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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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39話

能力関係ない戦いだったなあ。

 さて、お互いのアピールが終わったところで、2つ目のゲームだ。

「次に測る男らしさは、ずばり動じなさだ」

「なるほど」

 これはまさに男らしさそのものだろう。例えば町で歩いているときに虫を踏んでしまったときに、動じて騒ぎ立てたら男らしくない。やはり堂々と踏んだ虫を軽く払うくらいの動じなさがあれば相当男らしいはずだ。

 そんな風に次のお題について考えていると、ステージの上に側面に丸い穴が開いた箱が2つ現れる。これはバラエティでもよくある、側面から手を入れて中に入っているものに触って中に入っているものを当てるやつだ。なるほど、これなら確かに動じなさを測ることができるだろう。

「まあ見てわかる通り、この箱の側面から手を入れて、中に入れているものに触れるというゲームだ。別に中身を当てる当てないはあんまり関係ない。要は、男らしく動じなければいいわけだからな」

「えっと、質問してもいい?」

 おずおずと手を上げるのは古木さんだ。古木さんは参加するわけではないのにどうしたのだろうか?

「あのさ、これって上木君がすごく不利じゃない?」

「? というと?」

「だって、中に入れるものは伊達君が幻術を利用して出すわけでしょ? だから、手を入れる前から伊達君は中身が分かっているよね?」

「......なるほど、確かにそうですね」

 言われてみれば、結構僕が不利な戦いだ。これへの対策を伊達さんは何か考えてあるのだろうか?

「そうだな......じゃあ、対策として、上木が苦手なものを言ってそれを触るというのはどうだ? 加えて、一般の人が苦手そうなものを春奈さんに提案してもらって、それも当てる。分かっている恐怖に立ち向かうのと分からない恐怖に立ち向かう二つの男らしさを測ることができる」

「それでも伊達君の方が有利じゃない?」

「まあ、苦手と言いながら実は得意だったりされちゃうかもしれないので、僕はこれでいいですよ」

「じゃあ若干上木君が不利だけど、これ以上は文句はないかな」

「それじゃあ、早速始めようか。上木、お前の苦手なものは?」

「うーん......蛇は昔から苦手ですね......」

「オッケーだ。それともう一つの方へ入れるものを春奈さん、教えてもらっても?」

「それじゃあーーーで」

「わかりました。それじゃあ上木、早速箱の前に立て」

「は、はい」

 言われた通り中が見えない箱の前に立つ。うわ、結構緊張するし、怖いなあ。というか、僕は今から蛇に触るのか......。

「どうした上木、汗なんか流して。男らしくないぞ?」

「う、うーん。分かってはいるんですけど、プレッシャーが」

 ただ勝負に勝つためにもなんとか平静を保たないと。どうでもいいことでも考えて......蛇って表面が独特の触感をしているよなあ。するすると動き回るし、それでいて変に柔らかいし、毒とか持ってないよね? まあ、幻覚だから大丈夫だと思うけど......って駄目だダメだ、今は蛇のことを考えちゃダメだって!

「それじゃあ、早速始めてくれ」

「は、はい」

 結局気を紛らわすこともできず、遂に箱の中に触る時が来た。こ、怖いけど頑張ろう。

 恐る恐る箱の中に手を入れていく。......あれ、これじゃああんまり男らしくないか。僕は意を決して一気に手を突っ込む。

「う、うわあ......! うわ、うわわ!」

「なんだ、男らしくないぞ」

 古木さんからの感想は聞こえてこないけれど、男らしくないと思われてしまっているだろう。でも、こんな反応をしてしまうのも許してほしい。うわ、ヌメッとしてる! というか、箱の中からシャーって威嚇してるよ!

「は、はい触ったよ! 次だね!」

「なんだ、この勝負はもらったも同然だな」

 そうは言っても触れただけでも褒めてほしい。

 心の中で文句を言いながら次の箱の前に立つ。これはこれで中身が分からない恐怖がある。まあ、蛇より怖いものなんて少ないだろう。

「それじゃあ早速......えい!」

 僕が手を入れると、指の先に何かが触れる。うーん? なんかぷにぷにしてて、ジトッとしてて、生き物っぽいけどあんまり動かないなあ。

「これは......ナマコ、ですかね?」

「おお、正解だ。あんまり動じなかったな」

「水族館で触ったりしたこともあるのであんまり苦手ではないですからね」

「まあそういうものだよな」

「ええ......私はすごく苦手」

 どうやら古木さんはナマコが駄目なようだ。少し変な人を見るような目で見つめられる。まあ苦手とかは人それぞれだよね。

 さてと、これで僕の番は終わりだ。あんまり勝てなさそうな結果になってしまったけど、どうだろう。

「まあ見ておけ。よいしょっと......おーよしよし、可愛いなあ」

 早速蛇が入っている箱に手を入れて撫でまわしている伊達さん。む、むう。一切動じていない。なんか悔しいから噛まれたりしてくれないかなあ。......っと、そういう考えは男らしくないよね。

