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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第125話/Shing Star

チクタク…


只今の時刻、22時55分。もうすぐ、新ドラマ「彼女はちょっと変わっている」の一話がテレビで放送される。

4月に入り、今日までがむしゃらに撮影とライブなどを頑張ってきた。まだ、撮影は続くけど今日をずっと待ち望んでいた。


私の横には梨乃と愛がおり、私と梨乃は愛が一人暮らしをしている部屋に泊まりに来た。

めちゃくちゃ緊張する。原作ファンや視聴者の感想が怖いし、私が鮎川早月として認められるかずっと不安だった。今日まで必死に頑張ってきた成果の評価が下される。


隣の梨乃は飲み物を飲みながら、愛と話している。緊張はあまり見られず梨乃の心臓の強さが羨ましいし憧れる。


私も梨乃みたいに強くなりたいけど、自分の演技に自信がないから無理だ。きっと、愛みたいに沢山ドラマや映画に出たら少しずつ自信が持てるようになるかもしれない。



お母さん達は今頃、テレビの前でドラマが始まるのを待っているかな?ドラマの取材をされた雑誌が販売され、その度にお父さんとお母さんが雑誌を買ってきてはファイリングし自慢げな顔をしていたり、この前なんて番宣で梨乃と出た番組の録画を何度も見ていた。


高校時代の友達からは雑誌やテレビ出演があるたびに連絡が来て嬉しいけど、さり気なく高橋君のことを聞いてくるのはやめてほしい。

私は一緒のシーンが多くなく、話す機会がないし撮影に集中していて心の余裕がない。


あっ、あと…1分でドラマが始まる。みんなパジャマ姿でソファーに座り、真剣な表情に変わりテレビに釘付けだ。


「はぁ…緊張する」


あと数十秒でテレビに自分が映る。緊張で胃がギュッとなってきた。梨乃もやっと緊張してきたのか私の腕をギュッと握り「緊張するね…」と言う。

愛だけが緊張しておらず、私達を横目で見ながら「緊張しすぎー」と笑っている。


「あー、胃が痛いー」


「胃薬いる?」


私の緊張の誇張表現の言葉に対し本当に胃薬を持ってこようとする天然の愛を慌てて止める。愛の天然な所は面白いけど、愛のこれまでの経歴の強さと経験が明白に見え羨ましい。


もうすぐCMが終わる。このCMが終わったらドラマが始まり…画面が切り替わった。制服を着た高橋君がアイドルの音楽を聴きながら歩いている。

実は監督が高橋君がイヤホンで聞いている音楽をCLOVERのデビュー曲にしてくれた。


お陰でまだ発売されてないCLOVERの曲がどこよりも早くテレビから流れている。

嬉しい…CLOVERの曲がテレビから聞こえてくる。CLOVERが結成されてまだ1年だけど私にはめちゃくちゃ長く感じた。


デビューできるか分からない未来。もし、デビューできても売れるか分からない未来が怖かった。4番手ってのも苦しかったし。


アイドルの戦国時代はずっと続いている。出きては消えていくアイドルが今も多数おり、CLOVERは他の地下アイドルやファンからきっと恵まれている・運が良いと思われているはずだ。


私も運が良かったと思っているけど、努力をずっとしてきた。それに年数は短いけどアイドルが味わう苦しみは変わらない。


場面が変わり制服を着た梨乃が教室の隅の席で空を見ている。耳にはイヤホンがあり、今もBGMでCLOVERの曲がずっと流れている。

ドラマでタイアップとしてデビュー曲を宣伝してもらえて、最後のエンドロールにはCLOVER「Kiss Me」と言う文字が流れる。


今までの努力がやっと報われる。テレビからKiss Meを聞くと涙が出そうだ。





私達は真剣に画面を見つめた。私の初めてのシーンが流れ、自分の演技を見るのは恥ずかしかったけど台詞は棒読みではなかったと思う。監督から良かったよと言われたし。

それにしても愛は凄い。天真爛漫の久保田凛そのものでキラキラと輝いている。


梨乃もヒロインの佐藤小春そのもので、梨乃の演技があまりに上手くて驚いた。

見れてなかったシーンの演技を見て、梨乃がヒロイン役を掴んだ意味が分かる。


あっという間に時間が進む。エンディング近くになり、高橋君が所属するグループの新曲が流れ始め、森田翔平・佐藤小春・久保田凛とそれぞれの放課後を過ごすシーンが流れ始めた。


最後に私が演じる鮎川早月がバスケをするシーンが流れ、胸が熱くなった。この日のために頑張ってきたバスケ。

綺麗にシュートがゴールに入り、私が部員の子役の女の子とハイタッチする姿が映る。


笑顔が苦手だけどちゃんと笑えてて良かった。エンドロールに藍田みのりと私の名前があり、感極まって鼻がツンときた。

梨乃も感動しているのか私の腕に腕を絡ませ、私に寄りかかる。



夢だった世界は華やかで、一度この華やかな世界を知ってしまったら抜け出せない。

だから、この世界で必ず花を咲かせたいと思ってしまう。何が何でもだ…


それほど中毒性のある世界で、テレビに映る自分を知ってしまうともう元には戻れない。

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