34話
「ふあーあ」
僕は軽く伸びをしながらベッドの上で体を起こす。ふと思えば、雪音がこの学校からいなくなるのっていつだっけ? えーっと、1週間後にいなくなるって言ってたから......今日が6日目、かな。明日で雪音はいなくなっちゃうのか。寂しいと思う一方で、特に仲良くなったわけでもない。またお互いに自分の生活に戻るだけだ。
さて、切り替えていこう。まずは携帯電話の確認。防人という能力者を守るサークルに連絡が来ていないかを確認するのもそうだけど、学校からの情報が来ていないかも確認する必要がある。
えーっと。あれ、どっちからも連絡が来ている。まずは防人から確認しよう。アラームが鳴らなかったとはいえ能力者を守るための連絡であることは確実なのだから。
「どれどれ......ん? なんだこれ」
件名は『能力者の護衛』。内容は『今日一日だけやってくる能力者を護衛すること。時間及び対象は清木まで確認に来ること』......こんなの、清木教授たちで何とかしてほしいんだけど。
ちらりと時計を見ると授業が始まるまでには時間がある。早速清木教授に合い行こうかな。
「っと、学校からは......ん? なんだこれ」
件名は『古木春奈さんの来校に際して』。内容は、......う、うーん。まとめると、『アイドルが来るけど、学業が一番だからな。あと、節度良くアイドルを迎え入れろよ』とのこと。なんで学校にアイドルが来るのだろうか? 今日って何かあったっけ?
「......まあ、清木教授に合えば済む話か」
僕は服を着替え、身支度を整えてから部屋を出た。
「どうぞ、入って」
「失礼します」
早速理事長室に顔を出しに来た。向かい合わせに置かれているソファに、小さな机と小さな椅子、小さな本棚に見やすい時計。壁紙も白一色で、小さな窓が部屋の中を照らす日光を受け入れている。相変わらず簡素な部屋だなあ。まあ軽い書類仕事をするだけの部屋なのかもしれないし、来客に対応するためだけの部屋なのかもしれない。あんまり詳しく考える気はないけれど。
「なんか久しぶりだね、上木」
「あ、はい。どうも」
変にぺこぺこしてしまう相手は立花学長だ。学長が椅子に腰かけていて、その傍に清木教授がニコニコしながら立っている。
「あれ、今日は一人なんだね?」
早速清木教授が話を切り出してくる。う、また痛いところを突いてくるなあ......。
「ま、まあ、朝も早いですし。それより今日のメールについてなんですけど」
適当に流して話を変える。僕の得意な会話テクニックだ。自分が話したくない話を一瞬で置き去りにするこのテクニック。もちろん、このテクニックに気が付く人はいるけれど、『このテクニックを使ったということは、あんまり話したくないんだな』と気を遣ってくれてその話を広げない。ちなみに成功率は100%だ。
「まあメールは急ぎじゃないし。それで、何があったんだい?」
どうやら、成功率は100%じゃないらしい。少しは気を遣ってください。
「えーっと、まあ、あんまり話したくないんですけど」
「まあまあ、話してよ」
「いや、まあまあまあ」
「まあまあまあまあ」
「もういいでしょ二人とも」
あきれながら立花学長が話の本題に入ってくれる。
「今回呼んだのは、ある可能性を清治が思いついて、それを止めようと思ったからなの」
「ある可能性......?」
「それは詳しく話さない......というか、もし話して漏れてしまったら大変だから話せないんだけど」
「その判断でいいと思います」
素人の僕からしたら、その可能性というのが理解できないかもしれないし、特にそれを知ったからと言って何か得があるわけでもない。ここはリスクを避けてもらうのがいいだろう。
僕は頭の中で整理して続きを促す。
「えっと、それで僕は何をすればいいんですか?」
「今日大学にやってくるアイドルの護衛をしてもらいたいの」
「アイドル......ああ、学校のニュースで来てたあの人ですか。確か......古木さん、でしたっけ?」
「そうそう。古木さんね。彼女も能力者なんだ。で、その能力っていうのが『人の注目を集める』っていう能力なんだけど」
「アイドルとしてはこれ以上ないくらいに良い能力ですね」
「うん。注目する人の興味によって多少は変わるけどね。アイドルが大好き! っていう人ならもうほかのことが目に入らないくらい注目するだろうし、あんまり興味ないよ、っていう人は......まあ、そういう人でもかなり集中しちゃうかな。なんせ、能力だし」
「なるほど」
「それで、時間と場所なんだけどーーー」
ここから具体的な話をして、理事長室を後にする。
早速僕はスマートフォンを取り出して、ある人に連絡する。さて、出てくれるかな?
これも大学生にやらせる内容じゃないと思うけど。
※投稿日を一日勘違いしていました! 大変申し訳ございません!




