魔力と闘気術
その日俺はシキさんとシルフィさんの訓練を一日中受けることとなり
死にかけていた
「はい、あと15周っす」
「ゼェ、ゼェ………は、はい!」
今何周目だ?
もう、分からない
少なくとも30周は走ったと思う
シキさんは1周1kmっす
って言ってたから……
気が遠くなるほど走り続け
「ラスト! あとちょっとっすよ!」
「ご、ごーる……」
ゴールしたと同時に俺は意識を失う
あれ、なんか最近めっちゃ意識失うわ…
起きると心地よい感触
目の前にはシキさんの顔がある
慌てて飛び起きて確認すると俺はシキさんに膝枕されていたことが分かった
「起きたようっすね
ヨミさん、体は大丈夫そうっすか?」
俺は自身の体を確認する
筋肉痛とかも無いし疲れもない
「その様子だと、大丈夫そうっすね
今の状態で私と組手をやるっすよ」
シキさんに連れられて
修練所03と書かれた場所に入る
「ここが、修練所っす
全部で01〜10まであって
01〜05は隊長、副隊長は自由に出入りできるんすよ
ん、ちょうど誰もいないみたいっすね」
俺とシキさんは修練所の真ん中で
距離を取り構える
「それじゃあ、いくっすよ!」
シキさんが一気に距離を詰めてくる
俺は慌てて防御の構えに切り替えて
カウンターを放つ
シキさんと一撃一撃を撃ち合っているうちに
ふと、自分の心臓が熱くなる感覚を覚える
「すごいっすね」
ふと、シキさんがそう呟く
「自身を見てみるっすよ」
言われるがまま自分の体を見る
なんか、青白いモヤみたいなものが
体を覆っている
「それが、闘気っす
闘気を腕に集中させてみるっすよ!」
腕に……?
腕に少し力を入れると少しモヤが集まった気がする
「?! そう! そうっす!
やっぱりセンスあるっすよ!」
シキさんが褒めてくれる
「これで闘気術の基礎は十分っす!
次は…………」
「はぁーい 私が魔力について教える番だよー」
次はシルフィさんによる魔力訓練らしい
シルフィさんが、ふよふよと近づいてきて
俺に触れる
「今から魔力を流すよ〜 上手く制御してね〜」
………え? 説明終わりってか
いきなり?!
そうこうしているうちに
冷たい何かが俺の中を通う
これを制御するのか…?
ドクン
心臓の鼓動とこの魔力だという
冷たい何かが体を巡る波長がだんだん近くなり
一致する
その瞬間自分の中で何かがこじ開けられる音が聞こえた気がした
ドクッドクッドクッ
全身に魔力らしきものが行き渡る
思考がクリアになる
「すごいね〜
まさか、こんなに早いなんて
思わなかったよ〜」
「そうっすね……」
俺はこの感じを知っている
ジークフリートになったあの感覚だ
血が巡り細胞が活性化するあの感覚だ
「ヨミさん! ヨミさん!」
シキさんに呼ばれ
集中が途切れ魔力が霧散する
「あれ以上やったら危なかったっすよ」
どうやら、助けて貰ったらしい
「でも、凄いっすね
こんな短時間で基礎を覚えてしまうなんて」
そう言ってケラケラ笑い
今日の訓練は終了っす!
と言い解散となった
自分の部屋に戻ると
何故かミーナさんと魔王様がいて……
ん? マオウサマ? ナゼイルノデスカ?
「ヨミくん!
すごいですねー!」
ギューッと抱きしめられる
なんか、柔らかいしいい匂いがする
ギュッ
へ? 後ろからも?!
この部屋にはあとは魔王様しかいないはず
ってことは魔王様が俺を抱きしめてる?!
あ、4つのメロンが
く、苦しい………
柔らかい感触とともに
俺は意識を手放した