 一通り撫で終わってからナマコが入った箱の前に立つ伊達君。そこから手を入れようとして......なかなか入れない。

「どうしたんですか?」

「い、いや、今から入れる。入れるぞ、入れるぞ......」

 僕に応えるというよりは、自分に言い聞かせるように呟く伊達さん。あれ、もしかして。

「ナマコが苦手なんですか?」

「そ、そんなわけないだろう。もう入れるぞ、やれ入れるぞ」

 口ばかりでなかなか手を入れない伊達さん。えっと。

「伊達さん、何か別のやつにしてもいいですよ」

「いや、それは駄目だよ上木君。ここで変えたら一番男らしくないよ?」

「そういうものですかね」

 ただこのまま時間を経過させるのは純粋に無駄だ。古木さんもそう思ったのだろう、手を少し入れては出している伊達さんに声をかける。

「この試合は上木君の方が男らしかったってことで終わり。いい?」

「そんな! 頑張りますからもう少しだけ時間を!」

「いや、時間かかりすぎだし、今から触っても上木君の勝ちで終わりだよ。ほら、時間の無駄だから次行こう?」

 ......結構厳しく言うなあ。僕だったら憧れている人にここまで言われたら立ち直れない。

「く、くそ。また負けた」

 悔しがっている様子の伊達さん。いや、純粋にあなたが弱すぎると思います。まあ口には出さないけれど。

「......これ、意味あったのかなあ?」

 誰に言うでもなく呟く。僕が蛇を触っただけのコーナーだった気がするなあ。

「......そ、それじゃあ最後のゲームだ」

 伊達さんが肩を落としながら話し始める。こんな調子で大丈夫かなあ? 古木さんは若干あきれた小児伊達さんを見ている。

 そんな僕と古木さんの視線を感じて、改めて伊達さんが元気よくゲームの内容を発表する。

「最後は、見た目の男らしさだ! 上木、上の服を全部脱げ!」

「え、ええ?」

 あんまりに突然の提案に動揺を隠せない僕。とりあえず、説明を求めよう。

「純粋に、男らしさと言ったら筋肉だろう?」

「......確かに大きな要素ではありますよね」

 体格がいい人は自信があるように見えるし、純粋に頼りたいと思える。確かに男らしさに直結するかもしれない。ただ、

「上裸になる必要あるかなあ? 肩幅とか腕の筋肉を見ればよくないですか?」

「あるだろう。腹筋とか胸筋も見せないと」

「そういうものですかね。それじゃああんまり自信ないですけど......っと」

 脱ぎやすい服装でよかった。僕は上のシャツと下着を脱いで、古木さんに上裸を見せる。うわ、少し恥ずかしい......。

「ふ、ふーん。上木君って結構筋肉あるんだね」

「そうですかね? あんまり自分じゃわからないですけど」

「それに、結構傷跡があるね。最近怪我でもしたの?」

「いや、過去に怪我した記憶はないですね」

「......ちょ、ちょっと触ってみてもいい?」

「ま、まあ、触るくらいなら」

 僕の姿を遠巻きから見ていた古木さんがツンツンと体をつつき始める。うわ、息もかかるし、少し長めの爪と細い指がなんか扇情的だ。女の人に見られるのって凄い緊張する......!

 そんな風に体を見定められていると、いきなりドサっという音がする。

「「?」」

 古木さんと一緒に音がした方を見ると、伊達さんが倒れていた。突然体調でも崩したのかな?

「ど、どうしたんですか、伊達さん」

 肩を揺さぶりながら声をかけると、伊達さんが呟く。

「あ、あんなに春奈さんに触れるのは恥ずかしい......! 想像しただけでボーっとしてしまう!」

「いや、女々しすぎますよ! 次は伊達さんの番ですよ?」

「お、俺の番......俺の番......! うっ!」

 最後に伊達さんがうめいたのを最後に、広大なステージが消えていく。そして、瞬きした次の瞬間、シアター室の天井が戻ってくる。え、えっと、これは......

「も、戻ってきたのかな?」

 倒れていた体を起こしながら呟く。こ、こんな幕切れってあるの?


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