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アイドルは偽装する。  作者: キノシタ
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第99話/優しい怪物

谷口美沙.side


大学の講義中、前に座っている子達がコソコソとノートパソコンを見ながら話している。

私は講義を真面目に聞くタイプではないから気にしないけど、パソコンの画面に映った画像のせいで講義なんてどうでもよくなった。


女の子達が見ているのはCLOVERのHPで、画面にはみのりがいた。私の知っているみのりではなく、アイドルの藍田みのり。

隣には松本梨乃ちゃんがいて、大学の講義を受けている自分が急に虚しくなる。


「藍田みのりちゃん。髪、長いね」


「ドラマのために髪を切ったのかな?」


「短い方が似合うね」


みのりが私やファン以外の人に注目され、褒められている。まだ、中身は知らないだろうから容姿で注目を浴びている。

そうだよね…みのりは可愛いもん。何で今まで売れなかったのか分からないぐらい。


「私ね、あゆはる好きなんだー」


「私もー!」


2人は主役の高橋賢人のファンかと思っていたら原作のファンみたいで、今度はCLOVERのSNSの写真を見ながらあゆはるを熱く語る。

CLOVERのSNSは私もいつも見ているけど、大抵みのりの横には松本梨乃ちゃんがいてカップルのように仲が良い。


ほら、あゆはるファンの2人も食いついている。距離が近いみのりと梨乃ちゃんに。

みのりは距離感バカだから、どうしようもないけど改めて見ると確かに近すぎる距離だ。


きっとこれから、みのりの名前は知られていく。私だけのみのりにならない。

みのりとお揃いのネックレスに触れ、寂しい気持ちを必死に誤魔化す。みのりに売れて欲しいと心の底から思っていたのに…


自分勝手で醜い自分が出てきそうだ。きっと、交友も広がるから私は置いていかれる。

みのりは昔から人気者だから仕方ないよね。でも、嫌だよ…孤独に耐えられない。



心を落ち着かせるため、みのりのSNSを見るとフォロワー数が何倍にもなっていた。

藍田みのりで検索をすると何件もヒットし、みのりの写真が沢山拡散されている。


プライベートの侵害なのに、みのりの出身校まで調べられ…有名な進学校出身と分かった人達が凄い!と呟き驚いている。


〈早月役の子、頭良すぎ!〉

〈有名な女子校出身なの⁉︎〉

〈可愛い上に頭も良いなんて凄すぎ!〉


そんなの私が一番知っている。みのりは頭も運動神経も良く、優しくて完璧な人だ。唯一の欠点は鈍感な部分。

そんなみのりが大好きだけど、アイドルのみのりは遠い存在すぎて胸が苦しい。


クラスのアイドルから本物のアイドルになったみのり。でも、まだ大丈夫。だって、みのりからLINEが来て私の心が温かくなった。


〈今日、17時に仕事終わる〉


と律儀に時間を教えてくれて私の知っている優しいみのりがいて安心できた。

どれだけ、みのりがアイドルとして有名になっても私の知っているみのりは変わらない。


今日は5限まで講義があるから怠いけど、みのりに会えるから力が漲ってくる。

髪を切ったみのりに会うのは初めてで、私の心は既に浮かれている。


アイドルの藍田みのりに自由に触れられ、話す事ができるのは私の特権。


みのりと一緒にお風呂に入ったり、お泊まりしたり、近くで寝顔を見たりできる私は誰よりもみのりとの距離が近いのだ。

画面越しで応援することなく、みのり本人に会え応援する事ができる。


今日の夕食はお母さん特製のハンバーグだよとLINEで伝えると〈やった!〉と子供みたいに喜ぶみのりを見れるのも私だけ。

私は前に座っている子達とは違う。どれだけみのりのことを語っても想像でしかない。


本当のみのりを知っているのは私。みのりの唇の柔らかさも知っているし、みのりの匂いや肌の質感や温かさも知っている。

体にあるホクロの位置も全て知っている。


距離感バカで…

人見知りしなくて…

人気者で…

頭が良くて…

運動神経が良くて…

顔が良くて…

性格が良くて…

優しくて…

笑った顔が可愛くて…

スタイルが良くて…

同性に告白された事がある…


人を狂わす天才


みのりに関わる人は狂ってしまう。何が普通か分からなくなり、ラインが消えてしまう。

普通って何?ってなり、ネジが外れてしまう。みのりは破壊者なのだ。

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