表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
190/221

第189話/不明瞭の相対性

松本梨乃.side


自分が不甲斐なくて、嫌いで嫌になる。心配をしてくれたみのりに酷いことを言って、私の心の余裕のなさが分かる。

私はずっと、こんなにも感情的な部分があるなんて知らなかった。みのりに恋をして、嫉妬や歯止めの効かない感情に振り回される。


「ごめんなさい…」


と謝り、私はレッスン室から出ていく。頭を冷やしたくて、冷静な自分を取り戻したくて1人になりたかった。


冷たい水で顔を洗うとやっと、冷静さを取り戻し私は床に座り込む。

何をやっているんだろう…と気持ちに押しつぶされそうで苦しい。私が悪いのに美香達に嫉妬をして最低なメンバーだ。


◇動きたいのに動けない

◇怖くて告白ができない

◇みのりに振り向いて欲しいと思っている


全部、私の身勝手な感情。動きたければ動けばいいのに振られるのを怖がっているし、いつも私は受け身で何も動いていない。


「梨乃…大丈夫?」


みのりの声がして顔を上げるとタオルを持ったみのりがいて私を心配そうな表情で見る。

どこまでも優しいみのりは私が悪いのに怒らなくて私の心配ばかりする。


「タオル…顔を拭く?」


「うん。ありがとう…」


「梨乃、、何かあったの?」


「何もないよ。本当に…」


「そっか…」


きっと、みのりは私が誤魔化していると思っているよね。違うよ、本当に何もなくて苦しいだけなの。私が意気地なしのせいで。


「みのり…」


「何?」


「私もみのりの顔が好きだよ」


「えっ?ふふ、ありがとう」


「カッコいい」


「私も梨乃の顔が好きだよ。可愛い」


みのりに可愛いと言われると自分に自信がつき、自分磨きを頑張ろうと思える。

そして、笑顔になれる。みのりのお陰で笑えたよ。全て、みのりのお陰。


「練習、戻ろう」


「いいの?」


「うん。先生が待ってるし。それに美香達が心配してると思う」


「分かった。梨乃、キツかったら言ってね」


強くなりたい。何度、こんな風に思っただろう。何度も強くなりたいと思いながら強くならなくての繰り返しで…

でも、今度こそは強くなる。みのりに迷惑を掛けたくないし、本気で変わりたい。





吉田夏樹.side


お風呂上がりにビールを飲みながらみんなのスケジュールを確認する。今日は梨乃の件があり疲れている。

でも、仕事は尽きないから本を読みながら体を少しずつ癒していく。


梨乃が今日、怒った原因は美香達がみのりに対して「顔が好きー」と言ったからだろう。

本気でみのりが好きな梨乃はちょっとしたことで嫉妬するようになった。


ハッキリ言ってこのままではまずい。梨乃の感情が不安定だし、みんなに迷惑がかかる。



はぁぁとため息をつきつつ、おつまみのさけるチーズを食べるととても美味しくて少しだけ元気がでる。ビールには塩っけのあるおつまみは最高の組み合わせだ。


最近は漫画本しか読んでなかったから小説を読むのが楽しくて夜更かしをしてしまう。

でも、流石本屋大賞をとった作品でめちゃくちゃ面白いし、映画化されたらきっと賞が取れる作品になるだろう。


前回、森川愛ちゃんには負けたけど今回は森川愛ちゃんは多分いないだろうし、後は…梨乃の頑張り次第になる。



本を手に持ったまま、天井を見上げる。さっき、お風呂に入る前にSNSで見たスキャンダルを思い出し、ため息を吐きたくなった。

人気アイドルの熱愛がスクープされ、SNSは大荒れしており、事務所は今頃大変だろう。


マネージャーの身としては頭を抱える案件で、それもタイミングが悪すぎて苦笑いどころではない状況だ。

人気アイドルグループStellaの人気メンバーの熱愛写真が有名雑誌にスクープされた。


もうすぐ、アリーナライブなのに…事務所にとって一番最悪なタイミングだ。


21歳は恋愛をしたいお年頃だとは分かるけど、21歳なんて事務所からしたら大事な時期で本人の未来もかかっている。


このままだとライブはキャンセル祭りかドタキャン祭りになる。SNSではStellaファンの阿鼻叫喚ぶりが凄かった。

人気メンバーだからこそ、騒動が大きく仲の良いメンバーまで叩かれている。


人の恋愛なんてほっとけばいいのにって思うけど、そうはいかないのが芸能界でアイドルという職業の宿命だ。

あっという間に拡散されたスクープの影響でCDを叩き割った画像がアップされていたり、過剰な反応が乱立していた。



私としては《アイドルだって人間なんだよ》という気持ちと《やっちまったよ…》という気持ちがある。

マネージャーとしてはやっちまったよの方だけどこれまで沢山のアイドルの熱愛が出てきたからどうすることもできないものだ。


だからこそ、やってしまったことは仕方ないと捉え、前を向くしかない。

勿論、アイドルをやっている間はバレないよう恋愛をしてほしい。せっかく積み上げた実績が簡単に崩れてしまうからだ。


Stellaはアイドルをやりながら女優としても活躍する人気グループで、スクープされた子は女優としても人気のある子だ。

私はマネージャーとしてCLOVERと同じ売り方をしているからStellaを目標としていた。


ファンは…なんでアイドルに純白のプリンセスを求めるのかな?可愛くて、活発な子がモテないはずがないし、彼氏がいた子が多い。


それでもアイドルに【嘘】を求めてしまうのはある意味お馬鹿で…純粋で常に夢を求める生き物なのかもしれない。


リアルは残酷しかないのに…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