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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第164話/弾けるソーダ水

吉田夏樹.side


ライブ終わり、私はみんなを車に乗せ運転する。車の中はいつも通り騒がしく、特に美香と由香里はいつも以上にうるさい(梨乃がみのりにキスをしたから)

でも、2人の明るさに助かっている部分が大きく、ちゃんと感謝もしている。


姉妹のように仲の良い4人。そんな仲の良い4人の中心はみのりだ。

みんながリーダーのみのりを大好きだからこそ喧嘩もせず仲が良いのだろう。


こんな風に言うとずる賢い的な意味に取られそうだけど、みのりは女の子の扱いが上手い。

決して悪い意味ではなく、みのりは紳士的な優しさがあり、相手を落としてしまう。


みのりの優しさはベタベタとした優しさではなくちゃんと距離をとった優しさ。

ピンポイントで痒い所を掻いてくれるし、みのりは相手が一番欲しい優しさをあげる。


だからこそ、美香と由香里が良い子に育った。2人を誰よりも支えてきたのはみのりだし、叱ったのもみのり。

みのりはリーダー、お母さん、お父さんの役割を全て1人でこなしている。


それに、この4人の仲の良さは当たり前じゃない。私が地下アイドルをやっていたから分かる当たり前じゃない運と巡り合わせ。

みのりを中心にみんな仲が良く、嫉妬はするけど引きずらずちゃんと前を向いている。私が所属していたグループとは大違いだ。


みんな腐らず、必死に頑張ってここまできた。みのりがいたから、リーダーとしてみんなをまとめてくれたからここまでこれた。

みのりはCLOVERの核だ。核が壊れたらグループ自体も壊れる。だからこそ、私はみのりを全力でサポートし守らないといけない。


でも、みのりが中心すぎて…困ったこともある。駅に着き、みのりに「着いたよー」と言うと、みんなが騒ぎ出した。





松本梨乃.side


よっちゃんが運転する車がなぜか、駅に着き…みのりがよっちゃんにお礼を言う。

いつもはみんなの家まで送ってくれるのに、駅に着いたせいで楽しい時間が終わった。


「みのり…電車で帰るの?」


「うん。用事があって」


「えー!みーちゃん、降りるの!」


「美香、由香里。気をつけて帰ってね」


美香が車から降りようとするみのりに対し寂しさから拗ねている。由香里も「なんでー」と言い、美香同様拗ねている。


それなのに、みのりは私達を置いてあっさり車から降りてしまった。きっと、みのりは…谷口さんの元へ行く。

今日のことがあったから多分当たっている。だから、諦めるしかないと分かっているけどみのりを取られてしまうのが嫌だった。


でも、ここで私も降りたり、みのりを止めたりしたらみのりに迷惑がかかる。

だから、必死に我慢をした。みのりが「バイバイ」と手を振る姿を見ながら必死に手を握り締め追いかけないように。


みのりの背中が遠くに行く。さっきまで隣にいたのに今は遠くに行ってしまった。

みのりと私の距離はいつも近づいたと思ってもみのりとの距離が空いてしまう。


原因はいつも谷口さん。みのりが誰よりも優先するのは谷口さんで私の敵わない相手だ。

私は今まで絆とか特別な関係とか気にしたことがなかった。絆といっても大したことないものだと思っていた。


でも、みのりと谷口さんの絆はとても強いもので誰にも入り込めないものだった。

みのりが誰よりも谷口さんのことを大事にしているのも分かるし、谷口さんにとってもみのりは大事な人で…嫌になる。


深すぎる仲が凄く嫌だ。邪魔だし、このままでは私は谷口さんに勝てない。

きっと、谷口さんに勝てないと私はみのりの恋人になれない。谷口さんとみのりの普通を異質なものだ。私は2人の異質より強烈な異質を作り出さないといけない。


みのりは裸で抱きつかれても…

キスマークを付けられても…

キスをされても…


何も感じない。みのりと谷口さんにとって普通のことだから。このおかしな普通に打ち勝つにはどうしたらいいのかな。


頬にキスをするだけじゃダメなんだ…

だって、みのりは驚いてはいたけど結局、何も変わらなかった。


恋人同士がするようなことを平気で2人はやっている。ここまできたら、×××しかないじゃんと思ったけど…流石にちゃんと恋人同士になってからやりたい。


でも、きっと裸でみのりを押し倒さないとみのりの普通は打ち破れないだろう。

頭がおかしくなりそうな【普通】が私を悩まし、疲れさせる。私の初恋が難関すぎる。

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