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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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33話

 大学の食堂で一人でご飯を食べている白川を見つけて話しかける。こんなに早く見つかるとは、ラッキーだ。早速事情を話すと、意外とあっさり話を聞くことができた。

「なるほどね、それで私のところまで来たんだ」

「ああ。あいつについて知っていること全部教えてほしい」

「ふうん。超能力者の私より蔵介のことが気になるなんて......あなたたちって、そっち?」

 冗談めかしながら軽快に笑う白川の姿は、超能力者ということを微塵も感じさせない。

 俺と堂次郎は若干戸惑いながらも話を聞くために椅子に座る。白川は一口水を飲んで、早速話を始めてくれる。食堂なんかで、と思うかもしれないが、別に能力について話すわけではない。周りに人はたくさんいるが、特段聞かれても問題ない話をするつもりだ。

「一応前置きしておくと、今から話すことはたぶん私よりもあなたたちの方が詳しいと思うよ?」

「構わない、話してくれ」

 そう促すのは堂次郎だ。やけにせっついて白川の口を動かそうとしている。

「えーっと。私はあなたたちも知っている事情で、幼いころにいろいろなところを転々と移動しているの」

 これは白川が超能力者だからだろう。言葉を濁したということは白川も周りに配慮してくれるようだ。

「それでその時に耳にした噂。私は実際に見たことはないけれど、蔵介が暴れてたんだって」

「「......は?」」

 俺も堂次郎も素っ頓狂な声を上げる。と、とにかく話を聞かなければよくわからない。堂次郎も隣で困惑している。

「暴れてたっていうのは、俺たちみたいなやつ相手か? それとも不良とか」

「前者だよ。あなたたちみたいな人を襲ってたんだって。理由は分からないけど」

「......やはり蔵介はそういう奴だったんだな」

 若干怒りも交えて堂次郎がつぶやく。俺としてもどう受け止めたらいいのか......。

「あいつがそんなに度胸があるようには見えないがな」

 ぽつりと呟く。白川も少し動揺しているようだ。

「えっと、二人はこの話聞いたことなかったの?」

「ああ、俺は聞いたことがないな」

「俺もだ」

「そうなんだ。転々と移動していた私ですら聞いたことがある話をあなたたちが聞いていないなんて変だね」

「......それもそうか」

 確かに妙な話だ。別に蔵介と違って最近まで能力が分からなかったわけじゃない。小学生のときから俺の能力は発現していたんだ。

「まあ、俺は高校生の頃に気が付いたからな。白川がその話を聞いたのはいつぐらいだ?」

「中学生の頃の3年間。だから、高見君が知らないのは納得できるけど、塚波君は?」

「聞いたことがないな。その噂はどうやって聞いたんだ?」

「転校した先の学校で。『最近、暴れている人がいるから気を付けて』って。その子も一応あなたたちと同じだったよ」

 その子も能力者であったということだろう。なるほど、それなら能力者は知っていて当然のことだったのかもしれない。俺は聞いたことがなかったが。たまたま白川が俺の近くに引っ越してこなかったからだろうか?

 俺が考えていると、堂次郎が口を開く。

「幼いころの蔵介の性格ってどんな感じだったんだ? ほら、引っ越す前に一緒にいたことがあるんだろう?」

「んー、あなたたちから聞いたような性格ではないかな。昔から物腰柔らかで、優しくて、ちょっといじけやすいところもあったけど」

 若干遠い目をしながら話す白川。なるほど、二重人格ではない方の、言ってしまえば普段の蔵介が白川の知っている蔵介なのだろう。

「最初に白川が転校したのはいつくらいだ?」

「小学校3年生の時かな。転校するときに蔵介が泣いてくれて。小学校に入ってすぐの時は私いじめられてたから、蔵介が泣いてくれたのはすごく嬉しかった」

 蔵介から少し聞いた話も交じっている。確か、蔵介の方が白川より強い能力を持っているから、いじめている奴がいたらやっつけちゃうぞ、みたいなことを言って白川をいじめから守っていたらしい。

 少し寂しそうに語る白川。一方で、堂次郎の表情は険しい。

「......ここまでの話をまとめると、白川が転校してから中学校を卒業するまでの間、蔵介は発現して暴れたという感じだな」

「そうは言ってもだな、堂次郎。あれで暴れたというのはおかしいだろう」

 お互いに言葉足らずなので補足しておくと、蔵介が2重人格の能力を開花させて暴れたと堂次郎は言っているのだが、俺は2重人格の能力というだけで暴れることは難しいと意見している。

 白川は話は終わったという表情で再び水を口にする。これ以上彼女の時間は邪魔するべきではないだろう。

「おい、堂次郎。考察はいろいろあとでやるぞ。ありがとな、白川」

「そうだな。白川、助かった」

「うん、気にしないで。......あ、そうだ。最後に一つだけ」

「「?」」

「別に本当に蔵介が悪い奴だったら何してもらっても構わないけど。もし濡れ衣であいつを困らせるなら」

 白川が微笑みながらそこまで口にすると、地面が揺れる。当然俺たちも周りの学生もざわめく。慌てていないのはただ一人、白川だけだ。

 それまで微笑んでいた白川は一気に顔を強張らせて断言する。

「あなたたちを絶対に許さない。殺す」

「......俺は、蔵介をどうこうしようとは思っていないさ」

 背筋が凍るような思いというのはこれのことだろう。自分でも脂汗をかいているのが分かる。

 少し弱気な発言を返した俺に対して、堂次郎は強気に言い返す。

「もちろん、濡れ衣ならどうしてもらっても構わないし、濡れ衣であいつをどうこうするつもりはない。ただ、あいつが悪いと決定したら何らかの対応はする」

「それは好きにしてよ。一応警告しただけだし。それじゃあね」

 再び笑顔に戻る白川。用事が終わった俺と堂次郎が外に出ると、二人して表情がひきつる。

 食堂の周りには少し広めの草場がある。その草場が、周りの道路と比べて30cmほど沈んでいたのだ。

「濡れ衣」

「ダメ、ゼッタイ」

 そんな言葉が口から勝手に漏れた。

なんだかんだ、雪音は蔵介を気にかけてる。

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