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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第180話/ALL LIGHT!

今日はラストライブ。昨日は久々の休みで、私は一日中寝ていた。本当は勉強をしたかったけど目の隈が気になっていたし、ここで無理をしたら大事なライブが台無しになる。


だから、今日は体力が回復しリハーサルから全力で踊れている。梨乃も美香も由香里もみんな全力で踊り気合が入っている。


「はーい。休憩するよー」


よっちゃんの声掛けに私達は水を飲み、タオルで顔を拭きながら休憩をする。

今日はいつもより汗をかいている。それほど、気合が入っているってことだ。


ステージに座り、周りを見渡すと胸が熱くなった。約1年半、お世話になったライブハウス。もう、戻るつもりはないけどとても感謝しているし、思い出が沢山詰まっている。


最初…上擦りながら自己紹介をしたのを思い出す。めちゃくちゃ緊張したし、あの緊張感はもう味わいたくないかな。

歌には自信があったのに緊張で音痴だった思うし、ダンスもボロボロかも。


でも、そんな私のファンになってくれた人達に感謝だ。私のファン第一号になってくれてありがとうと大きな声でお礼を言いたい。


「寂しいな…」


梨乃が下を向きながら寂しいと言い、落ち込んでいる。次のライブが決まっていれば、梨乃もここまで寂しがることはなかったのかもしれないけどまだライブは未定のままだ。


「梨乃、もうちょっとの我慢だよ」


「どれぐらい…?」


「2ndシングルの売り上げ次第」


「何それー」


「曲がヒットしたらアルバムも売れて、来年にはツアーが出来るかもしれないし」


「先が長すぎる…」


「じゃ、1日だけのライブとか」


「やりたい!」


よっちゃんにお願いしたら、1日だけのライブだったらやれるかもしれない。

これはただの願望だからどうなるかなんて分からないけど私もずっとライブが出来ないのは辛いしルーティンがなくなるのは寂しい。


梨乃は私の言葉で元気を取り戻し、早速よっちゃんの元に行ってしまった。私は床に寝そべり、天井を見上げる。

もう少しだけここでの思い出に浸りたいし、全力でリハーサルをやり疲れている。





目を閉じ、耳だけ澄ましていると美香と由香里が元気な声で楽しそうに話している。

そして、梨乃がよっちゃんに捲し立てるように話をしているみたいだ。


きっと、よっちゃんは苦笑いをしていそうだ。でも、1日だけのライブが叶うといいなって思っているから梨乃に頑張ってほしい。





〈CLOVERです…〉


今より幼い顔で、幼い声で初めてグループ名をお客さんの前で言った。緊張はしたけど、あぁ…アイドルになれたんだと喜びもあった。

小さい頃から憧れていたアイドルに私はなれ、夢って叶うんだって嬉しかったよ。


「みんなー、そろそろ着替えてー」


よっちゃんの声に私は目を開ける。起き上がり、もう一度景色を目に焼き付けた。

今日で最後のライブを心に刻み、今までのライブを糧にCLOVERは飛躍する。


そして、成長しみんなの元に戻ってくる。ファンのみんなと約束したし、必ず約束は守るよ。出来るだけ早く戻ってくるから。


「みのり、着替えよう」


「うん」


梨乃に腕を組まれながら歩き出す。まだ終わってないのに懐かしみながら楽屋に行き、私はCLOVERの藍田みのりになる。

衣装に着替えると気が引き締まり、自分を鼓舞することができる。


「みのり」


「何?」


「さっきね。よっちゃんに約束を取り付けたの。2ndシングルがトップ10に入ったらライブをしようって。だけど、するなら2000人規模のライブになるから今より人気を上げないと大変だよった言われたから…」


「頑張らなきゃね。まずは、トップ10に入ることが目標だね」


「うん。絶対に叶えてみせる!」


夢は大きく、願いは言葉にして。夢は見ないと絶対に叶わないし、夢を持つことは自分の活力になり成長できる。


「まずは、2ndシングルをトップ10!」


と私が言うと、梨乃が笑顔になり「そして、ライブ!」と言った。

目標を口にするのは目標を諦めないためにもなる。叶えたい夢だからこそ声に出す。

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