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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第14話/Only One Second

吉田夏樹.side


いつものライブが終わり、事務所で雑務を終わらせたあと温かいコーヒーを飲む。

こうやってコーヒーを飲む時間は頭と心を休ませる時間だ。アイドルのマネージャーの仕事はやりがいがあるけど大変なのだ。


でも、私は掛け持ちでいいからと社長にお願いしてCLOVERの担当になった。

頑張っているみんなを見ていると私も頑張ろうと思えるし、私が叶えられなかった夢を叶えてほしいと密かに託している。


実はCLOVERはもうすぐデビューすることが決まっている。まだ、本人達には秘密だけど事務所内では計画が着々と進んでいた。


出来れば早くみんなに伝えたい。きっと、この1年間かなり苦しかったと思う。

事務所からデビューの確約を貰えず、不安な日々を過ごしたはずだ。私も地下アイドルをやっていたから気持ちがとても分かる。



私は夢半ばでアイドルを諦めた。最初の1年間は夢のアイドルへ向かって、がむしゃらに追いかけた。何をしても楽しかったし、夢を追いかけることだけ見ていた。


でも、2年目になると自分の現状が見えてくる。先が見えない夢を勝手に諦め、男関係が激しくなったメンバーがいたり、アイドルとしての自覚を失ったメンバーがいたりと嫌気がさして私はグループを抜けた。


高校卒業と同時に地下アイドルを辞めた私は1年浪人してそこそこの大学に入り、夢もなく普通の大学生活を送る。

でも、彼氏が出来ても心の虚無感は取れず、つまらない4年間を過ごした。


心を誤魔化すことができなかったからだ…


そんな時、就活で芸能事務所のマネージャー募集を知り、私は面接を受けた。

もし受かったら私は内定している会社を蹴るつもりの覚悟で最後の悪足掻きをする。


悪足掻きした私は運よく芸能事務所のマネージャーとして内定を受け、母に伝えた。

その際、母にはめちゃくちゃ怒られた。今の会社より待遇のいい会社の内定を相談もせずに蹴ったからだ。


やっと娘が不安定なアイドルを諦め、大学に行き、まともな職に就くと思っていたのにまた諦めた芸能の会社に就職し、安定した会社の内定を捨てた。


親として怒るのは当然であり、私も分かっていた。でも、私はアイドルが好きだ。

アイドルは夢が詰まっている。夢を見る少女達を夢破れた私がバックアップしたかった。


こんな風に思うのは私がアイドルをやっていた時、嫌というほど現実を見てきたからだ。

アイドルは運も実力も大事だけど、メンバーや事務所のバックアップ・マネージャーなど自分ではどうにもならないことが沢山ある。


そして、事務所で1年間マネージャーの研修を終え、私は新人グループに出会う。


それが、CLOVERの藍田みのり、松本梨乃、友永由香里、上野美香の4人だ。

オーディションで選ばれたメンバーを見て、このグループは必ず上にいけると踏んだ。直感でピンときたんだ。



社長は元業界人で下積みを重視する。なので、社長の方針でCLOVERを1年間地下アイドルさせ下積みをさせた。


でも、1年も説明なく地下アイドルをやっていたら目標を見失うかもしれない。

だから、必死にCLOVERのマネージャーをやらせて欲しいとお願いし、CLOVERのマネージャーの仕事を勝ち取る。


私はCLOVERをアイドルにしてみせる。この言葉を友達に言うと、もうアイドルじゃないの?と言われるけど、アイドルは特殊でグループを組んだから、デビューしただけじゃアイドルとは言えない。


これは私が地下アイドルをやっていたからこそ心から思う言葉。



【売れてこそアイドル】



この考えは酷い差別かもしれない。だけど、みんな売れたい!と思っている。

もし、メジャーデビューしても売れなきゃ地下に戻るか、一般人に戻るかだ。


アイドルは売れることで、正真正銘のアイドルになる。勿論、最初からアイドルになれる子もいる。

だけど、そんなの稀だ。一握りであり、大抵のアイドルはアイドルになることを夢見る。


大手事務所や大手グループからデビューしても格差によって一度も個人として日の目を浴びずひっそりと卒業していく子もいるからアイドルは本気で難しい。


だからこそ、私はグループの格差を作らないことに重きを置いている。

勿論、格差はどうしても生まれるから酷くならないように、メンバー同士が仲悪くならないように気にかけている。



その点、CLOVERはみのりがいるから助かる。リーダーとしてみんなを上手くまとめ、話を聞いてあげる姿はみんなのお姉さんだ。

きっと、みのりがいなかったらCLOVERはどうなっていたか分からない。思春期の女の子の扱いはとても難しく大変だ。


みのりはメンバーの扱いが上手かった。みのりが美香の思春期を上手に受け止めなかったら、由香里の良き相談相手にならなかったら、梨乃の心の支えにならなかったらと本気で感謝をしている。


CLOVERの軸はみのりだ。支柱のみのりがいるからこそ成り立っている。

そんな、デビューに向けて全力で走り出そうとしているCLOVERに不安要素が発生した。


梨乃のみのりへの態度…


きっと気のせいだと思うけど、不安が消えない。私は心配性な所があるから過敏になっているだけかもしれない。




私はマネージャーとして、必ずCLOVERをアイドルにする。何があってもだ。

CLOVERは私の夢…今度こそ、夢を叶える。

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