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婚約破棄がはじまらない!!  作者: りょうは
'ラブファン~side M~
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1’.4歳 最初の悪行

過去編です

過去編がメインで進行します

ここでメアリーの生い立ちについて語っておこうと思う。


といっても、私の生い立ちなんて面白いものでもないのだけど…まぁ悪役令嬢らしくわがまま三昧していたと思てもらえば間違いはないかしら。



物心ついたころ、ほかの子より我の強い子どもだった私は盛大に乳母たちを困らせた。

所謂イヤイヤ期ってやつだ。


でもお兄様が物分かりのよい賢い子どもだったぶん私のわがままっぷりには相当手を焼いたらしい。

思うようにならなければ金切り声を上げ、なにをするにもまずは「いや!」気に入らなければモノを投げる投げる…。


当時はまだ魔法を授かっていなかったから全て物理的に投げる、叫ぶ、暴れまわるを繰り返していたそうだ。



天使のような可愛らしい外見とは裏腹にやっていることはそこらへんの子どもか猿と変わりないと何度言われたことか…。と言ってもあまりその頃の記憶はないので全て聞いた話だけど…。



そんな2歳を乗り越え4歳になったころ、私にもついに家庭教師が付けられた。

お兄様の習い事が増えたので空いた時間を私に充ててくれることになったそうだ。




「かていきょうし?なんですのそれは?」



「メアリーに色々なことを教えてくれる先生だよ」



お兄様はめんどくさいのか、読んでいた本から目を離すことはなく幼い私に簡単に家庭教師とはどんなものか教えてくれた。


私はまだ本が読めないので窓から馬小屋を見ていた。スティルアート領内にはお兄様やお父様が乗馬に使うための馬や朝ごはんの卵のための鳥小屋がある。


そのほかにもどういう経緯であるのかは知らないが豚小屋まであるので記憶が戻った当初は自給自足でもしているのかと思ったくらいだ。




アルバートお兄様は私の3つほど歳が離れている。幼少期から聞き分けがよく、野山をかけまわるより本を読んだり勉強することを好む変わった人だった。

乙女ゲームのキャラクターというだけあって小さいときから西洋画に出てくる天使のような相貌をしている。

しかしそんな彼もこのころはあまり妹の面倒をみる余裕はないらしい。



まだ子どものお兄様はこんなふうに思ったことが直接顔に出てしまう。

真の貴族は考えていることが悟られないようにしなくてはいけないとお父様が常々おっしゃっていた。



「あまりわがままを言ってはダメだからね。先生の言うことをキチンときいてお母様たちを困らせてはいけないよ」


「はあい」



私はお兄様の言う事を話半分に返事をして子ども部屋を後にした。

その家庭教師が待っている勉強部屋に連れていかれる。








「でありまして、新しい時代に差し掛かろうとする今、いくら皇族とはいえ皇族だけが権力をもつなど時代遅れもいいところなのであります。次代をになうメアリー様にはぜひとも皇族だけではなく全国民が声を上げる時代を担って頂きたく~」



飽きた。


私は家庭教師(名前は忘れた)に挨拶をしてペンを持たされ机と椅子を用意されると永遠に家庭教師の講義を聞かされるという授業ともいえない授業を受けていた。



この家庭教師(名前は忘れた)はさっきからこんな4歳の子ども相手に何を言っているのだろう。

たしかにこの時まだ記憶はなかったが、皇族をやたら批判する内容で聞いていてイライラしたことだけは覚えている。



「ですからいずれ貴族制度などというものは崩壊するのです。平民だの貴族だのという身分はいずれなくなり、みな等しく平等な時代が訪れ~」



うとうと



「するとここで誰が政治を担うのかのいう問題が発生します。それは国民たちみんなで決めることなのです。子供ですら意見がバラバラになったら話し合うでしょう?それと同じことにございます。国の問題は等しく国民の問題なのですから~」



すやすや


「しかしどうしても意見が合わないことも出てくるでしょう。みなそれぞれ違う考えを持っているのですから仕方ありません。ですがそれでも少数派の意見を無視して政治を推し進めるなんてあってはならないことなのです。それなら無視された少数派はどうしたらよいのでしょう?彼ら少数派のことを考えることも貴族の務めでして~」



こくんこくん




「聞いておられるのですか?メアリー様!!!」


机はバン!!と叩かれ意識が覚醒した。

ウトウト船をこいでいたら無理やり起こされ、このつまらない話を聞かなくてはいけない。


「は、はい、すみません」



苦痛だ…。




まだ日がお空の天辺にあった時間から始まった講義は、お日様の半分が山の向こうに隠れた後まで続いた。







「先生、今日はとても興味深いお話をありがとうございました。私すっかり勉強になりましたわ」


「それは結構にございます」


家庭教師は偉そうに胸をはってメイドから上着とカバンを受け取った。


「せっかくですから私が表までお送りいたします」



私は友好的な笑みを浮かべて家庭教師を誘導した。先生の話に感銘をうけ感動していると思われているだろう。

家人もあの我がままお嬢様がとても懐いたようだとほっとした顔をしてた。


「私、先生をお外までお見送りいたしますから付き添いは結構よ」


私付きのメイドは心得たというように頭を軽く下げ付いてくることは無かった。



「先生、私先生にお聞きしたいことがありますの。でもここではお話しづらくて…どうかこちらにお越しいただけませんか」



「ほほっ!メアリー様もませておられますな。よろしいでしょう」



幼児特有のかわいらしい瞳を輝かせて上目遣いで家庭教師を見上げれば、何も疑うことなく教師は私の後ろについてきた。


我がスティルアート家本邸の敷地は広大で、敷地内にはお兄様やお父様が趣味にしている乗馬のための馬小屋や、牛小屋、鶏小屋まである。



「こちらですわ。先生、これは何ですの?」


私は家庭教師を家畜小屋の傍にある茶色く丸い泥穴を指さした。近づくだけで異様な臭いがする。


ハッキリ言って臭い。



「これは肥溜めといいます。家畜たちの糞尿をためておくのです…。メアリー様、あまり貴族の令嬢が近づいてよい場所ではありません。戻りましょう」


家庭教師も鼻を突き刺すようなにおいには耐えられないのか鼻を抑えていた。これほどの臭いだと服にまで臭いが付きそうだ。



「あ!今あそこで何か光りましたわ!魔法石かしら?」


「何?!?!」


「えい!!!」



「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」




魔法石につられて肥溜めに近づいた家庭教師の膝裏を押すと、どっぽん!と軽快な音を立ててきれいに肥溜めに頭から飛び込んでいった。



「あははははっ!!!!おもしろ~い!!!!私にあんな退屈なお話なさるからよ!!」


「このクソガキ!!!!待ちやがれ!!!!!」


「いやー!こわ~い。誰かに見つけてもらえるまでそこで反省なさい!」



私は高笑いをしながら家庭教師をそこに放置して、すたこらと本邸に戻っていった。



後に兄は語る。


これが悪役令嬢メアリーの最初の悪行であったと。







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