第204話/湧き上がる期待感
まだ、ドラマが始まってもいないし、ラブ・シュガーの制作発表もされていないのに私と愛のコンビの熱が熱くなっていく。
今日は初めてのソロでのラジオ出演で緊張していた。映画のことやデビュー曲について語る日で頑張って番宣をした。
暫く話した後、リスナーからの質問コーナーで私は愛について質問をされる。
ラジオネームがあいみの好き!さんで、私と愛のコンビのことかな?って思っていると、やっぱり愛と私のコンビが好きな人で…
愛が昨日、私と海で撮った写真とドライブした写真をSNSに載せており、その写真についての質問だった。
〈昨日、森川愛ちゃんとドライブデートをしたと知り驚きました!免許はいつ、取られたんですか?〉
「えっと…高校3年の時に取りました。私は大学に進学しなかったので時間に余裕があって。親に免許証は早めに取るならとった方がいいと言われて」
次の質問者は…また、あいみの好きな人だ。ラジオネームは普通で、質問は愛への質問ではないけど愛の名前が出てくる。
〈私は森川愛ちゃんとみのりちゃんのコンビが大好きです!質問なのですが、みのりちゃんは勉強が得意と聞きました。どの教科が得意ですか?〉
「英語です。でも、得意とかではなく好きだったので一番勉強しました」
〈みのりちゃんの宝物ってありますか?私はCLOVERのデビューシングルのCDです!〉
やっと、最後に普通って言ったら変だけど、愛が関連づいていない質問が来て安心する。
もうすぐドラマの制作発表があるからこそ、愛に関連したことを言われるとドラマの件が漏れたのかなって心配になる。
「私の宝物は好きなアイドルのコンサートに行った時にゲットした銀テープです。私もいつか同じ場所に立つぞという気持ちがあるので。後は…ネックレスですね。一番仲の良い友達とお揃いなんです」
私はそっと首元にあるネックレスを触る。美沙とお揃いのネックレスは心の安定剤だ。
「それでは最後にCLOVERのデビュー曲の曲紹介をお願いします」
「はい。皆さんのおかげでデビュー曲が初登場3位という素晴らしい順位を頂けました。それでは聞いて下さい。CLOVERでKiss Me」
ラストにCLOVERのデビュー曲が流れ、私はDJの女性にお礼を言いながら立ち上がる。
1人での仕事はまだ慣れないから緊張するけど終わると達成感がある。
ブースを出るとよっちゃんが「お疲れ〜」と言ってくれて、安心感が湧き上がった。
車に乗った際、よっちゃんからコーヒーを渡され、背もたれにもたれかかりコーヒーを飲みながら一息つく。
「みのり。昨日、森川愛ちゃんに会ったの?」
「うん。偶然ね」
「そうなんだ」
昨日の愛とのドライブは偶然出会ったゆえの出来事だった。でも、愛はSNSにみのりとドライブ〜しか書いてないからデートだ!と喜んでいるファンが多い。
これで愛と私のドラマが発表されたらどんな反応が来るのかな?今回の話はGLで、原作があるからファンは先にドラマの内容を知ることができ盛り上がれる。
「みーちゃん!森川愛ちゃんとドライブデートしたの⁉︎」
事務所に着き、打ち合わせのため会議室に入ると先に来ていた美香が興奮しており、テンションの高い声でいきなり質問をしてくる。
由香里も興奮気味に「したの?したの?」聞いてくるけど、写真がSNSに上がっている。
「愛のSNSの写真を見たんでしょ」
「見た!」
「偶然、会ってドライブしたの」
「凄い!運命だ!」
由香里が興奮気味に話すから私だけが圧倒されてしまう。美香もワーワー騒いでいるし、よっちゃんは資料を取りに行っていないし、梨乃だけが静かに椅子に座ったままだ。
「美香!運命ってやっぱりあるんだよ!」
「ねぇ!」
2人の態度がさっきよりおかしい気がする。なぜか、めちゃくちゃ喜んでいて「聖地で偶然会うなんて運命でしかないね」と美香が嬉しそうに大きな声で言う。
「何?聖地って」
「みーちゃん、知らないの⁉︎分かってて行ったんじゃないの?」
「どう言うこと?」
由香里が驚いた顔をしながら私に詰め寄る。美香も「嘘でしょ」と驚いており、私だけ訳が分からなかった。
「昨日、みーちゃんと森川愛ちゃんがいた場所はラブ・シュガーの聖地なんだよ」
「えっ…そうなの?」
「そうだよ!原作の本を読んだんだよね!なんで知らないの!」
今度は美香にも詰め寄られ私は完全に壁に追いやられる。確かに海が見える場所は最初の方で絵里と天がデートした場所だ。
この場所で絵里と天はデートをして夜にキスをしている描写がある。
でも、漫画本には場所(住所)までは書いてないし…分かるはずがない。
「みーちゃんが行った場所は作者の人がSNSで絵里と天のデート場所って上げていた場所なんだよ」
「そうなの?知らなかった…」
一瞬、まだ制作発表前なのに匂わせ的なことをして大丈夫かな…って思ったけど、流石にバレないだろうって気持ちに切り替わる。
本当に愛と会ったのは偶然だし、ドライブシーンは原作にないから繋がらない。
「あー、早く放送されないかな」
「ねぇ!早く見たい!」
「ゆーちゃん。今度、聖地に行こう!我慢できない!」
「もちろん!」
今も興奮ぎみの2人を見ているとドラマが放送された時、きっと大変だろうなって苦笑いしたくなる。でも、こんなにもハマる魅力があるってことは大きな力になる。
もう少ししたら制作発表がされる。どんな評価が下るのか怖いけど楽しみになってきた。




