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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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73話

「はあ」

 ため息を吐きながら、図書館内をたくさんの本が入っている重たいカートを転がす。片手に持っている館内図を見ながら目的の本棚を探す。

 僕が何をやっているかというと、単純な意味で答えるなら図書館内で働く司書のみなさんのお手伝い。なんでこんなことになっているかというと、清木教授が関わってくる。

 昨日。僕は栞奈御庭番を狙っているという殺し屋と闘った。普段通り生活している中で襲われてしまい退けた、そういう話なら問題はないのだけれど、昨日の闘いは少し状況が違った。というのも、わざと殺し屋に接触するよう動いていたのだ。

 そして闘ったわけだけど。僕は銃弾を二発撃たれるという重症。さらに闘った場所は雪音の超能力で木がなぎ倒されたり引っこ抜かれたりと滅茶苦茶。以前注意されたにも関わらずわざと闘ってこのような事態が起こしてしまったので清木教授も流石に眉をひそめた。

 と、いうわけで。その罰でしばらく図書館内のお手伝いをすることになってしまった。流石に講義やアルバイトが優先という条件ではあるけれど、それにしても結構しんどい。

 今は返却された本を元の場所に戻す作業をしている。本の背表紙に貼ってある英字と数字が順番通りになるように本を戻していく。慣れればあっという間に場所を見つけられるんだろうけれど、始めたての僕にはちょっと難しい。地道に本を探していくしかない。

 さらに難しいのが、ジャンルが多岐に渡ること。図書館なんて小説とか参考書しか置いていないと思っていたけれど、芸能人のエッセイとか雑誌とかいろいろ置いてある。流石に漫画は置いていないようだけれど。

「えーと。『初心者プログラミング入門』、『女性とのデート術』、『微分積分の基礎』、『女性に好かれる男』、『英語の資格に不可欠! 単語八百!』、『口説き方入門』......」

 なにこれ。理性と本能のせめぎあいがあったのだろうか? それとも勉強関係はカモフラージュで、本命は彼女作りとか。よく耳にする、エッチな本を買うときに雑誌で挟むテクニックに近いね。初めて見た。

 というか、借りた本でその人のことがわかるものだなあ。なんだか人間の思考の推移をみているみたいで以外と楽しい。

 なんだかんだ少しワクワクしながら次の本に手を伸ばす。

「『催眠術入門』」

 うわ、闇落ちした。

「あの、すいません」

 僕が顔をしかめていると声を掛けられる。一応言っておくと、今は司書さんと同じように制服を着ているので、困った人が僕に声を掛けてくるのは変な話じゃない。

「はい、どうしました?」

 顔を上げて話しかけてきた人を見ると、金髪のイケメン、だけれど少し小太りな男だった。というか、堂次郎じゃないか。

「なんだ、堂次郎。なんだか久しぶりだね」

「おお、蔵介か。何してんだ?」

 そういえば堂次郎はこうなった事情を知らないよね。最後に一緒に戦ったのは胡桃という栞奈御庭番を相手にした時だ。あれから栞奈御庭番が仲間(?)になったことも知らないはず。

 そういった諸々の事情を交えながらこうなった経緯を伝える。すると、堂次郎は途中から必死にメモを取り始めた。メモ帳を持ち歩いているのなんて漫画家くらいだと思っていたよ。

「ふう、助かる」

「なんか気持ち悪いなあ」

 僕の話を聞いた感想が「なるほど」とか「大変だな」ではなくて「助かる」というのがなんとなく気持ち悪い。まあ本人にしてみれば創作のタネになるみたいだし、確かに助かるのかも。

 そんな話はどうでもいいんだった。これで僕の状況も分かっただろうし、特に疑問もないだろう。

「それで、なんで声を掛けてきたのさ」

「ああ。前に言われた通りスポーツもののゲームを作ろうとしててな」

 前話した内容は、シナリオが苦手ならシナリオよりもゲーム性が重視されるスポーツを題材にすればいいのではないかという話。ただ、それでも面白い展開があるかないかで評価は大分変りそうだけれど。

 そんな考えを読んだように、堂次郎が話の続きを口にする。

「それで今ゲームを作っているところなんだが、どうにも面白くなくてな。やっぱりある程度のシナリオは必要だと感じたところだ」

「それはそうだよね。今いる選手とかを題材にするわけでもなければ厳しいかあ」

「ああ。それで、今まで作ったゲームはファンタジーだったわけだが、今回は現実世界を題材にしている。そういうわけで、実際の選手はどういうドラマがあったのか知りたくてな」

 なるほど。探している本は『偉人伝』とかに近いのかな? いや、引退した人でもまだご存命な方が多いから『自伝』になるのか。

 僕が持っている館内図には本棚に数字がふられていて、どこにどんなジャンルの本があるか分かるようになっている。そこから探せば......っと。あったあった。

「検索用の機械もあるけど......。探している本は『自伝』でいいんだよね? 案内できるよ」

「お、それはありがたい。頼むぜ」

「りょーかい」

 そこから足を図書館の二階へと向ける。道中声量に気を付けながら堂次郎と雑談をする。

「防人の活動がないと暇なもんかと思ったが、お前は忙しかったんだな」

「まったくだよ。できればゲームでもしていたいんだけれど、しばらく図書館通いになりそう」

「いい機会だ、しっかり勉強しろ」

「本を読む時間なんて一分もないよ」

 言っている間に目当ての本棚に着く。堂次郎も案内し終わったし、さっさと仕事に戻ろう。そう思って堂次郎から離れた瞬間、口元を抑えられてどこかに運ばれ出す。な、なになに!?

「ん! むぐうーー!」

「んあ? なんだ?」

 僕がくぐもった声を挙げると、堂次郎が反応してくれるーーーが、既に堂次郎の目に届く位置に僕はいない。な、なんだこの移動速度!?

 図書館は広い。そのうえ、同じような景色なので自分がどこにいるのか分からなくなってしまう。

 連れてこられたのはトイレ。人気が無いそこでようやく解放される。

「だ、誰、っていうか何をするんですか!」

「シッ!」

 相手は口元に人差し指を立ててこちらを黙らせる。その仕草に反射的に黙ってしまう。な、何をされるんだ。

 相手は高い身長に広い肩幅。大分暖かくなってきたのもあってか半袖のシャツを着ている。そのシャツから伸びる腕は筋肉質で、非常に太い。

 が、そんな体つきと打って変わってと言うべきだろうか、ショートカットの黒髪に、青縁の四角い眼鏡。眼鏡から覗く眼光は鋭く、クールというに相応しい顔つきだ。なんというか、文武両道という外見をしている。

 そんな男なのだけれど、心なしか目つきを緩めて僕にペコリと一礼する。

「どうも、栞奈御庭番の胡桃でございます」

「く、胡桃って」

 栞奈御庭番の忍者の一人だ。確か緑色の装束に全身を包んでいたのだけれど、それでも分かる体格が特徴的だった。言われてみればその時の体格に近い、かも。

 僕が運ばれたときの移動速度も納得だ。胡桃の能力は、自分の筋力を五倍にするというものらしい。その能力を遺憾なく発揮して僕を運んだのだろう。

「それで、なんの用事?」

 とりあえずここまで人目に付かない場所に運んだのだ。恐らく話すのは一般人には通じない能力関係のことだろう。もしくは、栞奈御庭番を狙っている組織のことか。

「実はですね、今殺し屋に襲われていまして」

「え!?」

 なんという急展開。今襲われてるの!? この静かな図書館で!?

マジで急展開っすね。

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