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異世界転生されました

作者: 千葉 都

新作です。また短編です。

拙い文ではありますが、是非最後までお楽しみください。


「(うぐっ!!)」

「おいっ! 真! 大丈夫かっ!」


俺は田村真。公立の中学に通う2年生だ。

部活はテニス。サッカーとバスケとテニスで悩んだんだけど、サッカーはずーっと走ってなきゃいけないし、バスケをやるには少し小さすぎた。まぁ女の子受けのいい部活に入りたかっただけなんだけど。

趣味はゲームだ。最近はスマホやテレビゲームの通信対戦に嵌っている。漫画も読むしアニメも見る。学校で本を読む時間があるので、剣と魔法の世界の小説なんかも読んでいる。


何が起きたかって言うと、6時間目の体育の授業中、グラウンドをクラス全員で走っていた時に、突然襲って来た強烈な頭痛によって倒れたんだ。


「真くん……、真くん……」

授業中に倒れた俺は保健室で寝かされていたようだ。気が付いた時には放課後になっていた。

「あっ! 気が付いた。真くん、大丈夫? 痛いとこない?」


俺に付き添っていてくれたのは、玲奈。隣に住んでる幼馴染で、それこそ幼稚園の頃からずっと一緒だ。更にうちの親が留守がちなこともあって、いろいろ面倒を見てくれている。

俺の父さんは単身赴任で海外に行ってるし、母さんも仕事で帰りが遅くなることもある。俺は一人っ子だから自由気ままにやってるけどね。


「真くんのお母さんに連絡したんだけど、まだこっちに来られないんだって。だからウチで休んでいて」

「ごめんな、心配かけて」

母さんまた遅いのか。夕飯が玲奈の所なら少し休ませてもらおう。


頭痛はすっかり治まっていた。

「真くん、大丈夫なの?」

「うん。もう頭痛いのも治ったし。一体何だったんだろうな」

「でもよかった。倒れたまんまだったらどうしようかと思ったよ」



◇◆◇ ◆◇ ◆ ◇◆ ◇◆◇



『ここはどこなの? 私は一体……』


私はトゥウェル。グラフィル王国の宮廷魔術師で、稀代の天才と呼ばれている。


『見たことのない……、所……。見たことのない建物ね。王都じゃないようね……』


私は、何が起きたのかわからないまま動き出すのはさすがにまずいと思い、しばらく様子を見ることにした。


『それにしても見たことのない物ばかりだわ。なんであんなものが動いているのかしら。馬車ならわかるけど、馬のない馬車なんて動くはずがないのに……』

『それに隣の女の子、随分と馴れ馴れしいわね。私を誰だと思っているのよ。私はアナタなんか知らんだから』


もうしばらく様子を見よう。



『トゥウェルさん、トゥウェルさん』

『誰か私のことを呼んだ?』

『貴女は前の世界で、不幸な事故により死んでしまいました。そしてこの世界に転生したのです』

『何? 私、死んだの? 転生? 何を言っているのよ。全くわかんないわよ』

『とにかく貴女はトゥウェルさんではありません。今は14歳の男の子、田村真です。前世の記憶もあります。この世界は平和です。争い事もありませんし、危険な魔物もいません。食べ物もおいしいですし、楽しいこともたくさんあります。第2の人生、楽しんでくださいね』

『ちょっと待って。私が男? それにどうしてこの見知らぬ世界に来たの?』

『男でも女でも前の貴女は死んでしまったのだからあまり関係のない事よね。それから貴女がこの世界に来たのは、向こうの世界がこの世界との結びつきを強くしたいっていう思いがあったから。こっちの人が向こうの世界に行くととても優秀なのよ。だから向こうの神様がこっちの世界の人を紹介してほしいって言うのよ。何人か紹介してあげたんだけど、紹介してもらうばかりじゃ悪いからって言って貴女が来たって事。貴女にこの世界でやって欲しいことは特にないから、楽しんでね』

『チョッと聞きたいことがあるの。この世界では魔法は使えるの? あと剣は、剣は使えるの?』

『剣はダメよ。あなたのいる国では剣を持ってるだけで捕まっちゃうから。あと魔法はないわね。魔法以上に科学技術って言うのが発達してるわ』



剣は持てないし、魔法も使えなさそう。それにしてもこの身体、幼すぎるわ。来年には大人の仲間入りだというのに、全く鍛えてる様子がないの。この歳でこの程度の力、……平和であれば力は要らないのかな。


