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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第173話/Sky Arrow

リハーサルが終わった後、感慨深い思いでライブハウスを見渡す。あと2回でここのライブハウスとはサヨナラだ。

今日、ファンの人に発表することになっているけど、きっと驚くだろうな。


CLOVERを結成して以来、欠かさずやっていたライブが無くなるし、いつも来てくれていたファンはルーティンになっていたはずだ。

あっ、田中さんとも会えなくなるのか…


いつも、精一杯応援してくれた田中さん。初めてのライブの時から来てくれて応援してくれて私は何度も田中さんに励まされた。


でも、ここに留まることは出来ない。私達は止まることは出来ないし、止まりたくない。


「はぁ…」


「梨乃どうしたの?」


「あと2回でライブが終わっちゃうから…」


「そうだね」


「まだ、大きなライブ会場ですると決まったわけじゃないのに何でライブを無くすんだろ…決まってからでいいのに」


「まぁ、そうだね。でも、成長するためだよ。目標が決まっているなら、ある程度の決別は大事だし、前に進まないと何も変わらないから」


「うん…」


いつものライブがなくなることで私達は目標の大きな会場でするのが絶対条件になる。

また、絶対にファンのみんなに会いたいから頑張る。あの憧れていたステージで。





「ありがとうー!」


今日も楽しいライブだった。いつものファン達がいて新規のファン達がいて、最後まで最高の盛り上がりでラストの曲をこれから歌う。《恋と嘘》は私達の代表曲。


インディーズの曲だけど私達にとって大事な曲でここで何十回も歌ってきた。

きっと、みんなは今からこの曲を歌うってわかってるよね。でも、今日はこの曲を歌う前に私はリーダーとして話さないといけない。


隣にいる梨乃が下を向いている。きっと、今も納得していなくて嫌なのだろう。

梨乃…ごめんね。でも、これはCLOVERが更なる飛躍をするためだから。


「今日は…みなさんにお話があります」


曲が始まらず、突然私が話し出したからファンののみんなはざわざわと騒ぎ出す。

何人かは嫌な予感がやるかの如く、眉を下げこれから話す私の言葉に怯えている。


「CLOVERは6月にメジャーデビューし、デビュー曲がありがたい事に3位という素晴らしい数字を頂きました。本当、皆さんのおかげです。ありがとうございます!」


「おめでとーう!」


「私達はこれまで目標のメジャーデビューをするために必死に走ってきました。目標が1つ叶い、私達は更なる目標を掲げ頑張ります。そのために、、皆さんにお伝えしないといえないことがあります」


メンバーもファンも私の次の言葉を真剣な表情で待っている。でも、みんな不安そうだ。

でもね、今から言うことは悪いことではない。これはステップアップするため。


「ここでのライブは…次で最後となります。CLOVERは大きな飛躍をするため今まで以上に頑張り、必ず大きなステージに帰ってきます。だから、待ってて下さい!」


「えー!」

「嘘…」

「そんな…」


殆どの人がショックを受けている。突然言われたら心構えもできてないし仕方ないよね。

私達もここでのライブは思いれがある。だからこその決断で、私達は更に上にいく。


「みんな…私達、頑張るから。めちゃくちゃ頑張るから待ってて。必ず、みんなの前に戻ってくるから」


私は話しながらいつのまにか泣いていた。ちゃんと言葉を伝えないといけなのに、涙が大量に溢れ涙が止まらない。


私の横いるメンバー達も泣いている。みんな下を向き泣いている。ファンのみんなと一緒で私達も寂しいんだよ。

ここで一からCLOVERを作り上げ、バイトをしながら必死に頑張ってきたから。


あー、ファンのみんなも泣いている。やっぱり、涙は伝染しちゃうね。

今日は泣いちゃったけど、最後のライブは泣かない。沢山、みんなに笑顔を届ける。


「みんな、ここでの最後のライブ…笑顔で楽しもうね!最高のライブにするから」


リーダーとして私の言葉は言い終わった。これでやっと思いっきり泣ける。


「みんな、頑張るからね。待っててね」


いつも元気な美香が…泣いているから言葉少なめで声が震えていた。頑張ってもう少し話そうとしたけど無理みたいでしゃがみ込んでしまった。リハーサルの時は大きな声で話せていたけど…まだ16歳だもんね。


「あの…絶対に今まで以上に頑張るので、、応援して下さい。いつか必ず…武道館でライブをしてます!だから、お願いします…」


由香里が泣きながら必死言葉を紡いでいく。武道館…必ず叶えよう。CLOVERの夢だもん。2つ目の大きな目標。


「正直…ここでのライブが無くなることが悔しいです。本当はもっと続けたかったです。最初は反対をしました。でも、区切るということは私達はもう後ろには下がれません。前に進むしかありません。みのりは私に前に進まないと何も変わらないと言いました。その言葉を聞いて、私は考え直しました。私はCLOVERが大好きです。だからこそ、もっと高い目標を持ち頑張りたいです。死ぬ気で頑張ります。だから、私達に着いてきて下さい!」


さっきまで泣いていた梨乃が力強く、強い想いを言葉にしてくれた。梨乃は誰よりも変わった。今日の梨乃は最強に輝いている。

ファンのみんなも梨乃の言葉に頷いているよ。ちゃんと言葉が届いてる。


「みんな、最後の曲に行くよー!用意はいい?」


「オー!」


私は笑顔でリーダーとして藍田みのりとしてみんなを煽り前に進む。

泣き顔で終わるより笑顔で終わりたい。ラストライブは最初から最後まで笑顔で過ごそうね。私は絶対に泣かないから。

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