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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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25話


 さて、逆転の一手を考えたいところだけどここで重要なのはゾンビに攻撃をしてはいけないこと。理由は当然、攻撃を加えたことでゾンビ化された人たちが元に戻ったときにどういう影響が出るかわからないから。なので、僕たちは本体だけを攻撃してやり過ごさなくてはいけない。一見難しいように感じるけれど、それはほとんど一般人の僕を基準にしてしまうから。能力者がいればそこまで難しくはないはず。

「それじゃあ、堂次郎......あ、あれ?」

 早速作戦を堂次郎に伝えようとすると、堂次郎がいなくなっていた。増援を呼びに行ったとかだろうか? なんにせよ、ここで味方が一人減るのはまずい。

「蔵介殿、どうするでござるか?」

 戻ってきた朝倉君が尋ねてくる。うーん、どうしようか。

「ごめん、少しだけ時間を稼いでもらえる? その時にやってほしいことがあるんだけど、ーーーーな感じでお願いできる?」

「いいんでござるか? それだと拙者の能力がバレてしまうでござるが」

「大丈夫。できそう?」

「ふむ、出来るでござるよ。それでは行ってくるでござる」

 すっと動き出しの重さを感じさせない動作で敵へ向かっていく朝倉君。やっぱり鍛えている人は違うなあ。

 さて、少し考えよう。僕たちの目標は本体の無力化。できれば気絶までさせたいけれど......素人の僕たちには厳しいだろう。なので今回の目標は、本体の拘束だ。これを達成するためにはゾンビの行動を知ることが大切だ。あのゾンビは本体が操っているのか、それとも何かの行動原理をもって動いているのか。後者は難しく言ったけど、要するに『人を襲う』とかそういった単純な理由で動いているのかということ。

 結論から言うと僕は後者だと思っている。理由としては、今攻撃を仕掛けに行った朝倉君にゾンビが集中しているからということと、先ほど堂次郎と話し合っていた時も僕たちを襲いに来なかったという2点に加えて、5体のゾンビを操ることは難しいだろうからということも理由だ。

 そして、いま朝倉君にやってもらっていることは。

「ふっ!」

 朝倉君が短く息を吐きながら木刀を振るう。すると明らかに木刀が届かない場所に存在していたプラスチック製の軽い椅子が飛んでいく。先ほどまで朝倉君は確実に一撃で仕留めようとしていたので、この能力を使わなかったらしい。でも、今後のために使ってもらったのだ。

「......へえ」

 ここにきて初めて口を開いた敵の呟き。そこには多少の驚きはあるものの、恐怖を感じさせることはない。能力者というのはそういうものなのだろうか? まあ僕も能力者なんだけど。

 そして、この能力を見せたことでゾンビたちに少しの変化が起きる。先ほどまでいたゾンビすべてが朝倉君を狙っていたのだけれど、一体だけその輪から外れて本体の傍に寄り添っている。そして、二人がぐるぐると立ち位置を変えている。なるほど、どちらが本体かわからない状態にするためか。

 ......よし、作戦はできた。早く決着をつけないと、朝倉君も厳しいだろう。

「朝倉君、作戦ができた!」

「本当にござるか!」

 朝倉君が一気にこちらへ駆けてくる。それを追ってゾンビがやってくる。詳しく説明する時間を与えるつもりはないようだ。やっぱりそれを含めて考えると......

「朝倉君、僕が敵の本体に突っ込むから、威力が軽いかまいたちを本体に向かって振るって!」

「......御意!」

 一瞬の逡巡があった後、朝倉君が頷いてくれる。よし、行こう!

 僕は駆けだしながら考える。僕の先ほどまでの考えは半分当たっていて半分外れていると考えていいだろう。恐らく、本体はゾンビたちに簡単な指示を出している。『自分の傍にいろ』とか『私を攻撃してくるやつを襲え』みたいに。

 そしてゾンビたち自身に自我がないのなら、思考するのは本体一人だけ。それなら全然勝機を作れる。

「ーーー?」

 走りながら、一瞬感じる違和感。その一瞬で思考が始まる。

 僕がここまで考える時間があったということは、彼女にもーー

「っ! あさくーー」

 一旦作戦を中断するために名前を呼ぼうとして、視界の端の端で捉えられた情報が口を無理やり動かした。

「ーー朝倉君、今だ!」

「!」

 僕は振り返らずに本体を拘束しに行く。すると、二人の女の内一人が片方をかばうように体を動かして、体をのけ反らせる。恐らく、朝倉君のかまいたちをゾンビが代わりに食らったのだろう。少しの間だけど隙ができた。このために朝倉君に能力を見せびらかしてもらったのだ。最初にプラスチック製とはいえ椅子が吹き飛ぶほどの攻撃を出せるとなれば、それを防ぐためにゾンビにわざと当たらせるのは当然なのだから。

 こうしてできた隙を見逃すわけがない。僕が敵にとびかかると、足首に衝撃が。

「痛い!」

 わざと大げさに転ぶ。そう、僕があれだけ考える時間があったのだから、敵も考えるだろう。そして、僕たちに気が付かれないように伏兵を置いておくことはそう難しくない。それに気が付いたので作戦を変えようと思ったのだけれど、僕の視界の端に現れたあいつが作戦を実行させた。

「きゃ!」

「ようし、捕まえたぞ、蔵介!」

 先ほどまでいなかった男、堂次郎が敵の拘束に成功していた。

「よくやったぞ、蔵介」

「堂次郎こそね」

 僕はゾンビに足首をつかまれながらも返事をする。少し離れたところでは朝倉君がゾンビ集団に囲まれていた。一見負けている状況に見えるけれど、堂次郎が本体を拘束している。僕らの勝ちだ。

堂次郎の能力はなんだろう。


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