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婚約破棄がはじまらない!!  作者: りょうは
1.この世界がゲームであると知っている
5/132

5.ラブ・ファンタジーマジカルってこんなゲーム

PNP専用乙女ゲーム『ラブ・ファンタジーマジカル』


通称ラブファン。



そこは剣と魔法の世界、アルテリシア皇国。

偉大な皇帝によって統治されたその国は戦争をすることなく平和な国として栄えていました。


主人公は男爵位をもつ優しい両親の元に生まれ、緑豊かな田舎で何不自由なく暮らしておりました。

しかしそんなある日両親は事故で亡くなってしまいます。そんな主人公のもとに追い打ちをかけるようにいじわるな伯父夫婦が子供たちを連れてやってきて、お屋敷も財産も全てを奪ってしまいました。


本来なら使用人に囲まれ美味しい食事と温かいベッドに包まれて眠れるはずなのに、朝早くから家畜を世話、屋敷の掃除、食事の用意をさせられ使用人にも劣る粗末な衣服に寒くて隙間風の通る屋根裏部屋で寝起きさせられてしまうのです。


それでも心優しい主人公はいつか伯父夫婦が優しくしてくれると信じて毎日一生懸命働きました。


しかし主人公が16歳になったときその期待は儚くも裏切られてしまうのです。


『きみも16歳だ。そろそろ独り立ちを考えたらどうかね』


でっぷりと太った伯父がゴテゴテとしたソファに深く腰掛けながら葉巻をふかして言いました。

その隣で意地悪い笑みを浮かべた伯母がこちらを見ています。



『あなたも十分私たちに世話をかけたのだから十分でしょう』


本来ならこの家も財産もすべてアリスのものだったのに、伯父夫婦は主人公の両親の遺言書をなかったことにしたのです。そのうえ家から追い出そうとするなんて…。


『わかりました…』


『あー、ただ独り立ちするにしても女が一人で生きていくには難しい時代だ…』


『わたくしは娼婦にでもどこかの家のメイドにでもなればいいと言ったのだけど…旦那様はお優しいからあなたをアルテリシア学園に1年だけ通わせてくれるそうよ。旦那様に感謝することね』


『え…本当ですか?』


『ただし入学試験に合格したらな。まぁおまえ程度の魔力で合格できると思えないが』


『落ちたらどこかの娼館でも行くことね』


ふたりからの話は主人公にとって悲しいものでしたが、たった1年とはいえ憧れのアルテリシア学園に通えるのです。主人公は忙しい仕事の合間を縫って一生懸命勉強に励み、見事合格してみせました。




そして真新しい制服に身を包んだ少女は、憧れの学園の門をくぐるのです。







制作会社 かりふらわぁ!のロゴ



『ラブ・ファンタジーマジカル』のいい感じのロゴ


ちゃららら~~~~~~~♪(攻略キャラクターが歌ういいかんじのテーマ曲)


登場人物たちのスチルとキャラクター紹介



心優しい頑張り屋さんの主人公

アリス・リンデル(名前変更可)




国を想う孤高の皇子さま

オーギュスト・ヨゼファン・フォン・ロート・ド・サクス・フリードヒ・アルテリシア

cv.HIKARU MIDORIYAMA



兄にコンプレックスを持つ小悪魔系

ルイ・パティス・フォン・ロート・ド・ジョージ・フリードヒ・アルテリシア

cv.TSUBASA AINAGA



無口で真面目すぎなエース騎士

ユリウス・ジュリオ・マッツァリーノジュール・マザラン

cv.TATHUMA TERAJIMA



面倒見抜群!みんなのお兄ちゃん

アルバート・フィリクス・ローグ・ラッシュ・スティルアート

cv.MOLIKUBO JUNTARO



主人公を見守る不思議な少年/???

トーリ

cv.TOLIKAWA HILOFUMI







曲がサビに入ったあたりでイベントスチルが数枚



キャラクターデザイン 島花千冬

音楽制作 Elements Bouquet



彼女は真実の愛を手に入れ世界を救うことができるのか…??(意味深な文章)




ちゃちゃちゃーん!!






はい!!このオープニングムービー100万回みましたよ!

なんならYOUちゅーぶとかニヤニヤ動画で毎日みてた。


もう中毒だったんだよね。毎日みないと落ち着かないみたいな?

