第113話/空想のお伽噺
吉田夏樹.side
今日からドラマの撮影が始まる。2人が制服を着ている姿を見て、母親のような気持ちになり感動して胸が熱くなる。
必死に毎日頑張って、やっと努力が実り、成長していく2人が誇らしく、CLOVERのマネージャーになって良かったと思えた。
まずは主役の高橋君のシーンから撮影が始まり、次のカットは高橋君と梨乃が知り合うきっかけのシーンを撮ることになっている。
梨乃がドラマのヒロインを演じる。田中さん(奏多先生)…ありがとう!といくら感謝しても足りないぐらい感謝しかない。
私は撮影が見える位置に立ち、マネージャーとして2人を見守る。高橋君のファーストシーンが終わり、次は梨乃の出番になった。
台本を見ながら監督と演技の話し合いをする梨乃はちゃんと女優で、リハーサルが始まった瞬間涙が出そうになった。
演技をする梨乃が誇らしくて、嬉しくて、アイドルの夢は破れたけどアイドルのマネージャーになれて良かった。
就職する時、お母さんと喧嘩をしたけど私が選んだ道は私自身が誇れる仕事になった。お母さん、自分が選んだ道は正解だったよ。
ヒロインの佐藤小春は大人しい子で、教室の隅っこにいる暗めの女の子だ。だけど、アイドルが大好きで、アイドルのことになると豹変しお喋りになり明るくなる。
小春と同じクラスの主人公の森田翔平は偶然、小春が同じアイドル好きと知る。自分と同じアイドル好きと分かり、同志を見つけたと密かに喜ぶ。
翔平は意を決して初めて小春に声を掛け、アイドルのことになると饒舌になる小春に興味を抱く。そして、翔平の幼馴染の鮎川早月と早月と翔平の友達の久保田凛は翔平を通して少しづつ小春と仲良くなる。
凛は明るい性格で、小春がアイドルの話になると明るくなるのを面白がり、早月と共に小春と仲良くなろうとする。
早月も豹変する小春に興味を抱くが、凛みたいにぐいぐいといくタイプではなく仲良くなれたらいいなと思っているタイプだ。
でも、クラスメイトから放課後の掃除を無理やり押し付けられそうになり困った顔をしている小春に遭遇する。
この時に小春を早月が守ったことで2人の仲は接近し、アイドル以外興味がなかった小春が初めて早月に興味を抱く。
放課後、凛に強引に連れられ見に行ったバスケをする早月の格好良さに心をときめかせる。主人公の翔平ではなく…
田中さんらしいよね。翔平と小春のラブストーリーになりそうな所を大好きなみのりを投影した早月をぶち込んできた。
鮎川早月は女の子が惹かれてしまうタイプの女の子で、同性人気は芸能界ではとても強みになるし人気に繋がりやすい。
私の持論では無理やりボーイッシュにして同性人気を獲得するのではなく内面的なものが大事で、性格が王子様(彼氏)気質であり、外見は女性らしさがあるのに惹かれるビジュアルを兼ね揃えないといけない。
それが…藍田みのり
みのりは女性らしい可愛さ+女性が好きになる内面とビジュアルを持っているイケメンと可愛いのハイブリットだ。
みのりは自然と彼氏側になり、相手の子が彼女側になってしまう現象を作り出す。
みのりの(あゆはる)コンビはきっとドラマが始まったら人気が加速する。2人を売り出すのに丁度いいけど、注意しないといけないことがある。
コアなファンがつくと弊害も起こる。ライトなファンだと問題ないけど、これは私が地下アイドルをしていた時もあったことだ。
アイドル好きに起こる現象で、他の組み合わせを受け入れない。
コアなファンは熱狂的に応援してくれるけど執着も凄い。
これが相方以外受け付けない【アレルギー】
このパターンは女性ファンが多くなるみのりが要注意だ。誰とでも仲良くなれるタイプで、普通に異性や同性にモテる。
コアなファンほどお金を落としてくれるけど要求も大きく面倒なのだ。
こんなことを言ったら怒られそうだけど、疲れる生き方でもっとフランクに生きればいいのにと思ってしまう。
でも、なぜ…コンビが人気があるのか気持ちは分かる。アイドルは恋愛に厳しい。
だから、外の世界を断絶したい。
私以外、私が認める男の子・女の子以外は受けつけない!
梨乃とみのりがどんな風に売れていくか、人気が出るのかまだ未知数である。でも、梨乃は男性ファンが多く、みのりは女性ファンが多くなるだろう。だからこそ、みのりのにファンが付きやすくなる。
私は正直、カップル売りに興味がない。だからこそ、みのりと梨乃を普通のコンビとして売り出していきたい。
梨乃がみのりに本気で惚れているからこそ、カップル売りは面倒であり、カップル売りなんて期間限定の売り方にすぎない。
元地下アイドルとして、マネージャーとして1つ断言できることがある。アイドルは卒業したらみんな恋愛して結婚する。
アイドルのカップル売りは…
夢物語の空想のお伽噺だ。




