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婚約破棄がはじまらない!!  作者: りょうは
1.この世界がゲームであると知っている
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1.メアリーとは私のこと

アルテリシア皇国とはこの大陸で最も栄えている魔法国家だ。



水資源と肥沃な大地、広大な海に面するこの国家は国民はもれなく大なり小なりの魔法が使え日常的に魔法を使っている。そのため前世の世界とは違って科学という分野は発展していないもののそれほど不便はない。


朝は魔法調理機器で焼いたパンを食べ移動には魔力を動力にした車が走り魔法でくみ上げた水を魔法で温めいつでも温かいお風呂に入れる。


それでもどういうバランスか皇族貴族といった身分社会がしっかりと根付いているのはこの世界がゲームの世界だから。


そう。


この世界は私の前世で大流行したPNP専用乙女ゲーム『ラブ・ファンタジーマジカル』の世界なのだ。


主人公は貴族でも下位に属する男爵家令嬢のアリス・リンデル。

早くに両親を亡くし代わりに家督を継いだ叔父夫婦に家も財産も使用人も奪われ16歳になると厄介払いのようにさっさとゲームの舞台であるアルテリシア魔法学校に入れられてしまう不遇のヒロインだ。


純粋なアリスは魔法の才能があり学園に入ったことでその才能をグングン伸ばしていく。


その身分に関係なく接する優しい心と魔法の才能に惚れ込んだ5人の貴族の男たちから求愛されルートによっては世界を破滅に導こうとする悪しき魔法使いを打倒し世界を救うという、まぁありがちなテンプレな乙女ゲームである。



で、この世界における私のポジションはもちろん主人公でもなく、ありがちだけど悪役令嬢なわけで…。


またこの悪役令嬢ってやつがいかにもコピペしたみたいなキャラクターで、高慢、我がまま、身勝手、高圧的、権力を笠に着た傍若無人なふるまいは口にすることもおぞましい最低なやつだ。


ところが、紹介にはまだ続きがある。




彼女が一たび視線を送ればアルテリシア中からありとあらゆる宝飾品が土砂降りのように集められ、彼女が一つ溜息をつけば世界中の名画と文献と知識人が届けられ、彼女が肩落としたなら道化師が操り人形や楽器を携え立ちどころにやってきて彼女の憂いを晴らすだろう。

しかしその美貌の前に輝くばかりの宝石はたちまち色褪せ彼女と並ぶことさえ恥じらいそこに存在することすら許されず、彼女の唇はどのような名画や文献より子細に語り知識人たちは己の無知を嘆きながらその首を飛ばし、彼女はどのような道化師や語り部よりも諧謔に富んだ話を奏で彼女の目に叶わなかった道化師と語り部たちは二度と物語を語ることは許されない。




かんたんに言うとこの私、メアリー・イザベル・キャサリン・ド・アブスィルート=ロリーヌ・スティルアートが気に入らなければ全員抹殺ということである。


なんという令嬢だ。


いや、私のことなんだけどさ…。





どうせ幼少期からの婚約者であるオーギュストから婚約破棄されることはわかっている。

母親の地位が高くないので後ろ盾をしっかりさせて足場を固めるための政略結婚であることはお互い小さいときから知っていたし、いくら私が前世からこのオーギュスト様推しでも私がメアリーである以上幸せな結婚は望めないのだ。



傷は浅いほうがいいしさっさと婚約破棄してほしいので私は今日も悪役令嬢に徹している。

少しだけ興が乗って原作のメアリーちゃんより過激になってしまったことは否めないがストーリーに大きな影響はないだろう。





このゲームは卒業学年である3年生を舞台にしていて、婚約破棄イベントが1年間に何度かある。

まずは春の園遊会、夏の避暑地、秋の文化祭と収穫祭、冬はド定番の生誕祭、そしてトゥルーエンドのための卒業式だ。



私はさっさと婚約破棄されるためアリスちゃんが転校してきてから悪役に邁進した。


まずは園遊会でアリスちゃんの着てきた着物にジュースをぶちまけ取り巻きのお嬢様たちと扇で口元を隠しながら「あら、せっかくの一張羅が台無しですわね。そんな安物で園遊会に出席しようなんて身の程を知りなさい」と言い捨て、夏の避暑地では連絡手段を持たないアリスちゃんを深夜の森に置いてけぼりにして、秋の文化祭ではアリスちゃんを馬車馬のようにこき使い、収穫祭では泥の塗れた畑に落としてやった。冬の生誕祭では堂々と豪華絢爛な衣装に身を包んだ私と意中の相手であるオーギュストがダンスするところを見せつけたやったし何なら流行おくれのダサいドレスね!なんて鼻で笑ってやった。


我ながらいい悪役令嬢だ。


ここまでの悪役令嬢っぷりを発揮したのは幼少期に私にちょっかいをかけてきたどこかの貴族を一族郎党根絶やしにした時以来かもしれない。


当主はその妻と愛人を揃って断頭台に送り息子たちは奴隷として他国に売り飛ばし娘たちは娼館にぶち込んだ。

子どもたちの命はと乞われたので望みをかなえてやっただけだ。命の保障なんてしてないし。



これでオーギュストをはじめ攻略対象からの評判はすこぶる最低だろ~とタカをくくって私をヨイショしてくる取り巻きのお嬢さんたちとオーホッホなんてやって…



ようやく今日、最大の婚約破棄イベントである卒業式。


全然婚約破棄されないから焦ったけどアリスちゃんの卒業式用のマントはびりびりに破くよう指示しておいたしこれで準備万端!


さっさと婚約破棄するがいい!!!



それなのに…




「ここにわたし!オーギュスト・ヨゼファン・フォン・ロート・ド・サクス・フリードヒ・アルテリシアはメアリー・イザベル・キャサリン・ド・アブスィルート=ロリーヌ・スティルアートとの婚約を正式に発表する!!正式には後日発表があるが共に学んだ皆には先んじて報告したく思い彼女の許可を取らずに発表した」



「おめでとうございます!」

「メアリー様!おめでとう!」

「素晴らしいですわ!!」



会場からは拍手喝采。



アリスちゃんまで満面の笑みで手を叩いているじゃないか。それは自分が失恋した悲しみの涙ではないよね?

あれ?そのマントは私が破いておくように指示したマントじゃないよね??



なんでオーギュストは私の手を取って踊ってんの?

愉快な音楽はどこから流れてんの?




あれ?おかしくね?



でもそれよりさ…




名前なげぇよ!!!!!!




(需要あったら連載にします)



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