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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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62話


「胡桃、大丈夫?」

「栞奈様に心配されるほどのものではないです」

 夜のA大学内のキャンパスの隅で。胡桃と栞奈と呼ばれた女が歩いていた。もう真っ暗なキャンパス内を歩きながら会話をする二人。

「そう、ならいいけど。ところで、あの女の子は誰?」

「確か高原涼子という女です。能力はあの感じだと、『目に見えない糸を絡みつかせることができる』というものかと」

「ふうん。あ、胡桃は情報だけくれれば特に何も考えなくてもいいよ。あんまり参考にならないし」

「むう、手厳しい」

 手厳しいとは言いつつも、自分が参考になるような考察ができないと分かっているようで、苦笑いをする胡桃。

「それはそうでしょ。『あの時』のこと忘れてないよね?」

「返す言葉もないです」

「だから言葉を返さなくていいって言ってるの。さてさて、次に動いてもらうのは「ところで。情報だけ寄こせということなので言わせてもらいますが」

 慣れ親しんだ仲であることを簡単に示すようなテンポの良い会話を遮る胡桃。

「なに?」

 話の腰を折られても機嫌を一切損なわずに胡桃に集中する栞奈。そこもまた長年の信頼がなせる業だろうか。

 話の腰を折ってでも話しておきたいこと。それを口にしていく胡桃。

「まず、上木自身が言っていたことですが。上木の能力は『2重人格』らしいです。それが出ている間の記憶はどうなっているかなどは聞くことができませんでしたが」

「ふんふん。なるほど、『2重人格』ね......」

 顎に手を当てて何かを考える栞奈。

「何か思うところが?」

 はぐらかされるとは分かっていても尋ねる胡桃。予想通り、栞奈は適当に返事をして話の続きを聞いてくる。

「いやいや。それで、他には?」

「上木にもこちらと同じように影の能力者がいるかもしれません」

「だから考察はしなくていいって。なんでそう思ったの?」

「奴の拳は、硬すぎます」

「......ふうん」

 それを聞いて栞奈はその場に立ち止まって顎に手を当てて考え始める。そして導き出した結論は。

「......よし。今から上木君に襲撃してくる」

「なぜです?」

「情報がそろったから。それじゃあ胡桃、ご苦労様」

 それだけ伝えると、くるりと振り返ってA大学のキャンパス内へ足を向ける栞奈。

「それじゃあ言われた通り見せてあげるよ、幸助」

 ボソリと呟いて栞奈は夜のキャンパスに溶けていった。



「えっと、蔵介、大丈夫だった?」

 そう優しく声をかけてくれるのは雪音だ。穏やかな雰囲気とこの性格が相まって僕にとって非常に強い癒しになってくれる。

「大丈夫だよ。とりあえず、みんなで寮に戻ろうか」

 とりあえず、堂次郎の能力によれば敵の気配は完全になくなったようだ。ならもうここに留まっている理由はない。建物と建物の間なんて言う微妙な場所だしね。

 みんなも当然異論がないようで寮に向かって足を向ける。その場にいる人は僕を含めて4人。そこそこの人数だ。これなら再び胡桃が襲ってくる可能性も低いだろう。

 それにしても。

「なんなんだろうなあ、あの忍者たち」

「ねー。この間は杏、だっけ? そいつと闘ったしね」

「また変な奴らに狙われてるな」

「うーん......まあ、そうだね」

 僕は少し逡巡してから返事をする。その返事の間を見逃さないのは高原さんだ。

「なによ。何か変なことでもあった?」

 僕の隣を歩いていた高原さんが僕の顔を覗き込むように尋ねてくる。なんというか、こういう動作が様になる人だ。

 そんな僕の感想はさておき。えーっと。

「まあ、変と言えば変なことはあったけど。とりあえずお腹が空いたよ」

「そういえば飯を食おうとしているところで胡桃に襲われたんだもんな」

「そうそう」

 僕は話をはぐらかすことにした。理由は色々あるけれど、一番の理由は僕の悩みが解決されることはないと考えているからだ。

「ところで、さっき堂次郎も聞いてたけど、なんで雪音はここにいるの?」

「んー。私も高原さんと一緒で進学説明会に来てたの。それで寮に戻る前に近くの自動販売機で飲み物を買おうと思ったらこのあたりで物音がして、来てみたら蔵介がいたから声をかけたって感じ」

「なるほど」

「......なるほどね」

 堂次郎と一緒に納得したふりをする。うーん、ちょっと引っかかるなあ。流石に疑いすぎかな? いやでも、今の状況なら疑いすぎるくらいがちょうどいいのか。

「あ! 僕実家から持ってこなくちゃいけないものがあったんだ!」

「あら。それじゃあ先に寮に戻ってるわよ」

「うん、そうして。.......あ、それと高原さん。今日は協力してくれてありがとう」

「もっと感謝しなさい。それじゃあね」

 照れたりするのかなと思いきや胸を張る高原さん。ここって照れたりする場面だと思うけれど。

 でも現実問題高原さんがいたおかげで胡桃を退けられたといっても過言ではない。心の中ではもっと感謝をしておこう。

 さて、みんなと一旦別れた僕。何か実家から持ってこなくちゃいけないものがあるというのは嘘だ。僕はまだほとんど分かっていないけれど、2重人格の方の僕なら結構分かっているはず。というわけでわざと一人になる時間が必要だと考えてこうして行動を始めたのだ。

 キャンパスを一旦出て適当に夜の街を歩く。大学周辺は大分落ち着いていて、住宅街とコンビニがいくつか、外食できるところがいくつかといった感じだ。学生にとっては若干退屈な場所なので遊びに行く人たちはみんな電車を利用して別の町へ行く。

 そんな落ち着いた場所なわけなので、敵が襲い掛かってくるには絶好の場所だ。これは2重人格じゃない僕が考えたことだけど、多分栞奈御庭番とやらは『防人』というより『僕』を狙ってきている。なのでその真意をはっきりさせるためにもわざと一人になって敵を迎え撃ちたい。まあ、彼らが人殺しをすることはないという信頼があってだけどね。

 大分適当な距離を歩いたところで僕の目論見は当たった。目の前をふさぐように誰かが現れたのだ。

 身長や体格を見た感じ女性だと思うけれど、ちょうど街灯の光が逆光になって顔が見えない。

「名乗ってもらっても?」

 誰か来るということは分かっていたので僕は余裕を持っているふりをしながら問いかける。

「「ふふふ......名乗らせていただこうかな」」

「「「ん?」」」

 なんか今二人分の声がしなかった? さらに全員の声色的に二人しかいなかったと思っていたみたいだけど。


なにやら面倒なことになってきた。

※投稿間隔相手申し訳ございません! 次は早く完成させます!

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