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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第17話/恋の音色ライン

今日はライブもバイトも休みで一日中寝て過ごす予定だった。でも、昨日梨乃に明日遊ぼうと言われ、急に予定が決まりいつも通り目覚ましのアラーム音で起きる。


窓の外から雨の音がする。急に予定を決めたから天気は仕方なく、雨の日に出掛けるのが嫌いな私はため息を吐いた。


顔を洗い、パンを食べたあと洋服に着替え髪をセットする。化粧を終えたあと、私は携帯で時間を確認し、汚れてもいい様にスニーカーを履いて玄関のドアを開けた。

私は更に不機嫌になる。傘がないと外に出れない雨量でうんざりだ。


雨の中、傘をさして歩き、梨乃と待ち合わせの駅まで向かうため電車に乗る。

窓から見える景色が灰色でより雨が嫌いになる。服が濡れるし不快感しかない。

それに傘をさすことが何より面倒で、雨の日に美沙と遊ぶ時は家でしか遊ばなかった。


渋々、外に出た私は駅に着き、壁に寄りかかりながら携帯を触り梨乃を待つ。

今日の服装は適当だ。洋服が雨に濡れるのが嫌いだから適当に選んだ。だけど、少し遅れてきた梨乃の服装はとても可愛いかった。


「みのり。ごめん、遅れた」


可愛い服を着た梨乃に声を掛けられビックリした私は反省をする。服装が違いすぎて、同じアイドルなのにあまりにも差が酷い。

やってしまったと思いつつ、気にしてない風を装い梨乃に大丈夫だよと伝える。


「雨が酷いね」


梨乃が空を見ながら残念そうな顔をする。私はそうだねと言い、少しだけ不満げな顔をする。雨が本当に嫌いだから。

でも、不満はあっても何も変わらない。だから、必死に気持ちを切り替える。


「今日、どうしようか?」


「私ね、行きたい所があるの」


梨乃が携帯で見せてくれた写真はよくテレビで見る人気のカフェだった。このお店をテレビで見た時、食べ物は美味しそうだけど値段を見て驚愕した。

私は自分が美味しいと思う物を食べたい派で、食べ物に関して流行り物に興味がない。


流行りの物は美味しいけど一過性の物ばかりだ。結局、好物には勝てない。だったら、バイトやアイドル活動で稼いだお金は本当に自分が食べたい物に使いたい。

美沙に私の考えは年寄りだと言われたことがある。新しい物を知ろうとしないと。


そんなの分かってる。でも、私はお金持ちでもないし私が必死に稼いだお金だ。

だから失敗をしたくないし無駄が嫌いだし、流行りの物は無駄に高い。美味しいか分からない物に高いお金を出したくなかった。


だけど、そんなこと梨乃には言わない。付き合いもあるし、梨乃が食べたい食べ物があるのは当たり前だから合わせる。

悩むのが嫌なんだ。悩む時間が一番面倒で時間の無駄に感じる。


「みのり、ここでいい…?」


「いいよ。美味しそうだね」


「やった。みのりと行きたかったの」


梨乃が嬉しそうに笑う。やっぱり合わせた方が人間関係は上手くいく。

また傘をさし、雨の中カフェに向かう。今日は雨だし平日だから並んでないといいなと思いながら歩き出した。


「ふふ、今日はみのりと目線が一緒だ」


「えっ?」


「みのりがスニーカーで私がヒールのある靴を履いてるから身長一緒だね」


私と梨乃の身長差は5センチでそんなに大差はないけど、梨乃が同じだと嬉しそうに言う。

私としては梨乃の足が濡れないかが心配で、傘ではこの雨を塞ぎきれない。


そんな私の心配を他所に梨乃は「楽しいな」と呟く。私は雨で心が萎えているのに、梨乃の私とは正反対の明るさが羨ましい。


「みのりと出掛けるの久しぶりだねー」


「うん。そうだね」


誰よりも梨乃は可愛い女の子だ。雨なのに笑顔で、楽しそうに笑い…私は出来るだけ感情が表に出ないようにした。

私は昔からドライだった。感情の起伏がないし、群れるのが苦手だ。


面倒くさがりで、何で私がリーダーなんだろうと今も思っている。私がリーダーになった理由はよっちゃんに面倒見がいいと言われたからだ。他のメンバーも推薦してきた。


私は別に面倒見がいいわけではない。根底に面倒くさいことが嫌いで、私が動いた方が早いからでしかない。


そんな私は気を引き締め、心の中で今日食べる物が美味しかったらいいなと願う。

顔には出さないけど、ガッカリするのは嫌だ。

1200円以上出して、こんなものかなんて梨乃だって嫌なはずだし、ちゃんと値段に見合った物だったら嬉しい。


「ふふ」


「どうしたの?」


梨乃の声に私を横を向く。梨乃を見ると照れたような表情をしており、嬉しそうだ。


「デートみたいだなって」


「デート?」


「今日のみのりの服装が男の子っぽいから」


今日の私の服装はパーカーにズボンにスニーカーだ。確かに良く言えば男の子っぽく、悪く言えばズボラな格好。


「ごめんね、もっとちゃんとした格好をしてくればよかったね」


「似合ってるよ」


「それ、褒めてないからね」


「本当だよ。カッコいい」


「梨乃も可愛いよ」


「ありがとう…照れるね」


女性アイドル好きの私は常々、女の子の可愛さは尊いものだと思っている。人それぞれの好みもあるけど、本気で可愛い人に対して妬みや嫉妬は虚無にさせる。


「やっぱり、梨乃の顔好きだな」


「えっ?」


「あっ、タイプってこと」


梨乃は私の好きなアイドルグループの推しメンに少しだけ似ている。アンニュイな感じがあり、儚げな雰囲気を持っていた。


「ありがとう…」


まだお店に着いていないのに雨が酷くなってきた。足元が気になるのか下を向く梨乃に早く行こうと伝え、早歩きする。

だけど、梨乃は立ち止まったままで、梨乃の名前を呼ぶとやっと顔を上げてくれて…梨乃の顔がほんのり赤い気がした。

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