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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第142話/優良の化学変化

吉田夏樹.side


新しい仕事は気合いが入る。CLOVERでの歌番組の練習が終わった後、みのりと車で撮影スタジオに移動する。

今日は大事なポスター撮影の日。今日のみのりは鮎川早月ではなく上坂未来になる。


羽川涼太を演じる高橋君は良い子で本気で私の事務所に欲しい人材だ。私達に頭を下げ「おはようございます」と礼儀正しく挨拶をする19歳の男の子は真面目で、気どらず、人気があるのに天狗にもなっていない。


真摯に仕事をする高橋君は仕事相手として100点満点の男の子だ。


だけど、恋愛相手としては最低の相手であり、−100点でしかない。勝手に採点されるなんて高橋君も嫌だと思うけど許してほしい。

高橋君自体は申し分ないけど、人気アイドルであり、女性ファンが多い相手と噂になるとこちら側の被害が大きいのだ。


既にみのりに対するアンチ的な高橋君のファンもいる。やはり、短い期間での再共演がネックになっているみたいだ。


アイドルの恋の噂は例え、本当に噂であっても炎上してしまう。それが、アイドルである代償であり、盲目という馬鹿さ。

でも、この盲目がお金を産む。呆れるほど馬鹿だと思うけど有難いファンでもあるのだ。



私は昨日、映画の原作漫画の「さんかくパシオン」を読み直した。今やっている「彼女はちょっと変わっている」とは違う青春恋愛漫画で人気があるのも納得する面白さだった。

みのりが演じる上坂未来も可愛くて、高橋君演じる羽川涼太も男気があり良いキャラだ。


でも、私の中でみのりはCLOVERのリーダーをやっているせいか他のメンバーより女子感が弱く、特に鮎川早月のイメージがあるせいで恋愛のイメージがなかった。


だからこそ、みのりに恋愛映画のオファーが来るなんて最初はビックリした。でも、私がずっと近い距離でリーダーとして頑張るみのりを見てきたからで、他の人からしたらみのりは19歳の可愛い女の子だ。


いつのまにか自分の世界に入り込んでいた私はみのりに声を掛けられハッとする。

ドラマとは違う制服を身にまとい、ヘアメイクさんに化粧と髪型をセットしてもらったみのりは鮎川早月とは別人で、髪を下ろしウエット感のある髪型はみのりに似合っていた。


女の子は髪型と化粧で化ける。化学変化と言ってもいいかもしれない。





近距離で見つめ合う2人。顔が良い2人はそれだけで様になり、お似合いだ。

私はアイドルを色眼鏡で見てほしくないとずっと思ってきた。でも、私自身がみのりのことを色眼鏡で見ていたのに気づく。


みのりがリーダーとしてみんなを引っ張る姿をずっと見てきて、梨乃に矢印を向けられているみのりを知っているからどこか男っぽさを感じていた。

でも、目の前にいるみのりは当たり前だけど女の子で高橋君の恋人そのものだ。


何カットか撮り終えた後、ヘアメイクの方が入り細かいヘア直しをされている間、2人は楽しそうに話し笑い合う。

2人がアイドルでなければ、お似合いの高校生カップルと言われるだろう。

それぐらい自然体で、全く違和感がない。


これから映画に向けて、雑誌などの撮影も始まり2人の仲は更に縮まるはず。

プライベートで2人が会わない限り、噂は立たないと思うけど、きっとこの2人の姿をファンが見たらヤキモチを焼く。


撮影が終わり、カメラマンと一緒に2人が画面を見つめどう撮られたか確認をする。

私も写真を見せてもらい、ポスターだけで良い映画になると確信をする。

ポップな感じのポスターではなく切なさが醸し出されるポスターで良い裏切り感だ。


少女漫画が原作の映画のポスターはポップ感があるものが多く、若い子向け的な感じで作られるけど「さんかくパシオン」は王道のポスターの作りから外れている。

後はタイトル文字次第にはなるけど、きっと良い感じに仕上がるはずだ。



これから映画の顔合わせなど色々と始まる。撮影はドラマの撮影が終わってからだけど、今日みたいに2人で撮る雑誌の撮影のスケジュールが既に埋まっている。


カメラマンやスタッフの人達に挨拶をしながら撮影スタジオを後にする。控え室までの道のり、私は隣を歩くみのりを観察する。

バスケ部の鮎川早月と雰囲気が対照的な上坂未来はとても女の子らしく可愛い。


これが化けるということかと納得し、面白さが込み上げる。鮎川早月も上坂未来も演じているのは藍田みのりなのに別人に感じる。

高橋賢人君も今回の役は森田翔平役より男の子っぽい役柄で凛々しい顔つきだった。


高橋賢人×藍田みのりの化学変化


この映画を必ずヒットさせたい。きっと2人はこの映画と共に上に行ける。

マネージャーの仕事が楽しくて仕方ない私は自分でも気付かないぐらいマネージャーとしての仕事の枠を越えて過剰になっていく。

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