吟遊詩人 仲間になる
朝、包帯を取り
怪我が癒えたことを確認する
「よし、大丈夫そうだ」
軽く動かして平気だったので
もう治ったのだろう
ミーナさんに感謝した
「おはようございます、ヨミくん」
ミーナさんの声がする
「朝食を食べたあと
出発しますので準備してくださいね」
はい!と声を出し
置いてある朝食を食べる
ミーナさんが用意してくれた服を着て
外に出た
「それでは、行きましょう」
それから、俺とミーナさんは
魔族領の暗くジメジメとした森を歩いた
途中休憩を挟みながらも歩き続け
昼過ぎに目的地へと到着した
「」
俺は目の前にある大きく禍々しい城に
目を奪われていた
…え? まさか、目的地ってここ?!
「着きましたよ、ヨミくん
さぁ、行きましょう♪」
ミーナさんはとびっきりの笑顔で手を差し出してきた
その笑顔にドキッとしながらも
俺は手を伸ばし
そして、その城へと入っていった
中に入ってみると
外見とは打って変わって質素な作りをしたエントランスが見えてくる
そのまま俺とミーナさんは2階へと進んで行った
「あの部屋だよ」
ミーナさんが指し示した方に目をやると
巨大な扉が見えた
ミーナさんがゆっくりと扉を開く
「来たか」
その部屋には
玉座に座る女性にその周りには
異形の生物たちがいた
「連れて参りました、魔王様」
ミーナさんが女性に向けてそう話し
頭を垂れた
…ん? まおうさま?魔王?!
そんな魔族領のトップのところに連れてこられた俺は震えながらもミーナさんの横で頭を垂れるしかできなかった
「顔を上げよ」
間をおいて魔王様がそうおっしゃった
「そやつがミーナの話していた
珍しいスキルを持つ人間か?」
「はい、そうでございます」
魔王様の問いにミーナさんが答える
「ふむ、確か《言霊》だったか
聞き覚えがある。」
魔王様はどうやら俺のスキルである
《言霊》を知っているようだった
「人間、確かシノノメ・ヨミだったな
お主、極東の者か? ミーナからお主のことは聞いている。
そのお主に聞きたい、お主はこれからどうしたい?」
魔王様の質問に俺はここ数日思っていた事を口にする
「お、おれ、は、ミーナさんの、
ミーナさんの手伝いがしたい!
弱くても、何か役に立つことをしたい!」
そう言い切った
「ならば、聞こう
シノノメ・ヨミ! お主は人間を敵に回すことが出来るか!!」
俺は一瞬固まり、ミーナさんの方を少し見る
俺を救ってくれた、ミーナさん…
そのため、なら!
「俺は人間を敵に回してもいい!」
そう、決意を込めて叫ぶ
となりではミーナさんが目を見開きこちらを見ている
「その心意気、見事だ
シノノメ・ヨミを我ら魔族は歓迎する!」
魔王様が他の魔族に向けて言い放つ
こうして、俺は魔族の仲間になった