それにしてもこいつのやっているこの遊び、なんか楽しそうなんだよね。やってみたいんだけど……、まぁそのうち出来るかな。



◇◆◇ ◆◇ ◆ ◇◆ ◇◆◇



激痛の起きた晩、俺は妙な感覚に襲われた。


『俺の中に誰かいる?』


俺の手足が、俺の思考が乗っ取られた感じだ。身体は俺の思いと違う動きをする。思考もそうだ。魔法? こいつは何をしようとしてるんだ。


『ライティング』


俺の掌の上に明かりが現れた。


『これは何だ? お前は誰なんだ』

『私はトゥウェル。……違うわね。私はトゥウェルの生まれ変わりよ。神様が言うには別の世界からの転生者ってことみたい』

『転生者が俺の身体に……。アンタは俺の身体を乗っ取るつもりか』

『乗っ取るつもりなんてないわ。ただ、時々貸して欲しいの』

『貸して欲しいだと? この身体は俺のものだぞ』

『分かってるわよ。でも私の体でもあるんだからね』

『ところでさっきの光は何だ』

『あれは明かりの魔法よ』

『魔法? そんな漫画みたいな話はあるか』

『他にも使えるけど。やってみようか。ファイヤー』

指先に火が付いた。確かに火なのだが、指先は熱くない。

『どう? これが魔法よ』

『これって俺でも使えるのか?』

『使えてるじゃない。この身体は2人のものなんだから』

『魔法を使うには魔力がいるんだろ。俺にも魔力があるのか』

『あるわよ。訓練していないからあんまり多くないけどね』

『それなのに、2回も魔法を使って大丈夫なのか。まさか魔力切れで倒れるなんてことないよな』

『使った魔法はいずれも生活魔法だから大丈夫。生活魔法は魔力などほとんど使わないし、それにその程度ならすぐに回復するわ』

『ならよかった。倒れでもしたら大ごとだからな。それで、アンタは俺の身体で何がしたいんだ』

『この世界を楽しみたいのよ。神様も私にこの世界で楽しむだけでいいと言ってくれたしね』

『そうか。これが転生者を受け入れた身体なんだな。よし分かった。これからいう事を聞いてくれるんならアンタを受け入れるよ。1つは家族のことだ。父さんと母さんの前だけでいいから、今まで通りにしていたい。それから玲奈だ。彼女も大事にしたい』

『あの娘が好きなの?』

『そんなんじゃない。ただ……。いや、そうかもな』

『ならいいじゃない。私もあの娘は嫌いじゃないわ』

『ただ玲奈には隠すつもりはない。俺はこのことを玲奈には話すつもりだ』

『それはあなたが好きにすればいいんじゃない』

『それから魔法についてだ。知ってるかもしれないがこの世界に魔法なんてものはない。だからやたらと使わないでほしい。あるかどうか知らないが、体力とかの強化もだ』

『ふうん。でもなんで?』

『目立ちたくないんだよ。魔法が使えるなんて知られたら大騒ぎだ。体力を強化してとんでもない結果が出てもな』

『分かったわ。注意する。でも、この身体やあの娘に危害が加えられそうなときは使うかもしれないからね』

『あぁ、それでいい。それからアンタ女なのか?』

『そうだけど。下級ではあったが貴族だったわ』

『なら急に男になって混乱することもあるかも知れないが、まぁ慣れてくれ。それからこの世界にはたいそうな身分制度はない。あまり畏まった話し方はやめてくれ』

『了解。でも気にしなくっていいわよ。普段はあなたが前に出ていればいいから。命の危険がないんだから、のんびりとこの世界のこととあなたの知識を頂くわ。あなたも私の知識が必要なら、いつでも頼ってね。既に私の技能は引き継がれているみたいだし。私の知識があれば使いこなすことも簡単よ。1人の時で構わないから、私を楽しませてくれればいいから』

『そういう事か。なら楽しくやろうぜ』


あの頭痛のネタはこれだったんだな。面白い。アイツと一緒に楽しんでやろうじゃないか。

でもアイツ、楽しみたいって言ってたけど何したいのかな。聞いてみればいいか。あれっ? アイツなんて言ったっけ。

確か………


『トゥウェルよ。もう一人の私なんだから覚えときなさいよ』

『悪い悪い。ってもしかして俺、二重人格になっちゃったの?』

『二重人格が何かは知らないけど、この身体にはあなたと私がいることには違いないわ』

『そうか。まぁいいや。ところでさ、楽しみたいって言ってたけど何がしたいんだ?』

『とりあえず、ほら、昼間やってたのがあるじゃない。あの、なんか小さい絵がチョコチョコ動いてるやつ』

『あぁ、ゲームのことか。あれは俺がよくやるやつだからいつだっていいぞ。と言っても学校行ってるときはダメだからな』

『学校?』

『お前、学校知らないのか?』

『うん。前の世界にはなかったから』

『学校って言うのはな、同じ歳の人が集まって、一緒に勉強とかするところだよ。ほら、俺が倒れたの知ってるだろ。あそこが学校だ。学校は勉強するところだから、ゲームとかはできないんだよ』

『そうなんだ。まぁ私は知らないことが沢山あるから、そのうち教えてね。神様はこの世界は平和で争い事もないし危険なものも少ないって言ってたから、いろいろ経験したいの』

