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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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79話

「なんだって?」

 はあはあと息を荒げながらも状況を確認するのは怠らない。まず僕がいる場所は......どこだろうか。窓はなく、辺りには段ボール箱がいくつかおいてあるだけ。天井からは豆電球が垂れていて、暗い空間をほんのり照らしてくれている。

 疑問に思って辺りをきょろきょろしていると、ブウン! というエンジン音と共に部屋が動き出す感覚。えっと、もしかしてトラックか何かの荷台に乗っているのかな? それを胡桃に確認すると、頷きが返ってくる。なるほど、まず場所の理解はできた。

 栞奈さんが誘拐された? 敵が本格的に動き始めたのか。こうなるとこちらは相手の襲撃を待つ側から襲撃する側へと変わらなければいけない......って、待てよ。

「あのさ、栞奈御庭番って何人いるの?」

 完全に息を整えた僕は胡桃に尋ねる。というのも、ちょっとひっかかる部分がある。

 そもそも。この栞奈御庭番と関わるようになったのは頭首(?)である栞奈さんとその仲間たちをA大学で保護するため。そのために実力を示す必要があって僕を倒そうとしていた。

 ただ、その事情を清木教授が僕に伝えたのだ。これによって、栞奈御庭番を保護するという話が一旦中止になっている。とまあここの事情はどうでもいいんだけれど。

 問題は、もともと栞奈さんは保護されようとしていた。つまり、誰かに狙われていたということだ。そして登場した『殺し屋』の面々。間違いなく、栞奈さんはこの殺し屋に狙われているのだ。

 なのに栞奈さんを易々と誘拐させた。これはなんというか、警戒心が薄すぎる。

 ただ、警戒はしていたけれどもどうしようもなかったという可能性もある。それが、人手不足の線。栞奈さんが能力者だとはいえ、襲ってくる相手も能力者。襲ってくる相手が多かったら人数差で押し切られてしまうだろう。

 そういう考えなのだけれど。

「栞奈様も含めると4人ですよ」

「4人......っていうことは栞奈さん、杏、胡桃、桃でみんなあったことがある人なのかあ。それで、栞奈さんを護衛していた人は?」

「誰もいない」

 ここで答えたのは胡桃ではないもう一人の男。身長が高く、大柄というわけではないけれどがっしりとした体格が目立つ。顔立ちは整っているものの、目つきが悪く、天然パーマという奴だろうか、ショートカットの赤い癖毛が特徴的だ。

「えっと、名乗ってもらっても?」

「栞奈御庭番が一人、杏と申す」

「ああ、杏か」

「知ったような口を聞くな」

「いや、杏については知ってるから」

 実際の顔を知らなかっただけで。

 とまあそんなことはどうでもいいんだった。えーと、どこまで話したかな......。

「そうそう、思い出した。栞奈さんの護衛は誰もいなかったって言う話だけれど。それじゃあまるで」

「そう。栞奈様はわざと捕まったのだ」

 僕の言葉の続きを杏が話す。ふむ、わざと捕まった......。

「......なるほどね。それで、君たちは今から栞奈さんを奪還しに行くわけなんだ?」

「少し違います。私たちは敵の組織を潰しに行くのですよ」

「? ちょっと話が飛躍しすぎているんだけれど。順番に話してくれない?」

「むう、説明は苦手ですね......杏、任せても?」

「うむ、承知」

 ここで胡桃から杏へバトンタッチ。咳ばらいを一つしてから杏が話し始める。

「まず、貴様は俺の能力を理解しているのか?」

 杏の能力。確か『人形の素体を生み出せる』みたいな能力だったはず。他にもどこまでが人形に含まれるかなど以前の闘いで知ったことをつらつらと話していく。

「ふむ、大体その通りだ」

 特に驚きもせず首肯する杏。改めてなんで能力を確認したのだろうか。

「ただ、貴様が知らない能力の使い方もある。ほれ」

 そう言って手のひらをこちらに差し出したかと思うと、あるものが突然現れる。

「わ、これって」

 出したのは小さな人形の素体。サイズとしては小指くらいだろうか。杏の手のひらの上で建ったりしゃがんだり、歩き回ったりしている。ただ人形として出すわけじゃなくて、動かすこともできるんだ。

「それで、こうしてやると......」

 杏はもう片方の手でポケットを探り、輪ゴムと小さな機械を取り出すと、輪ゴムで人形に機械を括り付ける。えっと、

「これは?」

 僕が人形に着けられた機械を指さして尋ねると杏が答えてくれる。

「GPSだ。これを栞奈さまの懐に入れてもらったのだ。そして、誘拐されたという体を装って敵の本拠地を探っている」

「なるほどね。あとは栞奈さんの『瞬間移動』の能力を組み合わせれば本拠地が分かった状態で逃げられるんだ」

「気づいたのか」

 ここで今まで穏やかだった杏の顔が少しだけ変化する。

 僕が栞奈御庭番と闘った中で杏と胡桃は『瞬間移動する』という存在しえない『二つ目の能力』を使っていた。それを使っていた人は当然、栞奈御庭番の誰かだろう。そして栞奈御庭番のメンバーは4人。他の3人は闘ったことがあるので能力が分かっている。残りの1人、つまり栞奈さんが『瞬間移動』という能力の使い手なのだ。

「僕だって馬鹿じゃないからね。この程度の推理は簡単だよ」

 ただ。栞奈さんの能力で若干気になることはある。まあ今はそれについて言及しなくてもいいだろう。

「それでは話が早いな。早速敵の本拠地へ行こうか」

「もう場所は分かっているの?」

「ああ。少し離れた場所だが、あと30分程度で着くだろう」

 ふむ。いよいよ最終決戦ということになる、のかな? うまくいけばこれで栞奈御庭番とのゴタゴタは終わる、と。

「......」

 そんな僕の楽観的な考えの一方で少しの謎が残る。それは、殺し屋の行動の目的。なんで栞奈さんをその場で殺さないで誘拐したんだ? 依頼人が恨みを持っているから依頼人の前で殺す必要がある、とか? そうは言っても、殺し屋サイドも狙う能力者の能力は分かっているはず。言ってしまえば、拘束した時点で栞奈さんは逃げると分かっているのだ。なのに、成功しているという現状に疑問を持たないのかな?

「あのさ。僕たち、おびき寄せられているっていう可能性があるんじゃないかな?」

 僕がその場にいる二人に尋ねると、杏が神妙な面持ちで答える。

「ほぼ10割だな」

「へ?」

「俺たちが誘い出されている可能性だ」

 冷静に答える杏。それを聞いた僕は少し慌てながらも尋ねる。

「わ、分かっているなら対策とか」

 これだけ冷静に現状を分析できているんだ、対策の1つや2つーーー

「「ん」」

 僕が対策について尋ねると、杏と胡桃が僕を指さす。? なんだろう。

「僕がどうかしたの?」

「いや、どうかしたというかですね」

「貴様が対策なのだ」

 へ? 僕?

 頭を?で埋め尽くされた僕をのせたトラックが、エンジン音を出しながら敵の本拠地へと進んでいく。ど、どうなっちゃうの......?

 


いよいよ闘いが始まる、のかな?

※明けましておめでとうございます。本年も頑張って執筆していきますのでよろしくお願いいたします。

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