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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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28話


「ふう、ようやく終わった」

『おう、こっちも終わったぜ』

『ちょっと大変だったね』

「だね。まあ、何はともあれ終わってよかったよ」

 アルバイトの面接の話を真中さんとした日の夜、僕は無能力者の友達と通話をしながら一緒にレポートを書いていた。これがレポートか、量も質も求められてかなり大変な作業だ。 

 さて、一段落ついて友達と雑談をしていると、ふと友達が変なことを言い出した。

『そういえばさ、この学校て結構ほかの大学の人が出入りしているんだって』

『ああ、そういえば俺もそんな話を聞いたことがあるな』

「へえ。その話は初耳だなあ。でも大学なんてほかの大学の生徒が来るものじゃない?」

『それがほかの大学に比べて多いんだとよ』

 もしかして、ほかの大学の能力者が頻繁に出入りしているのだろうか。そうだとしたら防人として見過ごせないけれど、何分噂話だ。それに、僕たちを狙っている人たちが無能力者に情報が洩れるように動くとも考えられないしね。

『しかも、ほかの大学の人たちが集まってるサークルがあるとか』

「そんなことできるの?」

『一応インカレサークルといってほかの大学と合同でやるサークルもあるからできなくはないんだろうが......まあ、他大学の生徒だけでサークルを作ることはできないんじゃないか』

「ふうん。変わったこともあるんだね」

 まあ、そこまで気にしなくてもいいのかもしれない。そのあと少し適当な話をしてから通話を切って一日を終える。

 翌日。今日は午前中の講義がなくて余裕がある。さて、どうしようか。

 少し暇を持て余していると、ブルルという倍部音とともにスマートフォンのアラームが鳴る。これはもしや。

 少し緊張しながらスマートフォンを確認すると、画面に『SOS』と大きく表示されている。すぐにでも助けに行きたいところだけれど、ここで戦力にならない能力者の僕だけが助けに行っても邪魔にしかならないだろう。とりあえず『防人』のメンバーに助けを求めよう。

 というわけで、能力者からSOSが来ていることを連絡すると、メンバーたちにもSOSが来ていたようだ。とりあえず、堂次郎と正からはすぐに返信が来た。朝倉君からは返信が来ないので、用事があるか寝ていると判断して、現地集合ですぐにSOSが出ている現場に向かった。

 SOSがあった現場は、講義が行われる4号館だ。こんなところで襲われることはないと思うけれど......。

 スマートフォン片手に小走りで現場に向かうと、既に堂次郎と正は現場に到着していた。戦闘は行われていないけれど、誰かと話をしている。相手は小柄で目が吊り上がっている黒髪の男だ。どこかで見たことがあるような気がするのは、同学年の能力者で、トーナメントなどで見ているからだろう。

「ごめん、お待たせ」

「おう、SOSを出したのは飯野みたいだ」

「話すのは初めてだよね。1年の飯野隆いいのたかしだよ、よろしく」

「上木蔵介だよ。こちらこそよろしく。それで、SOSの要件は?」

「実は今、こんなものを渡されたらしい」

 正が紙切れを僕に渡してくる。そこには簡潔に、『君の財布を預かった。返してほしければ12時までに9号館に来い』と書いてあった。ちなみに9号館はサークルで使う備品が置いてある部屋、言ってしまえば部室が集まった館だ。

「これ、普通に犯罪だよね」

「ああ。ちょっとまずいよな」

 ここで堂次郎が口を開く。

「無能力者の守衛の方に頼むっていう発想には至らなかったのか? さすがに無能力者相手に能力を使って目立つようなことは避けると思うんだが」

「もちろんあったけれど、それ以上に無能力者の方が被害にあう可能性もあるからね。しかも銃弾とかナイフとか凶器を使ってくれればいいけれど、もし能力が凶器を残さないものだったら、完全犯罪が成立しちゃう」

 なるほど、道理だ。それでどうしたらいいのか分からなくなって僕たちに連絡をするというのはおかしくない判断だろう。

「どうする、蔵介。行くか?」

「行くに決まっているだろう。なあ、蔵介」

「うーん」

 正は乗り気みたいだけれど、堂次郎の質問にすぐ答えられない。現在時刻は10時。話し合う時間的余裕はある。

「相手は何が目的だろう。お金を取ることだったらわざわざこんなこと言うかな?」

「言わないだろうな。だから、能力者を狙っていると考えるべきだ」

「そうだね。能力者が一人になるところを狙いたいけれど、なかなかうまくはいかないから強硬手段に出たみたいだね」

「まあゆっくり待てばいいと思うが、襲おうとしている場所に何回も通いたくはないからな。......そういえば、俺たちのサークルは結構大々的に防犯ブザーを配ったな。ということは、俺たちのサークルが知られていて、邪魔だから俺たちから襲おうとしているのかもしれない」

「それを言うなら戦力を財布泥棒に集中させて油断しているほかの能力者を襲うつもりかも」

「そこまでの戦力がすでに来ているならな。現実的に考えて、俺たちの戦力から削ろうということだろう」

「......よくわからないが、財布泥棒というだけで許せねえ。すぐに行くぞ、蔵介」

「あ、正」

 正が足を9号館に進める。結構正義感が強いんだなあ。

「まあ今の話から正を一人にするわけにはいかないな」

「だね。とりあえず清木教授に連絡をしておいて、立花学長には少し学園を見回ってもらうよ」

 清木教授に連絡を入れるとすぐに返信が返ってくる。優秀な人だなあ。

 さて、これで心置きなく財布泥棒に集中できる。

「とっちめてやる」

「......財布泥棒か。こういう小さいことから始まる物語もありか......?」

「申し訳ないけれど、頼んだよ。俺は役に立てない能力だから参加できないけど」

「大丈夫。何とかしてくるね」

 こうして、『防人』として初めて受けたSOSの舞台は、9号館へと移っていく。


さて、次はどんな敵がいるのかな?

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