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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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35話

 夕方。まだ空はオレンジ色に染まっておらず、むしろ青が目立つ。キャンパス内のグラウンドではいつも陸上部が走っているのだが、今日は違う。グラウンドの中央に即席のステージが出来上がっていた。

「これはまた凄いなあ」

「そうでござるねえ」

 お互いにステージの裏で呟きあっているのは僕と朝倉君だ。僕一人では襲撃してくる能力者から古木さんを守れないのだけど、堂次郎はどうにも僕にいい感情を持っていないらしい。正はそれをなだめるために傍にいるので、代わりに朝倉君を呼んだ。

「それにしても、朝倉君はこの間の襲撃の時に来れなかったけど、何かあったの?」

「ああ、その時は習慣の稽古をしていたんでござるよ。毎朝木刀の素振りを行ってから学校に向かうのが小学生のころからの癖でござって」

「なるほどね」

 これからもし堂次郎や正が防人を続けてくれるなら、朝倉君に午前中のSOSに対応してもらうのは控えようかな。

 そんなことを考えていると、いよいよ本命が顔を見せる。

「やあ。私が古木春奈だよ。今日はよろしくね」

「どうも。今日一日あなたの護衛を務める上木蔵介と」

「朝倉幸助でござる」

「うん、よろしくね」

 やってきたのは、肩に届く程度の黒髪をストレートに下ろしている小柄な可愛い女の子だ。アイドルと言われても誰も冗談だとは思わないだろう。実際にアイドルなんだけどね。まあ、僕は雪音の方が可愛いと思うけれど。

 古木さんは僕たちに挨拶をしてからきょろきょろとあたりを見回している。? どうしたんだろうか。

「どうしました、古木さん」

「あの、白川さんっていないの?」

「白川......ああ、雪音のことですか」

 そう答えると、古木さんがものすごい形相で睨みつけてきた。とてもアイドルとは思えない表情だ。

「なに、その呼び方。ちゃんと白川さんって呼びなよ」

「え、えっと」

 僕がしどろもどろになっていると、朝倉君が助け舟を出してくれる。

「まあまあ。彼は白川殿の幼馴染なんでござるよ」

「そ、そう。幼馴染なんだよ」

「......ふうん。まあ、いいけど。別に付き合ってるとかではないんだね?」

「う、うん」

 残念ながら。

 そんな風に心の中で付け加えながら質問に答えていると、奥からスタッフさんがやってくる。

「古木さん、そろそろ」

「あ、もうそんな時間なんですね。すぐに向かいます」

「お願いします」

 スタッフんさんが去っていくと、改めて古木さんが僕に指を突き付けてくる。

「いいかい。私が認めるのは白川さん一人だけだ」

「う、うん」

「私は彼女のことを心から愛している」

「......え、えっと。言い方が悪いかもしれないですけれど、同性愛ってことですか?」

「決まっているだろう。あんなに可愛くて、なおかつ強いなんて最高じゃないか」

「まあそれに関しては全く同意見なんですけど」

「君の意見は聞いていない。とにかく、彼女に手を出さないように。いいね?」

「は、はい」

「それじゃあ、護衛よろしく」

 一方的に言葉を押し付けてステージへ向かっていく古木さん。怖い人だなあ。

「それじゃあ朝倉君には事前に行っておいてもらった通りお願いするね」

「御意。蔵介殿も大変でござるなあ」

「なんか大変だね」

「他人事じゃないでござるよ。それでは、行ってくるでござる」

 からからと軽快に笑いながら歩き去っていく朝倉君。さて、僕も僕の仕事をしないと。

 少し混乱しかけた気持ちを切り替えて、僕は古木さんが歩いて行ったのと同じ方向へ向かった。


『今のところ異常はない。朝倉の方も異常なし』

「わかりました」

 僕は改めて額に巻いた鉢巻を絞めなおして、ステージ上で歌いながら踊っている古木さんを撮影しているカメラマンさんの傍で観客席全体を見回す。カメラマンさんがいる場所は観客席より少しだけ高い位置にいるので観客席全体を見回すのには悪くない環境だ。

 軽快な音楽と古木さんの歌声をBGMに辺りを見回しても特に怪しい奴は見当たらない。それもそのはず、ここは大学のキャンパス内なのでやってくるのは大学生しかいない。さらに今は古木さんの能力で視線が古木さんに釘付けになっているはずなので怪しい奴を見分けることはかなり難しい。

 そこに立花学長の能力が活躍する。僕が額に巻きつけている鉢巻と朝倉君が額に巻きつけている鉢巻には小型カメラが仕込まれていて、そのカメラを通して立花学長が僕たちが見ている光景を監視している。理由はもちろん、立花学長が『能力者の糸を見ることができる能力』を持っているからだ。なんと、この能力はカメラ越しの光景でもリアルタイムなら糸を確認できるらしい。まあカメラから映像まで多少の誤差はあるが、それは関係ないらしい。

 というわけで僕はステージから見える観客席を、朝倉君はステージの周りを歩き回って怪しい人がいないか監視している。ちなみに清木教授曰く、この間に襲撃が起きたら正と堂次郎を無理やり動かすらしい。まあできるならお願いしたいところだけど、やってくれるかなあ。

『! 上木、朝倉の方で怪しい奴を発見!』

 のんびりと考え事をしていると、耳に付けているイヤホンから立花学長の切羽詰まった声が聞こえてくる。いよいよ襲撃か!


どんな奴が来る?

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