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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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67話

 殺し屋が一言呟くと足元が揺れる。突然のことに反応できずにその場で立ち尽くしていると、いきなり空中に放り出される。いや、実際には空に向かって一気に浮かび上がったような感覚だ。

「うわわ!」

「うお!?」

「む!」

 三者三様のリアクション。チラリと横目で見れば、桃と正も吹き飛ばされているのが見える。そして、2人の足元にはコンクリートの塔ができている。僕の足元に目を向けると、同様にコンクリートが見える。これはどうやら、僕たちが立っていた地面が空に伸びるように形状を変えたということだろう。それで、その突きあがる衝撃で空中に放り出されたっていう感じだろうか。

「ふっふーん。狙いやすい、なあ」

 突然の状況でも頭が冷静に回る。えっと、高さは辺りの建物を見た感じ建物の2階くらいだろうか。今のは恐らく能力でやられて、空中に飛ばされた僕たちは、狙うのにはいい的で......というかそもそも、空中に突き飛ばされた時点で落下することは決まっていて、この高さから落下すれば無傷じゃすまないのは当然で......。

 改めて辺りを見回す。すると予想通りというかなんというか、僕たちを空中に放り出すために伸びていた地面はするすると低くなっていき、元の状態に戻ろうとしていた。やっぱり落下による攻撃をしようとしているのか。

 ということは殺し屋本人はこの場から去ろうとしている可能性が高い。何時までもその場に残って痕跡を残す方がおかしいだろうから。

 ただ。殺し屋の能力は今こうして空中に放り出されていることから、地面の形状を変えるものであるということは確実だ。そして、能力を持っているとしたら必ず1つの能力しか持っていない。つまり、この場から離れる手段として、物理法則を無視した手段は省かれる(瞬間移動とか)。

 というわけで、この場を何とかした後に殺し屋を捕らえるため、どこに逃げていったのかを知っておいた方がいい。そう考えた僕が地面へと目を向ける。

 不思議と恐怖心はない。これから落下していくというのに、時間の流れがやけにゆっくりに感じる。自由に体を動かせないという不安感が少しも感じない。

 そんな状況だからだろうか、殺し屋の姿をすぐに見つけることができる。見つけた場所はーーー先ほどまでと同じ場所。短時間とはいえ、殺し屋は一切動かなかったのだ。

 なんで、と考えた瞬間に目に入ってくる情報。殺し屋は、名前の通りというかなんというか、僕らに向かって拳銃を構えていた。

「ーーーはぇ」

 間抜けな声が口から漏れる。気づけば体は落下を始めていて、殺し屋が構える拳銃の銃口は僕に向かって構えられている。これはーーーまずいか。俺が能力を使う必要があるか? いや、使わなくちゃダメだ。体の硬度を上げて、銃弾を防がないと殺される。

 俺が能力を使って来るべき衝撃に備えていると、予想していなかった衝撃が来る。

「二人とも、無事か?」

 ーーーその場に真っ黒な何かが現れて僕たちを受け止めてくれる。どうやら、大きな鳥が現れて僕たちを受け止めてくれたようだ。この能力は、桃の能力だろう。こうして助けてくれるということは、やっぱり敵じゃない、のかな?

「ありがとうございます、桃さん」

「ああ、助かった」

 一先ず、助けてもらったことにお礼を言う。黒装束に身を包まれていて表情が読めないけれど、声色から敵意は感じない。

「無事みたいで何よりだ。一応言っておくが、私の能力でカラスを呼び出して何とか対応した。ただ、私の能力は『事前に』描いたものを呼び出すというものだ。そして、私が事前に描いておいたカラスは3羽。言いたいことは分かるな?」

「えっと。このカラスは何をしたら消えちゃうんですか?」

「ある程度の衝撃を与えるか、私が命令すると消えてしまう。人が殴っても消えない程度だから、とりあえずは安心してくれ」

「ちなみに、拳銃なんかで撃たれたら」

「流石に消えてしまうな」

 ふむ。とりあえず今の状況を確認すると、今僕たちは建物の2階くらいの高さでカラスの上に乗っている。で、このカラスはある程度の衝撃には耐えられるけれど、拳銃で撃たれたら消えてしまう。で、殺し屋は今拳銃を持っている、と。......うーん、能力よりも拳銃が恐ろしいなんて、科学の力には感服ししちゃうね。

 っと、冗談を言っている場合じゃない。まずは桃さんに状況を伝えて、カラスを拳銃で撃ちぬかれないように適当に飛行させながら着陸させてもらおう。

「えっと、桃さーーー」

 僕が桃に今考えていたことを話そうと口を開いた瞬間、とんでもないものが目に映る。なんと、殺し屋が桃の後ろに突然現れた。どうやって、と考えれば、僕たちを空中に放り出した時と同じようにやったのだろう。

 ただ、そんなことはどうでもよくて。殺し屋が握っている拳銃の銃口は寸分の狂いなく桃に向けられている。

「まずは一人」

 パアン! 乾いた音が辺りに響き渡る。その音が鳴り響くのと同時に僕は桃に抱き着いて、カラスの上を転がっていた。

「う、ぐ、ぅ......」

 肩から痛みと熱と血が流れる。思わずうめいてしまう苦痛。ただ、そんな俺たちを見逃すわけがない殺し屋。確実に仕留められる状態の俺と桃に銃口を向けているだろう。

 予想通り、二度目の銃声が上がる。運任せにゴロンとその場を転がると、先ほどの痛みはやってこない。代わりに、俺たちを支えていたカラスが消えてしまう。

 ゴオオオという風を切る音とお腹にかかるGを感じながら、地面へと真っ逆さまに落ちていく。この状態の俺たちを狙ってこられたらまずい。ここは能力で体を硬化させるしかない。というか、このまま地面に落ちたら桃も俺も死んでしまうだけだ。

 これならさっきの銃弾も体の硬度を上げて防げばよかった。一応栞奈御庭番に俺の能力をバラさないためにあんな痛い思いをしたんだが。

 呑気にそんなことを考えながら能力を使って落下の衝撃を待つ。あとは地面が体に触れると同時に能力を使ってコンクリートを柔らかくする。といってもトランポリンのようにするというよりは発泡スチロールのようにするという感じだが。

 誰に解説するでもなく頭の中で独りごちていると、体が空中で止まる。今度は何かに受け止めてもらったというわけではなく、ピタリと空中に固定されるような感覚。この感覚、どこかで味わったことがある......。

「よかった、間に合った」

 そんな朗らかな声が聞こえてくる。顔を向けるとそこには白い髪が特徴的な可愛い女の子、雪音がいた。


雪音はもっと登場させたい。

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