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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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77話

 さて。ひとまず堂次郎が解放されたわけだけれど。

「......」

 難しい顔で唸るおじいさん。それはそうだよね。堂次郎、操られていないのに操られているふりをしていたのだから、気分がいいものではないだろう。

「......まあ、いいだろう。特にそれで不正が起きたわけではないしな」

「え、いいの?」

「ちょろいな」

「堂次郎は黙ってて」

 ただ、拍子抜けするほどにあっさり許してくれたのも事実。軽く理由を聞いてみる。

「元々操られていないんだったら、そもそも彼は賭ける対象ではなかったからね。こちらとしてはノーリスクで闘えたわけだ」

「......確かに」

 そうだよね。本来こちらの陣営としては堂次郎と僕、そして今のポーカーに勝ったのでもう一人誰かが仲間になっていたわけで。そう考えると、メリットがない勝負をしていたのかも......?

 ま、まあ。僕の目的はこの図書館にいた人全員の解放だから。無駄な勝利なんてなかったのさ。そんな風に誰にするでもなく心の中で言い訳をすると、堂次郎が口を開く。

「まあ、蔵介の最終的な目的は全員の解放だからな」

 確かにそうなんだけれど。堂次郎に言われるのはなんか腹が立つなあ。

「まあいいや。さっさと次の勝負をしようよ」

「そうだな。次の勝負は、『ダウト』じゃ」

 ダウト。実際にやったこともあるトランプゲームだ。一応ルールを説明すると、1から順番にカードを伏せた状態で場に出していく。そして、最終的に持っている手札がなくなった人が勝ちというルールだ。これだけだと簡単なルールだと思うかもしれないが、カードを伏せて場に出すというところがミソ。実は、場に出すカードは順番に沿っていなくてもいい。例えば、8を出さなくちゃいけないところを3を出しても良いのだ。

 ただし。この時他の参加者が嘘だと思ったら『ダウト』と宣言することができる。ダウトと宣言されたプレイヤーは伏せていたカードを表にしなければいけない。この時、順番とは違ったカードだった場合は、場にあるカードをすべて手札に加えなくてはいけない。逆に、順番通りのカードだった場合は、ダウトと宣言をした人が場にあるカードすべてを手札に加える必要がある。

 とまあざっくりとルールを説明したけれど。実は、このゲームなかなか終わらないんだよね。というのも、同じ数字のカードが手札に4枚とか揃っちゃうと相手が出したカードが絶対に嘘だってわかっちゃうから、相手に場のカードを押し付けられる。押し付けられた人はカードが多くなるので、必然的に同じカードが多く手札に存在する。なので、手札が少なくなるにつれて順番通りにカードを出せる確率が下がるので長引いてしまうのだ。

 そんな僕の考えを読み取ってかおじいさんが口を開く。

「ダウトのルールは知っているね? このゲームは長引いてしまうので手札が4枚になった人から上がりということにしようか」

 ふむ。それならいくつか予備を持ちながら闘えるので時間を短縮することは出来そうだ。意外と考えてあるルールだ。

「それで、対戦相手は?」

 このルールについては文句は一切ない。あとはゲームを開始して頑張るだけだ。

「相手は、この方たちと君たち二人だ。勝利条件は......そうだな、一番最初に上がった人がいるチームの勝ちということで」

 おじいさんが背中を押したうちの一人は、先ほど僕をおじいさんのもとへ案内した司書さんだ。もう一人も司書さんだけれど、こちらは男の人。どちらも瞳に光がなく、ボーっとしている様子だ。

 無能力者にまで手を出すなんて、相手はなりふり構っていないようだ。余裕がないのか、確実に仕事をこなそうとしているのか......

 考えてもしょうがないよね。呼ばれた四人で机に座って手元に配られるカードを黙って受け取る。さあ、やっていこうか。

 まずは僕から「1」と順番の数字を言いながらカードを場に出す。まあいきなり宣言されることはないよね。

「2」

 カードを場に出すのは女司書さん。いやあ、まだ何とも言えないなあ。

 まあ最初はこんなものだろう。自分の持ち札が少なくなってきてからが勝負だ。

 さあどんどん順番は進んでいき、全員の手札が一桁枚数になった。ここからは、『演技力』が試されるゲームだと僕は思っている。

 というのも。順番を先読みして、あとで必要になるカードを手札に残すというのも手ではある。ただ、それだけではどうしても限界が来てしまうのだ。そこで必要になるのが、嘘のカードを置くときの演技。いかに怪しまれずにカードを置けるか。ここが勝負だ。

 と、説明している間に僕の順番の数字のカードが手札にない。やれやれ......僕の演技力を見せつけようかな。

「じ、11」

「「「ダウト」」」

「なんで堂次郎も宣言してるのさ!」

 まったく騙せなかった恥ずかしさをごまかすように堂次郎に当たる。というか、なんで本当に分かったんだ!? わざと声を震わせることによって『ここに来て声を震わせるなんていうあからさまな動揺をするはずがない。これは罠だ』って思わせることによって嘘のカードを通すという高等テクニックなのに!

