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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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64話

「うーん、まさかもう現れちゃうなんてね」

 栞奈は真っ暗な住宅街でぽつりとつぶやく。その視線の先には先ほどまで蔵介と話していた女の姿があった。女はきょろきょろと辺りを見回しながらウロウロしている。恐らく栞奈を探しているのだろう。

「まあ、見つかっても嫌だし、上木君も逃がしちゃったし......」

 栞奈は能力を使って少し離れた人目につきやすい場所に移動する。住宅街の中でも声を挙げれば誰かの目につくような場所だ。

「それじゃあ、私がいなくても何とかなりそうな......ももに頼もうかな。ちょっと嫌だけど」

 栞奈は苦笑いしながら再び姿を消す。住宅街には静寂のみが残った。


 翌日の朝。僕は清木教授のもとへ訪れていた。理由はもちろん、

「ーーーっていうことがあったんです」

 昨日の杏と胡桃の襲撃についてだ。杏の襲撃についてはメールのみでの報告だったし、胡桃についての報告も同時にしたいということで実際に足を運んだのだ。

「ふーん。そんなことが」

 が、僕の報告を聞いた清木教授はどうにも本腰をいれてくれない。立花学長もどこか他人事のようだ。いや、他人事なんだろうけど。

 ただ、その対応では僕が困ってしまう。

「いやいや、ふーんって。僕一人だったらまずい案件だったんですよ」

 そう、どちらも運がよく僕以外の能力者がいたおかげで何とか退けることができた。ただ、僕一人だったら何もできずにやられてしまっていただろう。『殺し屋』ではなさそうだから殺されてはいなかっただろうけれど、それでも負けたら何をされるのか分からない相手というのには変わりない。そのことを改めて伝える。

 すると、清木教授も立花学長も顔を見合わせてから申し訳なさそうにこちらに向き直る。

「ごめんね、上木。そいつらは殺し屋とはまた別の組織なの」

「一応君を襲いに来るけれど、それはなんていうか、その、ある種の試練みたいなものなんだ」

「? ちょっとよくわからないんですけれど」

 試練? それは僕への試練ということだろうか? ただ、雪音を守るだけの力はあるということで僕の、防人の力は証明できていると思っているんだけどなあ。

 詳しい説明を聞こうとするけれど、二人はどうにも話を濁してばかりだ。これではきりがない。

「はあ......わかりました。とりあえず、その栞奈御庭番とやらについては置いておきます」

「助かるよ。それと、今日はこの人を呼んでほしいってことだったけれど」

 そこで清木教授が室内のソファに座っていた人をちらりと見る。

「ようやく出番かな。久しぶりだね、上木君」

 ソファに座っていた白髪の男性が立ち上がってこちらを振り向く。この人は清木天馬さんという清木教授の親戚の男性だ。相変わらずしっかりと伸ばされた背筋や雰囲気から迫力を感じる人だ。

 今日ここまで足を運んだ理由のもう一つが、2重人格の僕が何をしたのかを説明させに来たというものだ。昨夜はわざと一人になる時間を作った。すると目論見通り誰かが現れて、その後に僕の意識がなくなって、気が付いたら能力者の集まる寮の前に立っていたのだ。この間何があったのか知りたい。そのことをその場にいる人たちに説明する。

「なるほど、それで私を呼んだのか」

「そうなんですよ。僕は能力を自由に操れるわけではないので」

 過去、この天馬さんに額を触られていたら意識が一瞬飛んだ。その後天馬さんの報告によって僕の能力が2重人格であることが判明したのだ。そこから推測するに、意識が飛んでいた一瞬の間は2重人格が現れていた可能性が高い。つまり、天馬さんの能力は僕の2重人格を無理やり引き出せるのだろう。

 と、言うわけで。

「早速お願いしてもいいですか?」

「君がいいなら」

 と、二つ返事で了解してくれる天馬さん。早速僕のもとへ歩み寄ってきて僕の額に指をあててくる。うーん、あの感覚、決して気分がいいものじゃないんだよね。

 そんな風に嫌な感覚を思い出していると、意識が朦朧とし始める。相変わらず言葉にできない変な気分。だけど、これで......

「う、うぇ、、、、が......あ...........何の用だ」

「「「!」」」

 ッチ。無理やり呼び出されて気分が悪い。俺は額を抑えている指を払いのけてその場にいるメンバーと向かいあう。

 一番に口を開いたのは清木教授だ。

「えっと、君のもう一つの人格からの質問で、昨日の夜何をしていたのかだってさ」

「それは知る必要はないって伝えてくれ」

「あ、ちょっと」

 ーーーっと、意識が戻ってきた。と同時に力が入らずその場に座り込んでしまう。ドッと疲労感と汗が噴き出す。

「えっと、どうでした?」

「それが聞き出せなかったんだ。天馬さん、もう一度お願いできます?」

「ふむ。動けないのも好都合だ、行くよ」

「え”」

 もう一回あの感覚を味あわなくちゃいけないの? 嫌なんだけど。

 ただ、拒否するだけの力が残っていない。再び腹の奥をかき混ぜられるような感覚に身もだえする。

「ちょ、ちょっと、待って、きつい、で......だから、こいつに教えることは何もないんだって言ってるだろ」

「君のもう一つの人格だけじゃなくて、俺たちも聞きたいんだよ。それが君の安全にもつながるからね」

「安全のためということなら教える必要はない。ただ殺し屋に出会っただけだ。狙っているのは俺じゃなかったようだし問題ない」

「「え!?」」

 ーーーふう。また意識が飛んでいたようだ。ただ、今度こそ。

「だめだったね。天馬さん、もう一回お願いできます?」

「ええ!? また駄目だったんですか!?」

「どうにもね。それじゃあ、天馬さん」

「分かったよ」

「い、いや。それじゃあ僕はもう知りたくないのでいいです。この辺で失礼します」

 矢継ぎ早に言いながら立ち上がろうとするけれど、うまく立てない。気が付けば再び天馬さんに指を突き付けられる。

「ちょ、もうやめて、ください!」

「だめだよ。大事な情報を持っているようだからね」

「じゃあ、もう早く話しちゃってよ!」

「それはもう一人の君に言ってくれ」

「それができれば苦労しないですって!」

 その後数回意識をかき混ぜられ、僕の限界が来て倒れこむまでこの行為は続いた。


蔵介本人だけが混乱中。

※今回短くて申し訳ないです。

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