表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
107/221

第106話/強く咲き乱れるFlower

初めての満員御礼。初めてチケットがSOLD OUTし、私達の前には沢山の見たことのない人達が興味津々とした顔で私達を見ている。

私達はアイドルとして最高のパフォーマンスをする。それがアイドルの仕事であり、この場所を最高に楽しんでほしいからだ。


最初から全力全開で2曲続けて歌い踊り、息が切れながらMCタイムに入る。

めちゃくちゃ緊張する。大量の視線が今から喋る私に向けられており、空気感もいつものとは全く違うものだった。


足が震えるけど、リーダーとしてマイクを力強く握り一呼吸した後、前を向く。


「みなさーん!今日はお越し頂きありがとうございます!今日は沢山の方がライブに来て下さって驚きました。まずは初めて来た方が多いと思うので自己紹介をさせて下さい」


美香、由香里、梨乃、私と順番に自己紹介をし、それぞれアピールしていく。私は少しだけ鮎川早月を意識して自己アピールした。

そんな中、梨乃だけは名前だけを言う自己紹介だったけど、ある意味梨乃らしい。


「えー、次の曲にそろそろ行きたいと思うのですが、その前に少しだけお時間を下さい。私と松本梨乃からご報告があります」


私は梨乃の手を引き、真ん中に移動する。ファンのみんなは今か今かとドラマ出演を一緒に祝えることを待っている。

一度、梨乃と目を合わせたあと前を向いて…


「この度、松本梨乃と藍田みのり!ドラマ出演が決まりました!」


一斉に大きな拍手が鳴り響き、沢山のおめでとうー!と私達の名前が叫ばれる。最高の瞬間だ。やっと私達の努力とアイドル人生が報われた気がした。

私は何度もお辞儀をし泣くのを我慢した。まだ泣くのは早いし、ライブはまだまだ続く。


必死に笑顔を作り、私は梨乃の方を向く。まずはヒロイン役の梨乃からのコメントをする予定だけど梨乃の表情が暗い。

緊張しているのか、笑顔がなく…一瞬戸惑ったけど私は梨乃に話を振る。せっかくの流れを止めてはいけない。


「それでは、まず梨乃から」


「えっと…この度4月から始まる、彼女はちょっと変わっているの佐藤小春を演じます。演技は初めてで…緊張していますが頑張ります。よろしくお願いします」


やっぱり、梨乃は緊張しているみたいだ。表情も暗いままで、声のトーンが低い。

暗い表情のまま梨乃は私に視線でバトンタッチをしてくる。まだ、もう少し話してもいいのに下を向いてしまった。


「えー、私はヒロインの小春と同級生でバスケ部の鮎川早月を演じます。私も梨乃同様演技は初めてで、早月はバスケ部なので頑張らないといけないことが多く大変ですが、ドラマを見ている方が早月良かったよと言われるよう頑張りますのでよろしくお願いします!」


やっと言えたドラマ出演への意気込み。一番前の列にいる私のファンの田中さんが泣いてる。号泣に近いかもしれない。

メジャーデビューもだけど、やっとファンに恩返しができた…何度も挫けそうになった時、ファンの熱い声援が支えだった。


やっと、ありがとうと言える。心からのありがとうを。そして、必ずてっぺん取ってみせるからと誓う。

私はもっと大きなステージで歌いたいし、みんなを大きな会場に連れて行きたい。





松本梨乃.side


今日は待ちに待った大好きなライブ。だけど、心が弾まない。お客さんの多さに驚き、変わっていく環境に戸惑いが強かった。

新規のお客さんは当然コールを知らない人ばかりで棒立ちの人が多かったし、馴染みのファン達がやりずらそうだった。


それに、大好きなステージの上でドラマの話をしないといけないし、頑張りたくないのに頑張りますと言わないといけないのが苦痛で、対照的にみのりは感無量な表情をし…ファンも喜んでいるし泣いている人もいて私だけ仲間はずれだ。


アイドルの仕事はオールマイティーだと分かっているけど頑固者の私は譲れないものがある。アイドルはステージに立ってこそ。

でも、アイドルって何だろう…。私はステージの上でキラキラと輝くアイドルが好きなのに色んな仕事をしないといけない。


私のこの鬱々とした感情を飛ばす唯一の方法はステージで歌い踊ること。次の曲は私の大好きな曲だ。音楽が鳴り、私はアイドルの松本梨乃としてこの場を楽しむ。

踊るのが、歌うのがめちゃくちゃ楽しい!みんなが私達を見て興奮し楽しんでいる。


ステージの上で歌って踊っている時の私はいつもの私ではなくなる。みのりはそのギャップが良いと言ってくれるけど…どうなんだろう?自分ではギャップが分からない。

でも、初めて私の激しいダンスを見るお客さん達がえっ?と顔をする。


そんなに私は踊るイメージがないのだろうか?私は歌は好きだけど上手くはないから、ダンスを頑張った。

好きってのもあるけど、自分でも一番の武器はダンスだと思っている。私の戦場はステージの上で、ここが私の居場所だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