 すでに11のカードを四枚持っている人がいるとか......? いや、ここまで一回も宣言がなかったんだ、そんなはずはない。仮に四枚持っていてここまで泳がせていたとしても、三人同時にダウトを言うはずがないし......。

 場のカードを受け取りながらも混乱していると、堂次郎がため息を吐きながら口を開く。

「蔵介、お前の今の順番は10だ」

「......お、なかなかの手札だなあ」

「無視するなよ」

 ちなみに、ダウトが成功した場合、次の人は同じ数字を出すところから始まる。今回で言えば、僕が10を出せなくてダウト宣言をされたので、次の順番の女司書は10からスタートということだ。

 さて、僕の手札を数字順に並び変えて、カードをざっと見てみる。......うん、流石にここまで数字順に並んでいるということはない。嘘のカードもいくつか入っている。

 だからこそ、有利になるということもあるのだ。堂次郎、このまま駆け抜けてくれ!

「10」

「それじゃあどんどん出そうか。11」

 堂次郎の残り手札は今捨てたカードを除いて7枚。そして11はすでに僕の手札に3枚揃っている。けれど、あえてスルー。理由はもちろん、堂次郎の勝利は僕の勝利になるからだ。僕が無理をしてカードを減らさなくても、堂次郎をフォローするだけでいいのだ。

「12」

 次に捨てたのは男司書さん。そして僕の番になるわけだけれど。

「うーん......13」

 一瞬考えてから本当のカードを場に出す。考えたのは、ここで嘘のカードを出すメリットがあるかどうか。僕の手札は他の三人の何倍もある。つまり、この面子の中で一番順番通りのカードを持っている可能性が高いのは僕なのだ。なので、ここで嘘のカードを出してもほぼ百パーセント通るだろう。

 ただ、13というカードを保持する必要があるのか。順番通りカードを捨てていくと、僕が13を出す必要がある順番は大分先だ。もちろん、途中でダウトが挟まるだろうから何とも言えないけれど......。

 とまあそんなことを考えていたわけだけれど。やっぱり僕のカードは特に触れられず進んでいく。

「1」

 女司書さんがカードを捨てる。うーん、ここは1が三枚あるしダウトを宣言しようか。

「ダウト」

 女性がカードを返すと、そこには12が存在していた。うんうん、流石にありえないよね。

「次は俺だな、1」

「ダウト」

 ダウトを宣言したのは男司書さん。やっぱり堂次郎も持っていなかった......ということは、男司書さんが1を持っているということで間違いなさそうだ。

 さあ、場にカードが出しにくくなってきた。ここからどうしていこうか。

 特に僕のようなミスもなく、静かな図書館に数字を宣言する声と、ダウトを宣言する声だけが響く。

 正直、今の僕はちょっと暇だ。というのも、手札に存在するカードを順番通りに出していくだけだからだ。

 そんな状況だと、カード以外の場所に目が言ってしまう。ふむふむ、女司書さんも男司書さんも一切表情を変えない。ただ、少し気になる点が。操られているだけの人形にしてはちょっとそわそわしているというか。そのことを堂次郎に伝えてみる。

