第190話/Changing of the Seasons
今日もダンスレッスンの日で私はストレッチをしながら心を落ち着かせる。
やはり、推しのいるグループのスキャンダルはキツいし、推しは何もしていないのに叩かれているし、あまりにも不条理すぎる。
これで、何度目なの…と思うとイラつきもあるし、また私の推しがリーダーだから謝るの…と悔しい気持ちでいっぱいだ。
何とか誤魔化すことはできなかったのかなっと思ったけど、彼氏と一緒にいる写真をハッキリ撮られていたから弁解は無理だ。
彼氏と腕を組み、デートしているメンバーを見た時、ボソッとバカ野郎と思いを吐いた。
ずっと、やるせない思いが駆け巡る。私の推しは撮られてしまったメンバーと一番仲の良いメンバーで…Stellaのファンから理不尽な叩かれ方をしている。
リーダーだから、メンバーが不祥事を起こすたびに謝罪して…今回も私の推しはスキャンダルに巻き込まれた。
特に私の推しと撮られてしまったメンバーは仲良しの人気コンビだったから余計に騙されたと嘆くファンが多く騒いでいる。
きっと、2人がカップル売り的なことをしてなかったらここまで叩かれなかった。ファンに幻想を見せ続けていたから反動が大きい。
SNSに私の推しは仲の良いメンバーに彼氏がいるの知ってたよね?と書かれている。
私の推しもどうせ彼氏いるんでしょ!と勝手な妄想を吐き捨てるようなコメントが書いてあるし、被害妄想があまりにも酷い。
これがカップル売りの弊害。夢を壊されたファンは怒りに満ちており、2人はおろか他のメンバーの暴言も書き始め、あれだけ応援していたはずのStella自体を否定する。
必死に応援していたのに手のひら返しのようにアンチになってしまった人が多く、ゲンナリして私は携帯を見るのをやめた。
思い出すだけでも心が疲れ、アイドルという職業にも疲れを感じてしまう。
◆アイドルなのに…
◆恋愛禁止なのに…
って何回見てきた単語だろう。でも、この言葉なきっと永遠に言われる言葉。
決してなくならない言葉で、アイドルも人間だからこそ消えない言葉だ。
私はずっと芸能の仕事をやっていきたい。だから、足場を念入りに固めていかないといけなくて、ここで失敗したらおしまいだ。
人気アイドルグループのStellaでさえ、スキャンダルで叩かれ…アイドルは世界一窮屈で屈折した渦が渦巻いている世界だ。
だけど、その世界に飛び込みたくてみんな切磋琢磨している。それだけ魅力的で…私は失敗しないと過信している。
吉田夏樹.side
今日、ブログでスキャンダルを起こしたメンバーが謝罪をした。それでも、騒ぎは収まっておらず今も激怒したファンが多数いる。
ファンは簡単に〈辞めさせろー!〉とか言うけど、どう考えても無理な話だ。恋愛スキャンダルぐらいで脱退とかあり得ない。
それに、何を言っても焼け石に水の状態で聞く耳なんて持たない。だから、その熱が消えてなくなるまで放っておくしかない。
私が事務所の社長だったらそうする。留まっても何も変わらないし、先に進むしかないし、どれだけ炎が熱くても無視をする。
光は続かせるのは難しい。Stellaはこれから更に人気アイドルになる予定だった。
アリーナのライブを成功させてと事務所も思っていたはずで、なのに最悪なタイミングでスクープされている。でも、きっと…あの写真はだいぶ前に撮られた写真だ。
週刊誌は意地悪だから大きなライブがある週に掲載した。まるで絶好のタイミングというかのように。本当、意地悪すぎる。
アイドルの恋愛は格好のいいネタであり、止めることのできない本能。
考えれば考えるほど胃が痛くなってきた。私はアイドルは偽造する職業だと思っている。
ファンに夢を与え、夢を見させる。でも、この夢は作られたもので【偽造】だ。
偽物の夢を見させるのがアイドル。勿論、本物の夢も見せる。ただ、恋愛的なものは全て偽造。見えるものは嘘しかない。
アイドルはファンと恋愛をすることはないし、メンバー同士の恋愛もない。
全ては作られた夢で本物ではない。
CLOVERではみのり×梨乃が人気があるけど2人はただの友達で仲の良いメンバー関係。
きっと、ファンにとって唾を吐き捨てるほどに真実ほどつまらない。
でも、アイドルは売れるために、人気を得るために頑張ってファンに嘘の夢を与える。
今の状況の中、Stellaのファンはどれだけ悲しんでいるのかな?夢が砕けたあとはどこに行く?ファンに謝罪をしてしまったことでメンバー同士のカップル売りは破綻した。
ねぇ…次の夢を誰で見る?
私は確信をしている。CLOVERはアイドルグループの新たな星になると。
みんなは吠えたがっている。悲しむのではなく声を張り上げるぐらい応援したいと。
アイドルの恋愛は自己責任と連帯責任だ。胃がキリキリするぐらい周りを困らせるものだけどきっと、一生無くならない。
だけど、目移りも推し変も全て自己責任。次の夢を追いかけるのも、押し続けるのも自己責任で決めればいい。
夢は無限大で、私は明るい夢を見たい。最初は存外的な感じでいいんだよ。そうやって目移りしていくものだから。
アイドルは虜にしたものが勝ち。良く出来た物語はいくつも転がっている。
だから、私はアイドルから離れられない。マネージャーになっても追いかけている。
アイドル像は無限にあるのだ。




