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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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5話

 あれから一週間。この間の能力者限定の説明会ではなく、大学自体の説明会が今日でちょうど終わる。あれから僕は愛想よく過ごしてきた。その成果もあってか、無能力者の友達が何人かできた。能力者たちも僕に悪い印象を持っていないように見える......が、決定的に何かが足りない。能力者と仲良くなるための何かが。

 そんなことを考えながら能力者用の寮に戻る。すると、エントランスではなぜか皆が集まっていた。

「ごめん、正、なんでみんな集まってるの?」

「ああ、蔵介。いやなに、学長から能力者に報告があるとのことだ。お前も少し待っていろ」

「へえ。何があるんだろ」

「確か新しい能力者がやって来るらしい」

「高校でもないのに、しかも授業が始まってないのにわざわざ紹介するの?」

「俺も疑問に思っている。まあ、その辺も含めて学長が説明してくれるだろう......お、来たみたいだぞ」

 やって来たのは清木教授と、女子生徒だ。

「やあ、皆さん。大学生活にワクワクしているところさらにワクワクするイベントということで新しい生徒の紹介をさせてもらうよ。まあ、元々この学校に入学する予定だったんだけどね。それじゃあ、自己紹介をお願い」

「はい」

 一歩前に出てきたのは肩にかかる程度の長さの白い髪が特徴的な女性だ。目つきも緩く、どこかほわほわとした緩い雰囲気を持っている。

 それとこの子、多分僕の知っている......

「初めまして。私の名前は白川雪音しらかわゆきねです。えっと、趣味は......あ! 蔵介!」

「やっぱり、雪音だ。元気してた?」

「うん!」

 二人で何年振りかの会話を交わす。周りの男子生徒の殺気が沸き立つ。まずい、皆との距離が一気に広がってしまう。

「やっぱり蔵介も能力者なんだね! 良かった、無能力者じゃなくて」

「え、あ、うん、一応」

 この会話が始まると周りの殺気が落ち着き始める。どうやら雪音は僕が能力者であることを重視しているようだ。

「何の能力? 昔言ってたもんね、わたしより強い能力だって!」

「あー、それは昔のことで......実は、雪音。僕、まだ自分の能力が分からないんだ」

言うのを躊躇っていてもしょうがない。僕は早めに打ち明けた。

「え? 嘘でしょ?」

「......ほんと」

 すると先ほどまでの輝いた瞳が一気に濁る。僕を『他人』に書き換えたような眼だ。なんだろう、すごく心がざわつく。

「あっそ。それじゃあ、どうでもいいや。みんな、1週間っていう短い時間だけどよろしくお願いします」

「「「......」」」

 雪音はそれだけ言うとどこかへ立ち去っていった。うーん、と......? 僕は立ったまま呆けてしまう。

「コホン。それじゃあ、俺が代わりに君たちに説明するよ」

 そこで咳ばらいを一つして注目を集めてから清木教授が話し始める。

「彼女はね、最強の能力者、『超能力者』の一人なんだ。どのくらい強いかっていうと、彼女一人でここにいる人間、もちろん俺含めて、皆殺しにできる程度には強いよ」

 その一言で周りがざわつく。清木教授は話しを続ける。

「別に君たちに彼女のご機嫌取りをしてほしいわけじゃない。ただ、友達になってあげてほしいんだ。彼女は他国から狙われながら、政府の命令をこなし、いつでも、勿論今でも命の危険にさらされ続けている。気の休まるところはない。そこで彼女を化け物呼ばわりしていた過去の人間とは違い、彼女と真摯に向き合える立場の君たちに、彼女の心のよりどころになってほしいのさ」

「だが、彼女は1週間程度よろしくと言っていたが?」

 正が質問する。僕はボーっとしたまま話を聞き流していく。

「そう、そこが問題なんだ。彼女は自分より強い能力者こそが自分の心のよりどころだと信じている。俺は間違っていると思うけど。とりあえず、1週間ほど生活して自分より強い能力者がいなかったら違う大学に転校していくと宣言したんだ。もちろん、彼女だからこそできる芸当だけどね」

「......要するに、1週間以内に彼女をここで生活させるように動けと」

「まあ、そんな感じ。別に嫌だと思う人もいると思うから、善処程度でいいよ。それじゃあね」

 清木教授はそれだけ言うとどこかへ去っていった。その場に取り残された人間も自分の部屋へと戻っていく。

「......蔵介、愚痴りに来るか?」

「......お言葉に甘えるよ」

 僕はふらふらと千鳥足で正の部屋へ向かった。

友達だった女の子にどうでもいいと言われるのはショックだ。

※投稿が遅れてしまい申し訳ございません。何とかパソコンが回復しました。

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