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婚約破棄がはじまらない!!  作者: りょうは
'ラブファン~side M~
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31’.8歳 貴族の義務と魔法のお勉強

街から帰ってくる道中から私は猛烈な頭痛に襲われた。



本当はすぐにでも清潔なベッドで横になりたいが服や髪についた悪臭でさらに気分が悪くなったので石鹸をふんだんに使って身を清め、そのあいだに部屋には香りのよい花をいくつか運んでもらってようやく横になる。


食欲が全くと言っていいほど湧いてこなかったのでメイドたちをはじめ厨房係たちを大いに驚かせた。

そんなに食い意地が張ってるようにみえるのか?



「メアリー、体調はどう?」


「お母様…。気分はまだ悪いですがじきによくなりますわ…」


「急に街に行きたいというから驚いたのよ。汚れていてとても耐えられなかったでしょう?」


「はい…教会の臭いもひどかったですが街がこれほどとは思いませんでした」


お母様はベッドの横に腰かけると優しく私の頭を撫でてくれた。

メアリーのような我がままな娘を持つと母親は苦労しそうなものだ。しつけとして小言は言われるがお母様はいつも私に優しい。



「そうでしょう?お母様だって慈善活動がなかったら絶対教会なんて行かないわ」



内緒話をするようにこっそり耳打ちしてくれた。この部屋には私とお母様しかないのであまり意味は無いのだけど秘密を共有しあうようでなんとなく楽しい。



「まぁ!」


「でも貴族としての義務だからこればかりは仕方ないのよ」


さっきとは打って変わり眉を下げてそう言った。

貴族としての義務。


これは富めるものは貧しいものにほどこしを与えなくてはいけないという考えだそうで、同時に貴族への批判を回避するための手段でもある。

一人が財産をたくさん持っていると財産のぶんだけ重箱の隅をつつくような荒さがしをして批判したがる人たちが出てくる。でもそのときに『私たちは財産を独占していません、慈善活動もしています』というと批判が収まる傾向にあるのだ。


だからこれはスティルアート家に生まれた以上、仕方ないことではある。



「教会にはそれほど頻繁に行くこともないから大丈夫よ。教会の中にいる間だけ我慢したらいいの。それにこれから先臭いよりももっと酷いものを相手にしていくのよ。これくらいで澄ました顔を保てないようでは貴婦人には到底なれないわ」


お母様は我がままな私にいつも優しいが、けっして教会に行かなくてもいいとか甘いことは言わなかった。私を貴族の令嬢として、将来の皇妃として相応しいようにしているのだ。


それがメアリーに課せられた使命であると同時にお母様と、この家に代々受け継がれてきた悲願なのである。



でもお母様とこの家の悲願は成就することはない。

私が婚約破棄されることは決まっている。それはお母様とスティルアート家の悲願を裏切ることになる。


それだけが唯一私が気にしていることだった。










体調がよくなった翌日から私のお勉強スケジュールに魔法が加わった。

といっても魔道具なしではかんたんな魔法しか使えなのでほとんどが座学中心である。



この世界では魔法にはけっこうな制約があってそれがけっこう面倒くさい。


魔法とは神様によって授けられる。


魔道具がないと魔法が使えない。


魔道具にはそもそも魔法式を組み込んでいないと成立しない。


魔法には禁術と呼ばれる魔法も存在していて、許可を得ていない者が禁術を使うことを禁止している。


これが以前リリー様が魅了の魔法を使っているのかと聞いたときにお兄様が即答できた理由だ。

他者の意思を思うままに操る魔法は禁術になっていることが多くその魔法式は公開されていないし存在するかもわからない。


魔道具だって常に魔力を注いでいないと起動しない。


魔力も神様から頂くもので尽きると命に関わる。魔力が減ってきたら魔法の使用を中断して神様が再び魔力を分け与えてくれるまで待つことが鉄則。魔力を頂くために教会に出向く必要はないけど命に関わるくらい魔力が無くなってしまったら教会で祈ることでより早く魔力の回復ができる。


まだ魔法を授かって間もない子どもは減っている感覚がわからずよく魔力切れを起こすそうで、大人の目があるところでしか魔道具を使わせてもらえない。



このほかにも制約は色々とあるからもうめんどうくさい…。




もっと自由なものかと思ったら覚えることが多くて私はただいま魔法の勉強に勤しんでいる真っ最中なのだ。


今日も家庭教師とマンツーマンで魔法の授業を受けている。




「メアリー様、こちらの魔法式。違っています」


家庭教師がノートに書きつけた魔法式の一部を指さして指摘した。赤ペンで間違っているという箇所に線をひく。


「どうして?順番が違うだけじゃない」


「魔法記号は番号順に記載しないと正しく作動しません」


「えぇ~めんどくさい…」



特に厄介なのはこの魔法式というやつだ。

記号と数字と文字の羅列で構成される式は書いて字のごとく、数学の時間に散々お世話になった公式や化学の時間に頭を悩ませた化学記号に似ている。


前世では文系だった私にとってこれは厄介なことこの上ない。



魔道具にはあらかじめ魔法式が埋め込んであるのだから無理に魔法式を覚えなくてもいいじゃないと抵抗したのだけど、式を知らずに魔道具を作動させることは危険極まりないと怒られ大人しくノートにガリガリと式を書き出しているわけだ。


でもさ!家電の宝庫だった日本ではどうして電子レンジで食べ物が温まるかとかしっかり理解してから使ってる人っていた?!知らなかったけど全然使えたよ!電子レンジ!

アルミホイルは電子レンジで使っちゃダメくらいしか注意事項知らないし。



魔道具なんて魔力注いだら勝手に使えるんだからいいじゃん!こんな勉強しなくても!


そう、叫びたい気持ちをグッと抑えて家庭教師からの指導に耐える。

厳しいけどわかりやすい教え方をしてくれる初老のこの家庭教師は割と気に入っていた。



あれ…そういえばアリスちゃんってラブファンの中では魔法式とか魔道具を使わずパパっと魔法を使っていなかったっけ?

ゲームの世界と現実では細かい設定に違いがあるのだろうか?

それともアリスちゃんには魔法の才能があるって設定だからそのせい?


それだと制約と矛盾しないかな?うーん…。




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