原絵里と柚木天が甘い休日を過ごしている。
MVの森川愛ちゃんは流石、若手の実力派人気女優で、演技だとちゃんと分かっているのに画面の中に苅原絵里になりきりラブ・シュガーの世界に引き込んでくれる。
みのりは新人だけど森川愛ちゃんと同じぐらい堂々とした演技で柚木天そのものだ。
sugarのMVだけで、みのりの新たな一面が開花している。きっと、みのりの魅力にハマり虜になる人が出てくるだろう。
ラブ・シュガーは19歳の女の子の恋物語。私がラブ・シュガーの設定で上手いな思った所は年齢の部分だった。
10代と20代の狭間にいる年齢は子供から大人への成長の一歩を踏み出す年齢だ。
だからこそ、この漫画は絵里と天のラブシーンが多くドラマもラブシーンが満載だ。そして、10代の設定でここまでラブシーンをするGLの映像作品を私は知らない。
だからこそ、好きな人には待ちに待った作品だった。邪魔者もいない、最後まで幸せに浸れる作品が理想通りにドラマ化される。
私のパソコンの画面の中ではみのりと森川愛ちゃんがキスをし、笑いあっている。側から見たら2人は恋人関係そのものでお似合いという言葉がぴったりだ。
お似合いすぎて怖いくらいに…
異性同士と同性同士の【お似合い】の言葉の重みは違う。これは私の勝手な解釈だけど、このお似合いという言葉には願いの込められ方が違うのだ。今見ているものが本当であってほしいという強い願いが込められている。
これからきっと、藍田みのり×森川愛のコンビは更に人気が出る。みのり×梨乃より確実に人気のコンビになるだろう。
コーヒー、もう1本買おうかな…。甘すぎるsugarのMVを見ていると、反動で苦いブラックコーヒーを飲みたくなる。
ブラックコーヒーはリフレッシュ効果でき、砂糖の甘さを抑えてくれる。
砂糖は脳のエネルギーになるけど、過剰摂取は危険だ。だからこそ、私は危険信号を察知しブラックコーヒーを飲んで中和しないと。
このドキドキは異性同士の恋愛ドラマでは感じることが出来ないドキドキ。こうやって人は知らなかった自分を知るのだろうね。
私自身もめちゃくちゃ驚いている。こんなにも…中毒性があるなんて思わなかった。
この中毒は勝手に妄想などして、自分の中の世界をいつのまにか作り出してしまう。理想を求めてどっぷりとハマり続ける。
もし、みのりが付き合うとしたら…
松本梨乃?
森川愛?
谷口美沙?
私はMVの再生を止め、椅子から立ち上がる。急いで自動販売機の前に行き、ブラックコーヒーを買い、一気に飲んだ。
sugarのMVを見るのはしばらく辞めよう。今日は仕事としてチェックのために見たけどいつのまにかのめり込んでいた。
でも、このMVが公開されたらどれだけ反響が来るかな?藍田みのり×森川愛の2人にどれだけの人が奈落の沼に堕ちていく?
最強の物語がもうすぐ始まる。
ラブ・シュガーはきっと人を狂わす。