「あのさ。おじいさんの能力って操り人形にするっていうのじゃなさそうだよね」

「ん? いきなり何の話だ? っと、9」

「いや、なんか相手がそわそわしているっていうか。ただ操られているにしては無駄な動きが多くないかな、って......っと、11」

「おいおい、私語は謹んでもらえると嬉しいんだけどな」

 なにか話されてはまずいことでも話しているっけ? って、自分の能力を探られていたらいい気分じゃないよね。でも、

「まあカードの内容を教えあっているわけじゃないし許してよ......2」

「だな。4」

「ダウト」

 いやあ、見逃してくれないなあ。僕の手札にもまだ4は残っているんだけどなあ。

 能力のこともそんなに長く話さず。また静かな雰囲気で勝負が進んでいく。

 堂次郎の手札はいよいよ六枚。あと少しで勝てそうなのだけれど、相手の女司書さんも六枚だ。のんびりしている時間はもうないのだけれど......。

「うーん」

 どうにもうまくいかないのが僕だ。というのも、手札の枚数が大分少なくなってきたので、堂次郎をサポート出来ている気がしないのだ。まあ元より僕ができるサポートなんて、

「あれ、今の順番ってなんだっけ?」

「10だ馬鹿」

「あー、4かあ。4、4ねえ......」

「早く出せ」

「ゲえ......き、9」

 こんな感じでわざとダウトされるように動くくらいだ。ただ、相手の二人はちゃんと僕の嘘のカードと本当のカードを見極めて宣言してくるのだ。それって記憶力とかだけで何とかなるのかな......? それとも、

「長年の仕事仲間だからサインがあったりとか?」

「......どうだろうな」

 堂次郎は集中しているのか、僕が声を掛けても表情を崩さない。なんだかんだ、ポーカーフェイスがうまい奴だよね。僕相手にまでポーカーフェイスをする必要があるのかは分からないけれど。

 まあ堂次郎を信じるしかないか。そんな風に結論付けてカードを置く僕。ちなみに偽物のカードだ。まあダウトを言われても僕の手札が増えるだけだしどうでもいいかな。

「ダウト」

「なんで堂次郎が宣言するんだよ!!」

 前言撤回。なんで堂次郎にダウトを言われなくちゃいけないんだ! 一応チーム戦だよ!? 相手の司書さんたちも無表情ながらもなんかおろおろしてるし。

 言いながらもカードを表にして偽物のカードだったことをきちんと見せてから場のカードを手札に加える。うう、このままだとまずいんだけど......。

 もはやどうすることもできない僕は半べそを搔きながら次の順番を待つ。ああああ、女司書さんはついにカードが5枚になってしまった。ここはもうなりふり構っていられない! 確証はないけれど僕がダウトを宣言しないと。

「だ「ダウト」

 なんと、宣言したのは堂次郎。これで本当のカードだったらどうするのさ!

 結果は、本当に嘘のカードだったみたいで、女司書さんはそのまま手札にカードを戻す。......もしかして、堂次郎は相手の手札を見抜いているのかな? いや流石にそれは出来ないよね。

「7だ」

 言いながら堂次郎の番。堂次郎もこれが通れば手札は五枚になる。ただ、そのカードが手札にあるかどうか。

「「.......」」

 相手は微動だにしない。まあ僕も女司書さんも持っていなかったカードなんだ、堂次郎が持っているに決まっているよね。

 そのまま僕の番が過ぎて、女司書さんの番。司書さんがカードを置くと、ダウトを宣言される。宣言した人は何と、男司書さんだ。なんだなんだ? 仲間割れでも流行っているのか? 

 女司書さんが置いたカードは順番通りのカード。男司書さんはカードを受け取る羽目に。......あ! もしかして、順番を狂わせるつもりだったのかも! 自分たちが多く確保している数字の順番が堂次郎に来るようにするためとか!

 ......いや、考えすぎだ。相手はお互いに一切喋っていないんだ、自分が何枚カードを持っているかは分かってもお互いの手札を合計した数字は分からないはず。

「それじゃあラストだ」

「ダウト」

 堂次郎が順番の数字を宣言しながらカードを置く。そこにあったカードは、

「順番通り......だ! 凄い!」

 思わず立ち上がって堂次郎を褒める。凄い凄い! なんか良く分からないけれど勝てた!

 ただ、いくつか分からないこともある。ぜひ種明かしをしてもらいたい。

「なに、簡単な話だ。能力が関係しているのさ」

「へ? のうりょく?」

 ここに来てまさかの能力というワード。司書さんはどちらも無能力者だと思っていたけれど、能力者だったのか?

 率直に尋ねると、堂次郎は首を振って否定する。

「違う。こいつらは無能力者だろう」

「じゃあ能力って」

「ああ。そこにいるじいさんの能力が関係しているんだ」

能力関係ないと思ったら、関係あったのか。


※投稿遅れ申し訳ございません。リアル生活が忙しいのもあるのですが、トランプを題材にして書くのが難しいのです。二部の終わりまでストーリーは見えているのに、このトランプのせいで完全に迷走しています。勢いで書くものではないですね。

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