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能力者か無能力者か  作者: 紅茶(牛乳味)
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7話

「雪音のことで少し話があるの」

「雪音のことですか」

「そう」

「......長くなりそうだな、俺はいない方がいいか?」

「別にいても構わない。他人に聞かれて困るようなことは話さないから」

「そうか。まあ、正直気になるから残らせてもらおうか」

「それじゃあ、ちょっと僕お茶淹れてくるよ」

 キッチンに向かい、三人分のお茶を持って戻る。

「とりあえず、塚波がどこまで把握しているか分かった。それ以上の雪音についての情報は上木も知らない?」

「そうですね、途中で転校しちゃいましたし」

「ふむ。まあ、雪音のことで話がある、とは言ったけど、別に雪音の過去を語ろうというわけじゃない。ただ、お願いがある」

「内容によりますけど」

「それもそう。雪音をこの学校にとどまることに協力してほしい」

「うーん。それについてさっき正と話し合ったんですよ」

「意外。ただのゲーム好きかと思ったけど」

「言いすぎだろう」

「冗談。それで、どういう結果?」

「とりあえず、雪音がこの学校にいることが良いことか分からないから、成り行きに任せようということでまとまりました」

「あるよ。雪音にとってこの学校に通うメリット」

「あるんですか」

「ほう」

僕も正も興味がわく。うーん、何かあったかな? 唸る僕と正に向かって立花学長が得意げに答える。

「それは、私の能力。私は目に映った人間が能力者かどうか判断できる」

「? それって」

「もし寮に通っていない人物で能力者がいたら、襲撃に来ているか分かる、ということじゃないか? ここは高校じゃなくて大学。一応守衛の方はいるが、一般人と学生の見分けも付きにくいし、誰でも簡単に出入りできる。そんな状況じゃ確かに白川も心休まらないだろうからな」

「そこで、立花学長の出番ってことか」

「そういうこと」

得意げな顔をしている学長。なるほど、そうなると雪音がこの学校、というか立花学長と一緒にいることは中々大きなメリットになりそうだ。

「まあ、それでも雪音はきっと心の奥底からは休まらない。現に、私の能力は彼女も知っているけれど、一週間でこの大学から移動しようとしていることが大きな証拠。私としても、彼女の傍にいたい」

「ふむ、難しい話だ。清木教授も言っていたが、白川は『超能力者』。そう簡単に彼女がここにいたくなるようなことを俺たちに考えろと言われてもな」

「確かにその通りだけど、そこをなんとか」

「うーん」

 僕たちが唸っていると、部屋の扉がノックされる。誰だろう?

「はーい」

 僕が返事をしながら応じると、そこには清木教授がいた。

「やあ、上木君。ごめん、ここに立花学長が来ていないかな?」

「来ていますよ。どうぞ入ってください」

「それじゃあお言葉に甘えて。お邪魔します」

 それにしてもイケメンだし、高身長だし、常に笑顔で爽やかだし。人に嫌われることと真逆に位置する人だなあ。......いや、僕のことを自虐しているわけではなく。

「やあ、穂乃果!」

「げ、清治......」

 爽やかに清木教授が挨拶すると先ほどまでのクールな顔を崩して苦虫を噛み潰したような顔をする立花学長。まさか、嫌っているとか?

「何しに来たの」

「穂乃果に頼み事」

「百万円用意してから三十回回ってワンと鳴いたら話だけ聞いてあげる」

 ......誰にも嫌われない人なんていないんだなあ。そんな悪態を吐かれてもニコニコとしている清木教授。本当につかみどころのない人だなあ。

「それで、頼み事って?」

「簡単なことだよ。ちょっと彼が『能力者』か見てほしくて」

「上木のこと? ここにいるんだから能力者に決まっている」

「それが、彼、能力があることを自覚できていないんだ。でも、検査の結果は能力者」

「なるほど。それじゃあ、さっと調べてあげる」

 立花学長が僕の方をちらりと一瞥すると、口を開く。

「能力者。間違いない」

「え!?」

「今の一瞬で分かったのか!?」

「穂乃果はすごいでしょ?」

「清治がなんで偉そうにするの」

 これは確かに雪音がこの学校に残る大きなメリットだろう。正も同じことを考えているようだ。

 その能力に驚いている僕と正を置いて話を続ける二人。

「それで、『糸』はどんな感じ?」

「細いし、短い。大した能力じゃない」

「そっか。まあ、すごい能力だったら自覚しているだろうしね」

「うん。まあ、能力の内容までは分からないから「ちょ、ちょっと待ってください」

 二人の会話をいったん止める僕。

「どうしたの?」

「僕の能力がどの程度のものかまで分かるんですか?」

「大体は」

「そうそう。だから、雪音ちゃんを襲ってくる能力者を僕たちが対処できるか、それとも雪音ちゃんに闘ってもらうか、雪音ちゃんを逃がすか判断しやすいんだ。ね、大きなメリットでしょう?」

「本当に、すごいですね」

「ああ、すごい」

 僕も正も感心しっぱなしだ。

「まあでも、上木君の能力は完璧には分からないみたいだし、それだとこっちも少し困るから、ちょっと面白いイベントを開催しようと思ってね」

「「面白いイベント?」」

「清治、それってアレ?」

「うん、アレ。上木君にとっても、雪音ちゃんにとっても得なイベントだよ」

「話の先が見えないな。もったいぶらないで教えてくれ」

 正が『アレ』に付いて催促すると、立花学長は嫌そうに、清木教授は満面の笑みで、声をそろえて教えてくれる。

「「能力者たちによるトーナメント」」

 


またトーナメントか。

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