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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第128話/堕天への誘い

レッスン着に着替え、休憩時間にステージの上で私は梨乃の膝に頭を乗せ携帯を触る。

さっき、コンビニで買ったプリンを食べ、今は体を休め中だ。


あゆはるについて調べながら、電車の中で会った高校生達のことを思い返す。あゆはるが原作で人気コンビだと分かっていたけど、ドラマでも同じように人気なんて凄いことだ。


最近の紙面の取材や撮影は梨乃とあゆはる特集的なものばかりで、SNSでエゴサーチするとドラマの中で小春と早月の距離が縮まっていくことに喜びのコメントが多く、第2話では早月が小春を守るシーンの反響が凄かった。


SNSに私が梨乃とのツーショットを載せると反響があり、美香や由香里だと梨乃との写真も見たいとコメントが来る。


常に求められるのは梨乃との話や写真。ドラマが始まる前はみのりの人気を利用するため私も意図的に梨乃との写真を載せていた。

これが需要と供給。でも、ずっと同じ物を求められるのはしんどい。


「みのり…目の下に隈ができてるよ。ちゃんと寝てる?」


「4時間は寝てるよ」


「少ないよ…勉強も毎日してるの?」


「うん。ブランクあるから毎日コツコツやらないと間に合わないし」


私の目の隈が気になるのか梨乃が私の目元を触り心配する。梨乃に心配をかけて申し訳ない気持ちはあるけど睡眠時間を削らないと目指すものが得られない。


「みのり、梨乃。そろそろリハーサルするから準備して」


よっちゃんに声を掛けられ、私は梨乃から離れ立ち上がる。梨乃のお陰で、かなり体と心が休まり元気を取り戻せた。


最近、CLOVER公式のSNSには私と梨乃のオフショット的な写真がよく載っている。

写真を撮ったのも載せたのも全てよっちゃんで、そのせいで『あゆはる』ならぬ『みのりの』人気に拍車がかかっていた。


今も私が梨乃に甘えている姿をよっちゃんに写真を撮られ、きっとSNSに載せられる。

よっちゃんは仕事をしていると分かっているけど気が抜けなくなる。せめて、メンバーといる時間だけでもオフの自分にしたいのに需要を求められる。


それでも疲れている私は梨乃を後ろから抱きしめたまま甘える。梨乃に甘える時間は私にとって癒しの時間で大事だからだ。


ただ、私と梨乃が常に一緒にいるせいで美香と由香里が拗ねることが増えてきた。

今も梨乃に引っ付いている私に美香が「りっちゃんばっかりー」と拗ねモードだ。

美香の隣にいる由香里も拗ねており、苦笑いしながら由香里に抱きつく。


私が由香里に抱きついたことで美香が大騒ぎし私は笑う。美香を揶揄うと面白い。

年下組の2人は素直で可愛くて、2人も私の癒しだ。みんなといると疲れが取れるし、こうやって揶揄うのが楽しかった。


「ゆーちゃんだけずるいー!」


「みーちゃん、大好きー」


前より会える時間が減った2人は私達に会えない時間が長いと寂しいと言ってくる。

ドラマが決まる前はずっと一緒にいたのに、今は離れている時間の方が長く…私も寂しい。CLOVERは4人で完成だから。


「美香〜」


「へへ、やった」


盛大に拗ねている美香に抱きつき、美香の頭をポンポンと撫でる。嬉しそうに私を抱きしめ返す美香が可愛くて私の笑顔が溢れる。

今日は存分に美香と由香里にも甘えよう。私達はずっと支え合ってきた。


今日はみんなに癒してもらい幸せだ。ただ贅沢を言うなら美沙に会いたい。

どうしても、仕事が忙しいと優先しないといけないものが出てくる。

今は仕事を頑張らないといけない時期で…


「ほら、みんな準備して」


「はーい」


よっちゃんに言われ、私は美香から離れる。明日はまたドラマの撮影で、バスケのシーンを撮るから頑張らないといけない。バスケをする姿が好評で私の特技になりつつある。


私自身も感じる駆け上がっている階段。好きなことをやれ、ずっと憧れていたアイドルになれた。

仕事が楽しくて、やりがいがあるのに…心が少しだけぽっかりと穴が開く。


愛も仕事が楽しいけど、ふとした瞬間に無の感情になり虚しさがあると言っていた。忙しくなればなるほど、プライベートがなくなる。

それでも、仕事に代わるものはない。この業界は休んだらすぐに席が埋まる。


色々なものを天秤にかけみんな仕事をしている。売れるため、下剋上するためにみんな必死に仕事をしている。

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