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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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45話

「な、なんだ今のは」

 俺は物陰から覗いていた攻防戦の終始を見届けてから呟く。なんだ今のはというのはもう、なんというか、全部だ。

 先ほど食堂の前で話をして蔵介と別れた後に俺はこっそりと蔵介の後をつけてきた。なぜかと言われれば当然、蔵介の本性を探るためだ。勘と言えば勘だが、なんというか、最初に蔵介に声をかけた時に蔵介の目つきがいつもと違った気がした。加えて謎の沈黙に『なんか奇怪なことが』などと言っていた。これで蔵介の第2人格が何かをしようとしていることが推理できた。

 話を戻すが、先ほどの攻防戦。まずは蔵介の身体能力が異常だ。もちろん、相手との暴力行為を平然とこなす精神力もそうだが、戦闘中の足さばき、無駄のない攻撃の仕方、さらに戦闘中のスタミナ。どれをとっても常人のものではない。明らかに戦闘慣れしている。認めたくはなかったが、蔵介が暴れたという話はもう疑いようがない事実であるようだ。

 ただ、少し疑問がある。先ほどまで蔵介と闘っていた青髪の男。あいつを見つけた時に蔵介が『ビンゴだ』などと言っていた。つまり他の誰かではなく、あいつを探していたということだ。無差別に人を襲おうとしているわけではなかったらしい。

 そういう諸々の事情を蔵介から聞き出したいのだが、青髪の男の能力が分からない。先ほどまで順調に戦っていた蔵介から意識を奪うような能力者だ、簡単にはいかないだろう。

 とりあえず地面に転がっていた石を力の限り踏みつけてポケットに忍ばせる。これが使われなくて済むように祈るが。

 続いてスマートフォンを取り出して耳に当てて、わざと大きな声で警察に電話をかけているふりをする。青髪の青年は何かつぶやきながら蔵介の体を持ち上げている。まずい、早くしなければ蔵介がどこかに運ばれてしまう。

「もしもし! あの、男が一人誘拐されそうなんですけど! はい、近くに容疑者らしき男もいます!」

「!」

 青髪の男がこちらを見る。ただ、蔵介から手を放すつもりはないようだ。しょうがない、こうなれば力づくだ!

「場所はB駅のすぐ近くのホテルです! 早く来てください!」

 それだけ伝えてスマートフォンをしまい、青髪の男に駆け寄る。男はさすがに蔵介を抱えながら闘うのは難しいと考えたのか蔵介を地面に放る。......ん? 俺の目的としてはあれを回収すればいいんじゃないか?

「そうと決まれば!」

 俺は青髪の顔に向かって拳を振り上げる。青髪が顔の前で腕をクロスさせたのを確認して俺は蔵介を抱え上げる。

「あ!」

 青髪がそれに気が付いたところでもう遅い......かと思いきや、意外とこいつ重たいな! ちょっと逃げ切れる自信がなくなってきた。

「我慢しろよ!」

 俺は蔵介を前に投げて、すぐにポケットに入れておいた石を青髪に向かって投げる。そしてお決まりの、

「セカンドインパクト!」

「う、うお!」

 ちょうど手のひらに収まる程度の石が青髪の顔にヒットする。急加速する石に、夜ということもあっての周辺の暗さ。避けるのは難しいだろう。顔に当たったのはたまたまだが。

 なんにせよ、これで逃げる時間は大分稼ぐことができた。俺はもう振り返らずに放り投げた蔵介に向かって走り出すーーー瞬間、全身の毛が逆立つ。この、感覚、は......

 能力? 違う、そんなものじゃない。これは純粋な、暴力の感覚だ。

「---!!!」

 俺はその場で顔を防ぐように腕を顔の前にかざす。視線を腕に飛ばしても、何も見えない。だが、存在を証明するような、腕の骨にまで響く重たい一撃。歯を食いしばってそれを受け止めて、すぐに攻撃に転じる。

「ッッ!! おら”あ”あああああ!!!」

「うあッ!」

 感覚。俺は昔のようにえながら、感覚だけを頼りに何もない場所に拳を振るう。すると、拳に帰ってくる確かな感触と何者かのリアクション。恐らく拳が当たった場所は肩だ。だが、1発ぶち当てればそれで充分!

 俺は蔵介に駆け寄りながら能力を発動する。

「セカンドインパクト!!」

「---!!」

 大分後ろから聞こえるうめくような声を聞きながら俺は大通りへと全力で走る。もう誰かが追ってくる気配はしない。


『痛え......。上木といい、あの男といい、なんなんだ一体。.......って、大丈夫ですか、琴葉ことはさん』

『多少肩が痛むが、大丈夫だ。それにしてもあんな有名な男二人と闘えるなんて、光栄だったのかもしれないな』

『有名? 有名なんですか、あの二人』

『おや、伊達は知らないのか。どちらも有名だよ。それにしても、康太が言っていた『塚波正が持っている能力は2つ』というのはこれのことだったのか』

『? ちょっとよく意味が。というか、康太はA大学にとらわれていますよね? なんであいつの報告が聞けるんですか? ......って、それを聞くのは野暮でしたか』

『まあその通りだな。とりあえず一旦ホテルに戻って報告だ。立てるか?』

『大丈夫です』

誰にでもひと悶着あった過去があるはず。それは蔵介だけではなく正にも当てはまる。

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