第二話
「どうしたの?突然」
とレジーナが聞く。
それに対し、
「ん、まぁちょっとな」
とグロースは曖昧な返事しかしなかった。
少し考えた後、思いついたかのように答えた。
「ほら、ニアは記憶がないんだろう?その、なんだ、それがどの程度だとか、どこまで覚えていてどこが思い出せないかとか確認したほうがいいじゃないか。もしかしたらニアのことを知っている奴がいるかもしれないしな」
「確かに父さんの言う通りかも。それに私も久しぶりにミラーナと街に行きたいって思ってたし、どう?」
と、レジーナがミラーナに提案する。
「えっと、私はいいんだけど、ニアはどうなの?」
ミラーナが聞いてくる。
きっと起きたばかりの僕が外に出ることが心配なのかもしれない。
ただ、自分自身でも外に出たいと思っていたので
「はい、俺は全然いいですよ」
と答えた。
「よし、じゃあ決まりだな。俺はこれから見回りに行かないといけないからお先に失礼するぞ。レジーナ、後は頼んだ」
「うん、わかった。行ってらっしゃい、お父さん」
グロースは立ち上がり部屋から出ていった。
その背中をレジーナはじっと見つめていた。
「あ、そうだ。ニアが着てたグリークなんだけどさ、あれ持ってこようか」
とミラーナが突然言った。
「グリーク?」
聞いたことのない言葉に思わず聞き返してしまう。
「うん、グリーク。...て、あれ、もしかして忘れちゃってる?」
「かもしれません」
「うーん、そっかぁ。それって忘れちゃうものなのかぁ。なんて説明しよう...ほら、水の中泳ぐじでしょ。その時に着るものというか...見たほうが早いかな」
そう言うとミラーナは壁に掛けられていた一着のズボン?のようなものを持ってきた。
「ほら、これが君が着てたグリーク。それに、いま私たちが着てるのも同じものなんだけど、君のは少し特殊というか、見たこと無いタイプなんだよね」
「でも、使い方は同じだと思うから大丈夫。先に出口まで行ってるから着替えておいてね」
正直、最後まで何を言っているかよく分からなかったが、二人はそのまま部屋から出て行ってしまった。
「普通に着るだけでいいのかな」
そんな独り言をつぶやきながらグリークを着る。
今更だが上半身には何も着ていない。このままで大丈夫なのだろうか。
そんな不安を抱えながらも二人が待っているほうへ歩いた。
部屋を出ると、そこは細い通路になっていて、奥側に二人がいた。
「よかった、しっかり着れたんだね。さすがにそこまでは忘れてなかったか」
ミラーナがそんなことを言う。
その足元には縦に細い円があり、水が張っていた。
「じゃ、先に行くね。すぐに飛び込んで頭を蹴らないでよ」
ミラーナはその水の中に片足を入れそのまま飛び込むように時入っていった。
それに続いてレジーナも入っていった。
何が何だか分からなかったが、とりあえず自分もその水の中に入ることにした。
片足を水につけると、少し違和感を覚えた。水を冷たく感じなかった。
あまり気にせず、そのまま水の中に入っていった。
ザプンと音を立てて飛び込む。
入った瞬間、自分の目を疑った。
上を見ると、太陽の光が差し込んでいるのが分かる。非常に透明度が高く、きれいな水だった。下を見れば、更に深いところから自分たちと同じようにして岩の中から出入りをする人たちがいた。
そこでやっと気づいた。ここは海の中なんだ、と。海の中に一つの国がある。初めて見た光景に自分は興奮を抑えきれなかった。
「すごい」
と思わず口から出てしまう。それほど綺麗な景色だった。
更新を安定させられるよう頑張ります。