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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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129話

「正、大丈夫?」

「んぁ、特に攻撃は喰らってねえ。ただ......」

 二人しかいなくなった廊下に座り込む僕と正。その場の壁や床に異変はないが、非常にまずい状況であることを認識しあう。

 壁から飛び出してきた怪物に対して、正と僕は咄嗟に迎撃態勢を整えた。飛び出してきた怪物が振るってくる凶器を躱し反撃を試みたけれど、敵が細身なのもあって、どうにもうまく立ち回れなかった。

 結局僕と正はお互いの攻撃に邪魔されて、怪物を逃がすことになってしまったのだ。

「うん、この後がヤバいよね」

 怪物は壁から出てきたと思えば僕と正に襲い掛かり、再び地面に潜り込んだ。そこからは姿を現していない。

「2,3分は経ったよな?」

「うん。奇襲を仕掛けるにしては時間がかかりすぎてる気がーーー「おい、蔵介!」

 僕らがひそひそと闘う手段を考えていると、そこに堂次郎が飛び込んでくる。

「どしたの、堂次郎」

「どうしたもこうしたも......単刀直入に聞くが、能力者と闘っていないか?」

 思わず正と顔を見合わせる。まさか。

「『無能力者』の前に」

「あの怪物が現れたのか!?」

「やっぱり知ってやがったか......。いったんこっちに来い」

 呼び出しを受けた僕と正は堂次郎にバックヤードに連れていかれる。

 そこには高原さんが待っていた。顔が随分真っ青だけれど、どうしたんだろうか。

「どうしたもこうしたもあるか。高原がその『怪物』とやらの第一発見者だ」

「あ、ほんとに。高原さん、大丈夫だった? ......って、大丈夫ではなさそうだね、ごめん」

 特に外傷は見当たらないから、多分体調が悪くなっちゃったとかだろうか。熱中症とかかな。

 とりあえず、バックヤードに閉まっておいた飲み物を取り出して、高原さんに渡しながら堂次郎と正に話しかける。

「二人とも聞いてほしい。まず、今の状況を打破するためには能力者の女性を捕まえるしかないと思うんだ」

「ああ、間違いないな」

「そのためには、堂次郎の能力が絶対に欠かせない」

 言いながら堂次郎の能力について考える。

 五感の鏡かという能力。堂次郎はこれによって、なんとなくの人の位置や目に見えにくいものなどが見えたりするのだ。

「今女性は姿を隠しているか逃げ回っているから、そこを堂次郎に見つけてもらう」

「それはいいが、怪物の方はどうするんだ? というか、高原が見たとかいう怪物。あれはそもそも何なんだ?」

「う、うーん。説明すると複雑なんだけれど......」

 先ほどまでの怪物と、女性について簡単に説明する。すると、堂次郎が顎に手を当てて、ふむと頷く。

「その本なら読んだことがあるぞ。確か、『紫香楽』っていう本で、タイトルの紫香楽が怪物になった話だな」

「む、確かに。女性も『本の展開とおんなじ』みたいなこと言ってたね。弱点とかないの?」

「確か、壁や通路に潜り込み人に襲い掛かってくる怪物だが、その性質から『聴覚が異常に発達している』らしい。本の中ではその特徴を利用されて、主人公の罠に引っ掛かって炎に巻き込まれて倒れていたな」

「へぇ、ネタバレやめてもらっていい?」

「ぶっ飛ばすぞ」

「ジョークだよ」

 堂次郎は大体の創作物に精通している。そのおかげで一気に怪物の実態が見えてきた。よし、それじゃあ。

 僕はバックヤードの扉に手をかけながら二人に指示を出す。

「あとはアドリブで行こう! 今仕事中だから、まずは僕と正で堂次郎の仕事を分担する。堂次郎は女性を見つけたらすぐに僕らに連絡。僕と正はいい感じに仕事しながら女性を探す! 怪物を途中で見つけたら、大きな声を出して注意を引き付ける。以上!」

「「了解!」」

「あ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 二人の返事を聞いて、外へ飛び出す。正と話しながら、堂次郎の仕事を分担して、すぐに仕事へ取り掛かる。

「うおおおおお!」

 部屋の掃除をしながら、トイレのボトルを補充する僕。

「うおおおおお!」

 少し遠くを見れば、大急ぎで床にモップをかけている正が見える。普段の1.5倍の速度で掃除をしなければならないのだから二人とも気合が入っているというものだ。

「あ、あの、上木」

 そんな風に客室の掃除をしている僕の元へやってきたのは、バックヤードで体調が悪そうだった高原さん。動き回って大丈夫なのだろうか?

「えっと、どうしたの高原さーー」

 扉の前に立っていた高原さんの後ろ、つまり廊下の壁から怪物が飛び出してきた。まずい、このままだと高原さんが襲われる。

 そう考えた僕はすぅ、と息を吸い、

「わ”!!」

 と大きい声を出す。すると、高原さんが一歩後ろに下がる。

「きゃ、な、何よ!」

 高原さんが僕に向かって怒ってくる。ちょ、まずい!

「あ、おっきい声出さないで!」

「こっちのセリフよ!」

「いや、後ろに怪物いるから!」

「へーーー」

 言い方は悪いけれど、少し間抜けな声を出した高原さんがゆっくりと振り返ると、狂気を振りかざした怪物がいた。これで高原さんが悲鳴を上げたら本当に危ない!

 僕は高原さんへ駆け寄って、口元を抑える。そのまま高原さんを客室のベットに向かって投げ込み、僕も同じ方向へ転がる。すると、後ろで狂気が風を切る音が聞こえてきた。あ、危なかった! ほんとに危なかった!

「ーーーきゅぅ」

 そんな声がベットの上から聞こえてくる。とりあえずそのままジッとしてくれていそうで良かった。

「コ、ロス」

 あとは、目の前の怪物をどうするかということだ。

どったんばったんなホラー体験。

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