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婚約破棄がはじまらない!!  作者: りょうは
'ラブファン~side M~
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91’.12歳 お兄様、激怒再び

「何を考えているんだ!第一皇子に土下座だと?!メアリーは不敬罪で死刑にでもなりたいのかい?!」


再び特別室に連れて行かれ、ユリウスは事細かにオーギュスト様とお兄様にさきほどのことを報告した。


それはもう、詳細に。



礼拝堂の上に歓迎会の会場があるというのはこういうとき便利だ。

すぐに人に聞かれたくない話ができる。



「ルイ様が来てくれなかったら間違いなく土下座させていたぞ…この女は」


「え?当たり前でしょ?」



呆れながら言うがユリウスとて同罪だ。

ユリウスがオーギュスト様至上主義なのはよく知っている。彼のほうが私より怒っていたんじゃないかと思うくらいに。


少なくとも『ラブファン』のユリウスならオーギュスト様を侮辱しようものなら凍てつく視線で黙殺していたはずだし、相手が自分より格下なら切るか殴るか脅すくらいはしていたはずだ。


今はまだ成長途中だからそこまでしないのか、私が先にキレたから止め役に回ったのだろう。




「なにが当たり前なんだ!な、に、が!!」


ユリウスと私はオーギュスト様過激派でも、アルバートお兄様はそういうわけにはいかない。

オーギュスト様の側近とはいえ貴族としての立場とか常識はきちんとわかっている、ストッパー役なのだ。


つまりこういうときに説教するのもお兄様の役割というわけで…。



「だってあれだけ言われて黙っているわけにいきませんよ。ユリウスだって本当は怒ってたでしょ?」


「………まぁ…」


ほら図星だ!

目線を彼方にやっているが嘘をつけないのがユリウスの良いところである。



「正直者~」


「茶化すな!ユリウスも頷くな!」


「す、すまん…」


氷の騎士様とて正論をぶつけられると弱い。



「お兄様、あんまり怒ると胃が荒れますわよ」


「…誰のせいだと思っているんだい…?もう少し兄を労ってくれないか?」


「婚約者候補として当然の責務です」


「絶対違う…絶対…」


婚約者候補として何が正しいかは知らないけれど、推しの悪口を聞いて黙っていられるほど物分かりはよくないのだ。


「貴族令嬢ならたとえ婚約者が侮辱されようと笑って受け流してこそだろう。母上もそう言うだろうよ」


「そんなに聞き分けがいいと思いますか?」


「………………」



「うーん、ユリウスがいるから大丈夫かと思ったけど…ダメだったみたいだね」


「そりゃあそうですよ、ユリウスだって殿下のこと大好きですし」


「もう少し反省しろ!」


「まぁまぁ。おそらくこの件でメアリーが責任を取らされることはないと思うよ」


「本当ですか?!」


一筋の希望がみえたとばかりにパアッとお兄様のお顔が明るくなる。


きっとお兄様の頭のなかには不敬罪によって領地の縮小やら爵位降格とか数年は社交界で後ろ指を指される日々のシミュレーションがされていたのだろう。


次期当主もたいへんだ。



「実際のところ、歓迎会が始まるまでにふたりを追い出してくれてよかったよ」


「あら、そうなのですか?」


「朱菫国のかたがたには警備の都合ってことで最低限の従者だけにしてもらっていたんだ。セイガ殿を護衛の人が囲んでいては学生たちが怖がってしまうからね。だからさっき会場に入ってきた者たちもセイガ殿と一緒にきた留学生だけなんだよ」


「それならこちらに学生以外の関係者がいては朱菫国側の不興を買いますね」


「あぁ。高等部の学生はぎりぎり許容できるけどね。まぁ兄上たちの件についてだけど…スティルアート家絡みでなにかあるのはいつものことだし…」


「いつものこと…」


「スティルアート家はここ数年、話題に事欠かないですからね」


「だいたい原因はメアリーなんだけど…我が妹はいつになったら淑女としての振る舞いを身に付けてくれのかな…」


「こう見えてご令嬢としては優秀なのですよ、私」


クラスメイトのお嬢様がたからはよくメアリー様をお手本にしたいと言われる程度には淑女らしくなっていると思うけどなぁ。


しかしお兄様は胡乱な目をして小さく溜息をついた。



「大丈夫と言われても何の根拠もなしに安心できませんよ…」


「うーん、もう少し確信がもてるようになるまで待っていてくれないかい?メアリーも僕のためにしたことだからその忠誠心には報いたいんだ」


「まぁ…殿下…ステキ…」


オーギュスト様の臣下である私たちがオーギュスト様に尽くすなんて当然の事なのにオーギュスト様はそれに報いたいだなんて…!

一生ついて行きます!



「誰のせいでこんなことになったと思っているんだ!だ、れ、の!!」


「先に好き勝手したのはデイヴィット様とエドモンド様ですわ。招待もされていないのに来る方が悪いんです!」


「だからと言って無礼を働いていいわけないだろう。もう少し穏やかに対応できないのでは社交界でやっていけないだろう」


「…まぁ…なんとかやりますよ」


「あぁ…もう…本当に僕はいつになったら落ち着けるようになるんだろう…」



なんとかもなにも、私は高等部を卒業するときに婚約破棄されて表舞台を退場するのたがら問題はない。


好き勝手やったところであと数年の命なのだから怖いものはないのだ。


スティルアート家がおとりつぶしにはならない未来を知っているので気楽なものである。

お兄様がこうしてメアリーに迷惑をかけられれば掛けられるほど、メアリーを邪魔と思うしオーギュスト様にメアリーを排除するよう働きかける。


お父様もこんな問題ばかり起こす令嬢は皇妃に相応しくないと思ってくれるだろう。


全ては計画通り。

シナリオ通り。


それでも何か、シナリオ通りじゃなくてもいいんじゃない?と、囁きかける声が聞こえるような気がした。


今のメアリーは少なくともゲームのメアリーとは違う。

それならすこしくらいゲームよりマシな未来を手に入れることはできるんじゃないかって。


そう、誰かに言われているような気がした。


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