移動中も携帯で見ていたからパケット代が月末死んでたっけ…。速度制限入るとダウンロードできないしなんなら普通に通信もできなくなるから死活問題だった。懐かしい…。






ラブファンは最初攻略キャラが4人で進行する。

オーギュスト様、ルイ様、ユリウス、アルバートお兄様だ。

4人のトゥルーエンドかハッピーエンドを攻略するとようやく隠しルートのトーリルートに進めるようになる。

そのなかでもメインルートと言われているのがオーギュスト様のルートで王子様ルートらしい王道かつドラマチックな展開が広げられている。



オーギュスト様ルートは最初学園の中で迷子になった主人公が校舎裏で偶然勉学に励むオーギュスト様を見つける。てっきり体調が悪くて倒れていると思ったヒロインが声をかけるも反応がない。日々の公務で疲れて眠っていたのだ。しかしそれを知らないヒロインはオーギュスト様に癒しの魔法をかけてしまう。この国では目上の人に魔法を使うことはご法度とされていた。

目を覚ましたオーギュスト様は驚くもヒロインに感謝する。



『癒しの魔法をかけてもらったのなんて初めてだよ』


『えぇ!?そうなんですか?私でよかったらいつでもお手伝いしますよ』


『へぇ』


このときヒロイン、マジでオーギュスト様のことを知らなかった。身分関係なく接するヒロインに興味を持ったオーギュスト様はヒロインに何くれと声をかけるようになる。


それを面白く思わないのがこの私、敵キャラメアリーである。


ヒロインに嫉妬したメアリーは事あるごとに嫌がらせをしていく。


そんなメアリーからの嫌がらせも実家で受けていた行為に比べたら全然平気とめげることのないヒロインの姿に牽かれるように周囲の目はだんだんと変わっていく。

これまでメアリーに辛酸を舐めさせられていた人たちがヒロインの味方をするようになる。


固く凝り固まった貴族たちの考えを変えた彼女にオーギュスト様も未来の皇妃の姿をみた。そしてひたむきに努力を続ける彼女に段々と惹かれていく。




そして最後は卒業式でメアリーに婚約破棄を言い渡し、ヒロインとオーギュスト様は最後のイベントである世界の崩壊を企む悪しき魔法使いを力を合わせて倒し皇族にも認められて二人は結ばれる。


国中から盛大な祝福を受けて純白のドレスを纏い結婚式を迎えるのだ。



~トゥルーエンド~





で、次がルイ様…。





……オーギュスト様以外のルートはあまりしっかり覚えてないからまた追々でいいか…




このラブファン、私がこれだけハマっているくらいだから神ゲーと思われるかもしれないが世間の評価はあまりよろしくなかった。



なぜならゲームがリリースされて最初こそ豪華声優陣と有名音楽制作スタッフ、人気のキャラクターデザイナーを起用したことで話題にこそなったが肝心のスチルの作画崩壊がすさまじいうえミニゲームが難しすぎると言われていたのだ。



攻略キャラがヒロインを押し倒すシーンでは肩幅が人間じゃなかったり、立ち絵でも体のバランスがおかしかったり…。



そのためファンの間では音楽と声優が豪華なだけのゲームとさえ言われていたくらいだ。


こんなラブファンが脚光を浴びたのはアニメ化が決まった影響が大きい。



どういうわけかそこそこの人気だったラブファンは歌の上手い声優を起用していたせいかキャラソンを出していた。(全シリーズ購入特典で収納BOXがもらえる。もちろん買った)



豪華声優とキャラソンの波に押されるようにアニメ化が決まったのだ。


アニメで度肝を抜いたのは攻略キャラたちが歌うテーマ曲に加えそのとき流行っていたエンディングでのダンスだった。


第1話ではオープニングに、2話以降はエンディングとなったがセル画1000枚を超えるダンスシーンはモーショントレスを使って実際のダンサーさんの動きを再現したものだったそうで、DVDBlu-rayの特典映像としてダンサーさんのダンス動画が収録されていた。




めっちゃ踊ったわ~。


ひとりで。








ちなみにルート分岐は学生寮を出たときどこに向かうかで決まる。



校舎裏を選択したらオーギュスト様

庭園ならルイ様

騎士たちの訓練場ならユリウスで、

校舎ならアルバートお兄様となっている。





たしかにアリスちゃんが転校してきたとき最初に向かった場所は校舎裏で、このときオーギュスト様と出会っているから間違いなくオーギュスト様ルートに入っている。



その後もふたりは園遊会や夏の森での置き去り事件といったイベントをクリアしているはずだからルート分岐は間違いないはずなのに…。





オーギュスト様ルートとほかのルートの決定的な違いは最後に現れる悪しき魔法使いだ。

このイベントをクリアすることで身分の低かったヒロインは皇族たちからも認められることになるという、皇妃になるために欠かせないイベントである。


しかしこのイベントの発生はメアリーの婚約破棄、謝恩会の終了後になるので今はまだ確認ができない。


「あれ?ってことは婚約破棄の可能性まだ残ってない?」



どのルートでも共通して卒業式の魔法石授与後に婚約破棄されていたが、もしかして謝恩会に変わったとか?



それならまだ可能性は残っているじゃないか。


ならオーギュスト様の先ほどのお言葉の意味って一体??私を油断させるための罠?


いや、オーギュスト様は誠実な方だ。


たとえ罠とはいえ本命のヒロイン以外にキスをするような人ではない。

そのことを誰よりも知っているのはオーギュスト様一筋の私じゃないか。



「…」



「お嬢様?如何されました?」


「何でもないわ。無駄口を叩いていないでさっさと仕事をなさい」



「…」



メイドたちの怪訝な顔を無視して私は再び思考の海に没頭した。





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