24話
「君は能力者みたいだね?」
「......(コクリ)」
一切口を開かずに頷きで肯定を示してくる。外見通りおとなしい人みたいだ。やっていることは当てはまらないみたいだけど。
「君は僕たちを襲いに来たということでいいのかな?」
「(コクリ)」
「その人たちは人質のつもり?」
「......」
特に動きを見せない相手。肯定や否定を答えるのに悩んでいるというよりは黙ってみていろ、という意思を感じる。ただ、黙ってみているくらいならば少しでも動いた方がいいだろう。
僕はすぐに相手を拘束しようと走り出す。ここで考えられる相手の能力は、首の後ろを触ると眠らせるというものだろう。もし体のどこでも触ればいいのだとしたら、肩や背中に触れるだろうから。そして、もしそうだとしたら、相手に首の後ろを触らせないで拘束するのは難しくない。
「! 蔵介!」
「危ないでござる!」
その声が届く前に僕の足を何かが掴む。予想していなかった衝撃に対応できずに転ぶ。
「いてて......」
な、なんだ? 敵はあの女の人しかいないのに、だれが僕の邪魔を?
転んだ衝撃でぶつけた頭を押さえながら何かに掴まれている足を見ると、そこには今拘束しようとしていた女がいた。
「え、え!?」
足元と先ほどまでと変わらずに立っている女の人を見比べる。な、なんだこれ!?
戸惑っているうちにさらにもう一人、女の人が現れる。そいつはカフェにおいてある木製の机を軽々と持ち上げて僕に向かって投げようとしている。
「うわ、うわわわ!」
何とか動こうとするけれど、僕の足をつかんでいる手の力が強すぎて動けない。まずいまずい!
とにかく振りほどこうと暴れているうちに敵が机を投げてきた。これは打撲程度じゃすまなそうな攻撃だ。
「蔵介殿!」
どうしようもなく頭を腕で守っていると、朝倉君の声が聞こえてくる。遅れて、メキメキという音を立てながらドン! という音。恐る恐る現状を確認すると、机が少し離れた位置に倒れていた。朝倉君はすでに敵を拘束しようと動き始めている。朝倉君の能力で飛んでくる机の方向を変えてくれたのだろう。ありがたい!
「ありがとね!」
「礼には及ばぬ」
さて、僕の方は......とりあえず、振り払うためだ!
「ごめんなさい!」
謝りながら女の人の顔を蹴飛ばす。罪悪感を感じながらも、足をつかむ力が弱まった瞬間を見逃さない、手を振りほどいて距離を取る。
「堂次郎、状況は?」
少し離れた位置で観察している堂次郎に話を聞く。
「そうだな。まず、あいつの能力は言ってしまえばゾンビのようにする能力だろうな」
「ゾンビ?」
「といっても、殺したわけじゃないはずだ。平たく言えば、『相手を自分とまったく同じような姿形に変えて、筋力を強化する能力』だろうな」
なるほど、今までの状況をみるにその考えは妥当だろう。ただ、問題が二つ。
「これって、元に戻るのかな?」
「とりあえず、あいつを拘束して何とか元に戻させるしかないな」
「そうだよね。あと、......まあ、ゾンビでいっか。ゾンビを攻撃したら元の人にも影響がいくのかな?」
「可能性はある」
はっきりした回答がお互いに答えられない。他人に影響を与える能力というのはとてもやりづらい。防人の役目は能力者を守ることだけれど、だからと言って無能力者を見過ごすわけにはいかない。
「朝倉君! 敵以外に能力を使うのは控えて!」
「ええ? そのようなことを言われても」
困惑している朝倉君にゾンビの攻撃が飛んでくる。朝倉君は慌てた様子を見せながらも素早く躱す。流石、僕たちインドアとは違う。
どう対処しようか......。




