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Rusted Record  作者: ニア
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第一話

目を覚ますと、ベットの上で横になっていた。

なぜ横になっているのかは、海に落ちた後の記憶から何となく察した。

自分は海に落ちて、そのまま気絶してしまったのだろう。

そこを通りかかった人に助けてもらったんだと思う。

もしかしたら近くにいるのかもしれない。

そう思い、体を起こして部屋をみわたしてみると、自分の右手側にこちらに背を

向けて立っている少女がいた。声をかけようと思ったが、突然謎の頭痛に襲われて声も出せずにベットに倒れてしまう。

酷く痛かった。頭の中でいろんなものが暴れているような痛みだった。

声にならないようなうめき声をあげていると、右側から先ほどの少女が近づいてくる音がした。

少女が小さい声で何かを呟く。すると不思議と頭の痛みが引いていった。

「あの、大丈夫ですか?」

と少女が尋ねてきた。

「はい。ありがとうございます。助かりました」

そう答えると少女は少し笑い、

「驚かないんですね」

と言ってきた。

何に?と問おうとしたが、何か事情があるのかもしれないのでやめておいた。

少女は「父を呼んできます」と言い、部屋から出ていった。誰もいない部屋の中を見渡していると、ふと、部屋の出入り口に目が止まった。

よく見ると、部屋の出入り口にはドアがなかった。

人が通れるくらいの穴が開いているだけで、まるで洞窟の中に家を作ったかのような雰囲気だった。

試しに壁を触ってみると、ひんやりと冷たかった。やはり岩でできている。そういえば、この部屋には窓がないのにもかかわらず部屋全体が明るい。

不思議に思っていると、部屋の中に一人の男が歩いてきた。

「よお、起きたか。気分はどうだ?」

ベットのすぐ傍にある椅子に座りながら話しかけてきた。

その声は、気絶する寸前に聞こえた声と同じものだった。

たぶん、この人に助けてもらったのだろう。

「お前さん、一昨日の夜からずーっと眠ったままでな、このまま起きねえんじゃねえかって、心配してたんだ。どっか変なところは無いか?」


「大丈夫です。あの、ありがとうございます。助けていただいて」


「なに、気にすんなって。人助けが俺の仕事みたいなもんだしな。それより、お前さん、名前は?

あぁ、俺はグロース。で、さっきのは俺の娘のレジーナだ」


グロースとレジーナ、自分を助けてくれた人たちの名前だ。忘れないようにしなければ。

「............。」

ただ、なぜか自分の名前が思いつかなかった。

自分のことに関して、何一つ思い出せなかった。

海に飛び込んだ直後の記憶。

それが今自分に残っている一番古い記憶だった。

何となく察したのかグロースが聞いてきた。

「お前さん、もしかして名前を覚えてないのか?」


「...はい」


「そうか...。自分が住んでいた場所や、家族も覚えていないのか?他にも...」

確認としていろいろなことを聞かれた。だがその質問の中に、答えられるものは一つもなかった。

記憶喪失。

ぽつんと、自分の頭の中にその言葉が浮かんだ。


「まいったな。頭を強く打った衝撃で記憶が飛んじまったのか。だが、思い出すまで名前が無いというのも不便だしなぁ」


「あ、好きに呼んでもらっていいですよ。名前にはそこまでこだわりはないので」


そもそも自身の名前を忘れてしまっているのだ。

名前を付けられることには何の抵抗感もない。


「うーん、困ったな。名前を付けてくれと言われても、そんなすぐに思いつくようなものじゃないぞ?」


グロースは自分の名前を考えようと長い間うなっていたが、突然後ろから

「ニア」

と聞こえて驚いたように振り向いた。

ついでに自分も声のしたほうを確認すると、レジーナではない別の少女がいた。蒼く透き通るような髪の色が印象的だったが、良く考えるとレジーナも同じ髪の色だった。

レジーナの姉妹なのだろうか。


「君の名前を考えているんでしょ?ニアってのはどう?」


「お前...。なんでここに来たんだ。セシルもミランも心配してるんじゃないか?」

少女はグロースに答えることなく近づき、顔を眺めてき。


「うん、記憶の中で見た顔と同じ。」


「...まさか、この前から言ってた少年の事か」


「君の名前、ニアでいい?」


少女か聞いてくる。どうやら確信を持ったうえで聞いているらしい。確かに、ニアという名前はどこかで聞いたことがある気がする。誰かに引っ張られたときか?

「はい。何となく聞いた事があるかもしれません。ニアでいいです」


「良かった。じゃあ私の自己紹介もするね」


突然、少女が右手を差し出してきた。中指に一つだけ指輪が付いている。その指輪には一匹のクジラと、7つの泡が描かれていた。


「私の名前は、ミラーナ=レビア=ディアム、ミラーナって呼んで。ちなみにこの国の第二王女。あとグロースの本名はグロース=レビア=ディアム。父の弟で私の叔父なの」


「ついでに、この国の騎士団長をやっている。おとといの遠征の途中で、お前さんが降ってきたわけだ」

ミラーナの自己紹介にグロースが付け足す。

何か大事なことを言っているような気がするがイマイチ理解が追い付かない。


「レジーナ、ちょっとこっちにこい」


グロースが叫ぶと、部屋にレジーナが入ってきた。

「部屋の前で話は聞いていただろう。彼の名前はニアだ。

ほら、お前も自己紹介しとけ」


グロースに言われてレジーナがこちらに近づいてきた。

「あの、私はレジーナ=レビア=ディアム。よろしくね?一応、父の隊の見習いとして訓練をしているの。その、この前の遠征の時も一緒にいて、ニアの世話を任されていて、その時の事、覚えてる?」


運ばれているときの記憶はない。

そう伝えると、レジーナはほっとしたような顔をした。

「もしかして、俺何かやっちゃいました?」


不安になって聞くが、レジーナは

「ううん。たぶん混乱してただけだから気にしてないよ」

とだけ言った。


「なぁ、もしかしたら外に出たら何か思い出すかもしれないだろ。」

グロースが突然そんなことを言い出した。

「三人で外を見てきたらどうだ?」



土日のうちに投稿しようと思ってたのですが、気づいたら月曜日になってました。

今後は一週間ごとに投稿しようと思っているので、来週の土日にまた新しいのを

書くと思います。良ければ見ていってください。

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