『OK。二人でいろいろ楽しもうぜ。ところでさ、トゥウェルってどんな魔法が使えるんだ』

『およそ何でもできるわよ。さっきみたいに火を付けたり、水も出せるし、怪我も治せるわ』

『凄いじゃないか。呪文とか唱えるのか?』

『私ぐらいになると呪文の詠唱は要らないかな。使う魔法の名前っていうかきっかけだけでいいの。私は魔法の天才と呼ばれていたから』

『じゃぁなにか、擦りむいてもサッと治せるって事か?』

『その程度ならすぐよ。腕がちぎれたって治せるわ』

『いや、そんなこと起きないから大丈夫だ。他にはなんかあるか』

『そうね、こんなのはどう? クリーン』

『うわっ! すげぇ。何かさっぱりしたぞ』

『体の汚れを取る魔法よ』

『これ便利だな。いつでも綺麗って事か』

『そういう事』

『どうやって使うんだ』

『体を綺麗にするイメージを作るの。そして呪文っていうか魔法の名前ね、それを唱えればいいの』

『ちょっと待って、やってみる』

俺は身体がきれいになったイメージをして、『クリーン』と唱えた。フッと何かに包まれた感じがした。

『上手いじゃない。出来てるわよ』

『そうか。なんかあまり変わってないような感じなんだけど』

『それはそうよ。だって私がクリーンをかけたばっかりだからね』

『そういえばそうだな。他にはなんかあるか』

『あと面白そうなのは、空間移動かな』

『空間移動? あれ出来るのか』

『出来るわ。まず行きたい場所を強くイメージして、そして呪文を唱えればいいの』

『なんて呪文なんだ』

『なんでもいいんだよ。言葉にすることでイメージが現実に実行されるだけだから。呪文なんかただのきっかけよ。『行け』でも『ジャンプ』でもなんでもいいの。でも『ファイヤー・ボール』とかイメージと違うものはダメだからね』

『どこでも行けるのか』

『知っているところじゃないとダメよ。見た事があるところなら平気』

『こういう写真とかだったら』

『これだけはっきりしてれば問題ないわ』

『やってみていいか』

『いいけど、どこへ行くの?』

『玲奈の部屋さ。突然行ってびっくりさせてやるんだ』

『あまり感心しないわね。女の子の部屋をいきなり訪ねるなんて』

『いきなりなんか行かないさ。ちゃんと断ってから行くって』


「玲奈、俺だけど」

「真くん。どう? また具合悪くなってない?」

「大丈夫だよ。ところで玲奈、今何やってるの?」

「宿題も終わったし、マンガ読んでたよ」

「チョッと行ってもいいかな。話したいことがあるから」

「今から? 別に構わないけど」

「じゃぁすぐ行くね」


玲奈の部屋をイメージして……、『ワープ』。


「わっ! 真くん。いつ来たの?」

「たった今だよ」

「えっ? だって電話切ったばっかじゃん」

「ちょっと秘密があってね。それを聞いてほしいんだ」


俺は玲奈に今日起きたことを話した。初めは信じてなかったみたいだけど、俺の本気の話と、いくつかの魔法を見せたら信じてくれたみたいだった。


「真くんはこれからどうするの?」

「どうって、変わんないよ」

「そんなことが出来るようになったのに?」

「うん。目立ちたくないからね。ま、そういう訳なんで、これからもよろしくな」

「うん。真くんの秘密は絶対に守るから」

「じゃぁ俺、そろそろ帰るわ。また明日な」

「うん。あっ、チョッと待って」


玲奈がいきなりキスしてきた。


「えっ!」

「二人だけの秘密。私のファーストキスだったんだからね」

「そ、そうか。でも玲奈って案外大胆なんだな」

「そんなことないって。真だからだよ」

「ありがと」


俺は玲奈のことをギューッと抱きしめた。

『このままワープしたらどうなるんだろう』

試しにやってみた。部屋に戻った俺の前に玲奈がいた。


「えっ? 何が起きたの?」

「空間移動の魔法で玲奈の部屋から俺の部屋に移動したのさ」

「これが魔法なんだ。真くん、ホントに魔法使いなんだね」

「こんな俺は嫌いになった?」

「バカ。なる訳ないじゃん」

「玲奈の部屋に送るね」



『よかったの、あの娘に教えて』

『玲奈に隠すつもりはなかったからな。魔法を使うって言っても玲奈の部屋に行くぐらいにしとくよ』

『ま、あなたも来年には大人なんだし、結婚もするんだろうから、女姓の部屋に行っても問題ないかな。でも程々にしておきなさいよ』

『えっ? まだ大人になんかならないよ。この世界の大人はね、20歳からなんだよ』

『なら、あの娘の部屋に行くことはやめたほうがいいわ。間違いがおきれば取り返しのつかないことになっちゃうから』

『大丈夫だって』



もしかして俺って、妄想なんかじゃない、マジもんの中二病?



<<<終わり>>>



最後までお読みいただきありがとうございます。

是非評価の方もお願いいたします。


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